私はゆりちゃんの外様



 ゆりちゃんが目を離したすきに、あの女は私をごみ箱に投げ入れた。そこから見える景色が、教室から灰色の天井に変わっていく。リサイクル素材の靴である私には、ここがごみ処理場であることがわかる。すさまじい熱で、体が溶かされていく。


 でも、それで『私』は消えたりしない。靴べら、椅子、照明器具。姿を変えながら、私は彼女を探す。


 やがて、白いドレスを着たあの女の側で、泣きながら手紙を読みあげる彼女を私は見つける。シャンデリアとなった私は、怒りに任せて鎖を外し落下した。ふたりの足を飾る靴は、かつての私よりもずっと大きくなっている。気づいたところで遅かった。成長したふたりが、知らないものを見る目でこちらを見上げる。







(お題……『靴』 本文300文字)



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る