第4話

前回のあらすじ


木狩が無藤を起こしに行こうと、無藤の部屋に入った瞬間、腹部に包丁が刺さっている、死んでいる無藤の姿があった。


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俺の声を聞いたのか、他の人がどんどん集まってきた。


幕明「木狩くん、どうしたの!?」


五月雨「これは…。」


最上「ね、念のために脈を…!」


すると、最上が無藤に近づき、首を触った。しかし、最上は頭を横に振った。


宝井「そんな…!」


複坂「あーあ。ゲームが始まっちゃった♪」


愛田「わたしたち、どうしたらいいのかな?無藤さんを殺した人はここから出るんじゃ…」


次の瞬間、モニターがついて、ゲームマスターの顔が映し出された。


ゲームマスター「皆様、至急ロビーに集合してください。」


そんな簡略な言葉を残してモニターは切れた。


黒山「…行くしかないようじゃのう。」


城松「どちらにせよ、ウチらはこれからなにすれば分からんからな。」


そうして俺たちは、ロビーに向かって行った。


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俺たちがロビーについてもやはり、一は来なかった。


最上「まずいぞ…このままじゃ一がゲームマスターに殺されるかもしれない…!」


五月雨「僕、急いで一くんのところに…」


その時、急にモニターにゲームマスターの顔が映し出されて、


ゲームマスター「一様のところには行かなくても結構です。です。」


木狩「今、なんて…?」


ゲームマスター「それよりも、初めての死体が出ましたね。」


複坂「これで、無藤さんを殺した人はここから出られるんでしょ♪」


ゲームマスター「いいえ。」


複坂「…え?」


ゲームマスター「皆さま方には、この事件の、[被害者が契約で死んだか否かを判断する『審議』を行っていただきます。]

もし皆さま方の判断が正しかった場合、審議を終えた後に、私が鍵の掛かっていた扉をいくつか解放しましょう。」


愛田「もし、間違っていたら?」


ゲームマスター「少しややこしくなってしまいますが、理解していただければ幸いです。


被害者が契約で死んだ場合、間違えてしまうとその場で全員死んでしまいます。


被害者が契約以外で死んだ場合、間違えてしまうと犯人が外に脱出し、その他の方は

ほとんど死なずにゲームを続行します。ただしその場合だと、もちろん扉を解放しません。」


ゲームマスターは続けた。


ゲームマスター「ちなみに、被害者が契約以外で死んでしまった時の審議は[誰か一人を犠牲にして貰います。]まあ、犯人を犠牲にするのが定石でしょう。ただし、不正解した場合は犯人以外となります。」


城松「犠牲に…か…。」


梶野「質問するっす。もし、自殺だった場合は?」


ゲームマスター「その場合ももちろん審議を開きます。契約が原因ではない自殺や事故など、犯人がいない場合にも契約以外で死んだ扱いになるので、その場合は誰か一人が勇気を持って犠牲にならなければ行けません。」


黒山「むう…ややこしくなってきたな。」


五月雨「…要約するとこうかな?」


と、五月雨は紙を公開した。


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審議の正解、不正解とは…


・契約で死んだ被害者の事件を


契約で死んだと判断したとき→正解

契約以外で死んだと判断したとき→不正解


・契約以外で死んだ被害者の事件を


契約で死んだと判断したとき→不正解

契約以外で死んだと判断したとき→正解



・被害者が契約で死んだとき



審議開始

┏━┻→正解→全員生存+扉解放

┗━→不正解→全員死亡



・被害者が契約以外で死んだとき

(自殺、事故含む。)


