エンターテインメントでありながら文学的

お互い秘密を抱える主人公、五木麻里と朝霧晴。
二人は交流し合うなかでやがて秘密を共有し、心を通わせていきます。
しかし、彼には主人公にも言えないもっと大きな秘密があったのです――。

この作品には妖怪が出てきます。
妖怪は空想上の生き物ですが、描写が巧みで、戦う場面では躍動感があって伝わりやすく、作者様の想像力の豊かさ、確かさが実感されます。

また、この作品は心情の機微を丁寧に描き切っています。
明るい方にも暗い方にも揺れてしまう心のありようを見つめ、深く掘り下げていく中で、主人公は自分の本当の気持ちに気づいていく。
そうして吟味してたどり着いた想いだからこそ、尊いのだと思います。

エンターテインメントでありながら文学的な香りがただよう、素敵な作品でした。

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