映像



 どうやっても足が入らない。腕や首をいくら曲げても、気がつくとそこだけがはみ出てしまう。柔道部だった名残の分厚い親指の皮を眺めると涙が出た。気がした。どこかにあるカメラを僕は意識している。それに向けて怒り、叫び、包丁を握っただけだ。ふたりでタコスパーティーの準備をした手で。そういうことにしている。

 挟んだものがこぼれないよう気をつかうそれはひとりで食べるにはむなしく、だがするすると腹に収まってしまった。無理に閉めたトランクを手に、玄関へ向かう。築一〇年の1LDK。振り返り見たその部屋は、どこか張りぼてのように思えた。こんなこと、あるんだ。僕はカメラを意識した。少しずつ、笑みが浮かんでくるのを待つ。







(お題……『折る』 本文300文字)




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Rest in Tutibuta 大滝のぐれ @Itigootoufu427

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