審議開始

┏━┻→正解→犠牲1人+扉解放

┗━→不正解→犠牲1人(犯人以外)+犯人

脱出

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ゲームマスター「はい、その通りです。」


宝井「とてもわかりやすかったです。ありがとうございます、五月雨さん。」


五月雨「どういたしまして。」


ゲームマスター「それでは3時間後、審議を開きます。開く場所は私が指定しますので、調査を済ませておいてください。」


そういうと、モニターが切れた。


幕明「なんかドッと疲れたね…。」


城松「審議が終わるまでご飯はおあずけやな。」


木狩「じゃあ、調査を始めよう。もたもたしていると俺たちが死ぬかもしれない。」


五月雨「そうだね。じゃあ各自で始めよう。」


そうして俺たちは調査を始めた。


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木狩「…まず現場からだな。」


俺は無藤の個室へ向かった。



…何度見ても見慣れない光景だ。


五月雨「あっ、木狩くん。…あまり無理はしないでね。」


木狩「心配してくれなくとも大丈夫だ。

…それよりも、なにか見つかったことはあるか?」


梶野「自分は気になることがあるっす。」


木狩「なんだ?」


梶野「無藤さんが[個室の鍵を掛けていなかった]ことっす。」


五月雨「確かに、掛けていたら殺されることはなさそうだけどね。」


木狩「無藤が起きてきたところを襲われた可能性もなさそうだな。個室の前に何らかの痕跡が残るはずだ。」


五月雨「どうやって殺したんだろう?

…念のため、今のことをメモしておこうか。携帯の機能にメモ機能があったよね?」


木狩「メモ機能…これか。」


俺は、[個室の鍵]をメモした。


五月雨「僕が気になったのは、テーブルの上の倒れているグラスだよ。事件と関係ないかもしれないけどね。」


木狩「でも、一見関係なさそうなものも事件と関係しているかもしれない。」


俺は、[倒れたグラス]をメモした。


木狩「俺も無藤のところを調べていいか?」


梶野「ああ、そこはまだ調べてないっすね。さすがにためらうというか…。」


五月雨「木狩くんも勇気あるね。」


木狩「…まあな。」


俺は無藤の周辺を調査した。すると…


木狩(これは…ハンカチ?開いてみるか…。)


ハンカチを開いたとき、俺は驚愕した。


木狩(これ…まさか…)


五月雨「木狩くん、なにか見つけた?」


俺は反射的にハンカチをポケットに入れた。


木狩「い、いやまだ何も。」


五月雨「なかなか証拠は出ないもんだね。」


木狩「ああ、そうだな。」


木狩(今これを出したら混乱を招くだけだ。審議の時までしまっておこう。)


木狩「あと、[争った形跡がない]な。」


梶野「確かに、ここに包丁が突き刺さっているなら即死はあり得ないっすね。寝ていたにしても痛さでもがくはずっす。」


俺は、[ハンカチ]と、[争った形跡]をメモした。とそのとき、


幕明「捜査は順調かな?」


黒山「おう、お前さんたち。」


と、幕明と黒山が来た。


五月雨「ああ、二人とも。血とかあるけど、大丈夫?」


幕明「僕は大丈夫みたい。」


黒山「わしもじゃ。」


木狩「早速で悪いが、なにか気になる点があったら言ってくれ。」


幕明「気になる点か…、あっ、死亡時刻って何時なのかな?」


梶野「死亡時刻っすか…、自分はわからないっす。」


黒山「わしもわからんのう。」


五月雨「僕も分からないな…、[これについて詳しい人]っているかな?」


梶野「でも、昨日の夜は確かに生きていたっすよね。就寝時刻の間は出歩き禁止っすし…。」


木狩「じゃあ、就寝時刻終了からみんなが食堂に居た7時くらいの間に、殺されたってことか。就寝時刻って何時から何時までだったか?」


五月雨「ルールによると、[21時30分から4時まで]らしいよ。」


幕明「じゃあ、4時から7時の間に殺されちゃったんだね。」


俺は、[就寝時刻]をメモした。

それと、〔死亡時刻を調べられる人〕を後に探すことにした。


五月雨「うーん、謎が多いね。」


木狩「これらの謎を審議で解明しよう。」


梶野「そうっすね、他にも手がかりがないか調べてみたらどうっすか?」


木狩「ああ、そうするよ。」


俺は他に証拠があるか調べに行った。


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俺が向かったのは食堂だった。そこの調理場には城松と宝井がいた。


