この「気だるげな空気」、僕には描けない

舞台は架空の植民地。人間の他にさまざまな亜人が普通に暮らす中で、主人公フランソア中尉は田舎と前線を往復するうだつの上がらない生活をしていた。だがあるとき、妖精を捕獲して一攫千金を狙う探検隊がやってきたことをきっかけに、フランソアは命を懸けた任務に就くことになる――という物語。

冒頭から凄まじい分量で文字が襲いかかってきますが、それらをひとつひとつ追っていくと、その場に漂う生活感や空気感を、まるで登場人物自身になった気持ちで味わうことができます。

決して快適とは言えない気候。
危険動物や敵対する先住民、疫病。
諦念と惰性が身体の芯まで染みついた毎日。
さあ、あなたならこれらをどう表現する?

この作品は、多くの知識と圧倒的な分量の描写でもって、上記の要素を「気だるげな空気」に昇華していると感じました。

探検隊が出てきてからは、一転して緊迫したシーンが続きます。びっくりするぐらいヒーローが出てきません。にもかかわらず、手に汗握るような戦闘描写が描けるのはすごいと思いました。

これからも頑張って欲しいです。