城松「あっ、木狩。」


木狩「なにか見つかったか?」


宝井「私は特に見つけていません。お役にたてず申し訳ございません。」


城松「ウチは気になることがあってな。」


木狩「なんだ?」


城松「グラスと包丁が一個ずつなくなってるんや。」


木狩「それは多分現場にあったぞ。」


宝井「グラスが現場にあったのですか?」


城松「じゃあ、ここから使われたってことか?」


木狩「恐らくな。」


俺は[食堂のグラスと包丁]をメモした。


俺は他のところへ向かった。


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俺は器具室へ向かった。そこには愛田と最上がいた。


木狩「なにか見つかったか?」


愛田「木狩くん、これ。」


木狩「これは…毒薬?」


最上「ああ。しかも使われた形跡もある。」


木狩(事件に毒薬が使われたってことか?)


俺は、[使われた毒薬]をメモした。


木狩「そうだ、最上に頼みたいことがあるんだが、死亡時刻を調べてほしいんだ。」


最上「分かった、私もまだ現場に行っていないからな。」


俺と最上は現場へ向かった。


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最上は無藤へ近づくと、体温を測った。そこには、幕明と黒山がいた。


最上「これは…[0時位]といったところか…?」


幕明「えっ?0時?」


黒山「確か、4時から7時までと言ってなかったか?」


木狩「これはどういうことだ…?」


俺は、[死亡時刻は0時]をメモした。


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ゲームマスター「皆様、三時間が経過しました。モニターに審議の場所を指定しますので、そこに集合してください。必ず、全員くること。」


木狩「…行くか。」


出来るだけの努力はした。俺は全てを覚悟して審議の場所まで行った。


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木狩が獲得した証拠


《個室の鍵》

個室の鍵が掛かっていたら犯人は無藤の個室に入れないはずだった


《倒れたグラス》

テーブルの上に倒れたグラスがあった


《ハンカチ》

無藤の隣に落ちていた


《争った形跡》

争った形跡はどこにも見られなかった


《就寝時刻》

就寝時刻は21時30分から4時までらしい


《食堂のグラスと包丁》

無藤の部屋にあったグラスと包丁はどちらも食堂から持ち込まれた


《使われた毒薬》

器具室にあった毒薬の量が少し減っていた


《死亡時刻は0時》

無藤が殺されたと思われる時刻は0時位らしい


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俺たちは二階に登って、ひとつの扉の前に集まった。そこには一の姿があった。


一「…。」


黒山「ここが、ゲームマスターが言ってたところかのう?」


五月雨「うん。ということは、この扉の向こうだね。」


木狩「…行くか。」


そして次々と入っていった。

…一人一人が覚悟して。


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ゲームマスター「皆様、お集まりいただきありがとうございます。

これより、第1回の審議を開始します。」


[第1回審議─開始─]


しかし、ゲームマスターが喋り終わったあともモニターが消える気配がなかった。


木狩「…ゲームマスターも審議に加わるのか?」


ゲームマスター「当然です。ゲームの主催者たる者、この場から離れることは許されません。」


城松「まあ、居ても居なくてもどっちでもええわ。」


幕明「えーと、まず何から話そう?」


五月雨「そうだね…、じゃあ、まずは包丁についてから話そう。」


黒山「あの包丁は[どこから持って来たんじゃ?]」


木狩「それは…」


証拠6,[食堂のグラスと包丁]を使用


木狩「食堂からだったはずだ。」


宝井「ちなみに、現場にグラスがあったと聞きましたが、それも食堂からです。」


最上「話が逸れるが、あったと聞いたってことは宝井は現場に来ていないのか?」


宝井「はい…私、血が苦手で…。」


五月雨「じゃあ、話を戻すよ。一体、グラスはどんな状態であったんだろうね?」


木狩「それは…」


証拠2,[倒れたグラス]を使用


木狩「グラスは倒れた状態でテーブルの上にあったはずだ。」


梶野「事件にグラスって使われたんすかね?」


宝井「使われたのなら、犯人はグラスで何をしたんでしょう?」


証拠7,[使われた毒薬]を使用


木狩「…恐らく、中に毒入りの水をついだんだ。」


愛田「毒?ナイフで死んだんじゃないの?」


木狩「犯人が死因を偽ったんだ。…毒殺ではなく、刺殺と思い込ませるために。」


証拠[偽った死因]を新しく入手


五月雨「偽った…?」


木狩「ああ。だからこういう風になったんだろう。」


証拠8,[死亡時刻は0時]を使用


木狩「つまり、0時位に毒入りの水を飲んだんだ。」


愛田『その意見は違うと思うよ。』


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【対論開始】


木狩「…えっ?」


愛田「木狩くん、自分が言っていたことを思い出して。」


木狩(俺が言ったこと、それは、)


証拠4,[争った形跡]を使用


木狩「争った形跡がないってことだな。」


愛田「そ。つまり、無藤さんは毒で苦しくて暴れて、周りがぐちゃぐちゃになるはずだよ。だから、毒で殺されていないと思うな。」


木狩(愛田の言いたいことは分かった。だけど、俺が正しいことは確かだ。

…俺が正しいことの根拠を示そう。)


木狩「犯人は無藤が死んだのを確認すると、周りを整頓したんだ。そうすることで争った形跡は外見的に無くなる。」


愛田「でも、争った形跡はつくよ。それは犯人に傷が残るってこと。だって、[犯人は無藤さんに無理やり毒を飲ませた]んでしょ?」


証拠5,[就寝時刻]を使用


木狩『その言葉、俺が解く。』


【対論終了】


────────────────────


木狩「いや、それはあり得ないな。」


愛田「え?なんで?」


木狩「就寝時刻は21時から4時までらしい。犯人はその間外に出ることは出来ないからだ。」


愛田「そっか、就寝時刻のことすっかり忘れてたよ。」


幕明「ということは、無藤くんは無理やり飲まされたわけじゃなくて、自ら飲んだってことだね。」


宝井「待ってください。血はどう説明するのですか?」


梶野「血っすか?」


最上「血は、死後4時間も立てば固まるはずだ。その分、返り血の心配はないわけだが。」


木狩(確かに、死体にはたくさんの血がついていた。…でも、俺はこれに対する反論の証拠が見当たらない…!)


愛田「ほっ、これを持ってきて正解だったね。」


と、愛田は血がたくさんついた袋のようなものを持っていた。


五月雨「それは…、輸血パック?」


愛田「みたい。器具室のゴミ箱の中にあったよ。」


木狩「つまり、器具室の中にある輸血パックで血を表現したのか。」


五月雨「これで事件の大まかな流れが分かったね。」


城松「でも、まだ何一つ犯人に近づいていないで!」


梶野「確かに…。」


木狩(いや、俺はもう犯人は分かっている。)


木狩「じゃあ、ここからは犯人に聞こうか。」


俺は犯人を指差して、追い詰めるように言った。


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木狩「そうだろ?…[複坂]。」


────────────────────


複坂「…えっ?」


黒山「ふ、複坂!?どうりで一言も喋らないと思ったら、そういうことじゃったのか…?」


複坂「まっ、待ってよ!なんで僕なの!?」


木狩「これは決めつけになってしまうが…」


証拠1,[個室の鍵]を使用


木狩「複坂、お前はピッキングをして無藤の個室に入ったんじゃないか?」


複坂「そ、そんなのただの偏見だよ!他にもできる人がいるはずだよ!」


木狩「証拠はまだある。」


複坂「えっ?」


証拠3,[ハンカチ]を使用


木狩「これには複坂の名前が書いてあった。これはお前のだな?これは無藤の隣に落ちていたものだ。」


最上「複坂…本当にお前が…?」


複坂は悔しそうに言った。


複坂「だって…、だって!人を殺せばここから出られると思ったんだ!

だけど、なんで審議とか訳分かんないものがあるんだよ!こんなの、聞いてないよ…。

ハンカチも拾わなくていいって思ったんだ。僕が犯人だと分かっても損はないかなって…。」


愛田「確かにわたしもそう思ったよ。これはさすがに説明不足なんじゃないのかな?ゲームマスター。」


ゲームマスター「…そこについては私の非を認めましょう。」


複坂「だって…僕、今から死ぬんでしょ…?そんなの、理不尽だよ…。」


木狩「…一度事件をまとめよう。」


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─事件の流れ─


まず、複坂は[食堂のグラス]を使ったんだ。


グラスに水をついだあと、器具室にあった[毒薬]を水に溶かした。それを無藤の部屋に運んだんだ。


犯人は、[就寝時刻]の関係で個室に戻らないと行けなかった。


無藤は[0時位]に毒を飲んで死んでしまった。そのとき、[周りがぐちゃぐちゃになった]。


複坂は死因を偽るために4時位に起きて、[食堂の包丁]と、器具室の輸血パックを持ち、無藤の個室に向かったが[鍵が掛かっていた]。


そこで複坂はピッキングで扉を開け、周りを整頓した。その時にグラスを[倒れた状態]で放っておいてしまった。


そのあと複坂は包丁を無藤に刺し、輸血パックの血をばらまいた。その時に[ハンカチ]が落ちたが、複坂は自分だとばれても関係ないと思ったらしく、そのままにしておいたらしい。


そのあと毒薬を戻し、輸血パックをゴミ箱に入れたんだ。


────────────────────


木狩「これが今までの推理の結果だ。」


複坂「うん、合ってるよ。」


黒山「じゃあこの審議はもう…」


五月雨「ちょっと待って!」


と、五月雨が大きな声を出して言った。


宝井「五月雨さん?どうしたのですか?」


五月雨「…木狩くんも気づいているだろう?この違和感に。」


木狩「…ああ。この事件はあまりにも不自然だ。」


梶野「不自然…っすか?」


木狩「ああ。…複坂、一つ聞いてもいいか?」


複坂「…何?」


木狩「お前、ハンカチはなぜ落としても拾わなかったんだ?」


複坂「別に他の人に犯人をなすりつけたりして、自分が犯人ってことを[偽らなくてもいいから]だよ。」


新しい証拠,[偽った死因]を使用


木狩「じゃあなんで、死因は偽ったんだ?」


愛田「そっか!どうして、自分のことより死因を偽ったんだろう?」


木狩「それにお前は最初、審議というルールを知らなかったはずだ。わざわざ死因を偽る意味はないんだ。」


五月雨「まさか君…、無藤さんを殺していないんじゃない?」


複坂「…。」


────────────────────


複坂「あーあ。」


────────────────────


最上「…え?」


複坂「ばれちゃった♪いやー自分でも、うまく偽れたと思ったのになー。」


城松「複坂…?」


複坂「さすがみんなだね!僕の偽装工作を見破るなんて♪」


幕明「じ、じゃあ複坂くんは…」


複坂「うん。僕は、犯人じゃないよ♪」


宝井「それでしたら、犯人は誰なんですか…!」


木狩「…いや、犯人はいない。」


黒山「何!?」


五月雨「…全部、複坂くんの自演だったんだ。」


城松「自演ってなんのことや?」


木狩「この事件は、俺たちが想像しているよりも単純だったんだ。」


幕明「単純?」


木狩「無藤は、契約で死んだんだ。」


城松「なんでそう言い切れる?」


五月雨「さっきの推理だと、複坂くんがピッキングで扉を開けたってことになってた。でも犯人がいるとして、毒で無藤さんを殺したら、個室の鍵の問題が解決されないんだ。」


愛田「個室の鍵は複坂くんがピッキングで開ければいいんじゃない?」


木狩「いや、複坂がピッキングをする[必要がない]んだ。」


黒山「必要がない?」


木狩「…さっきの推理では複坂が犯人で、死因を偽るために鍵を開けたんだ。」


五月雨「でも複坂くんが犯人じゃないってことは、一体何のために鍵を開けたんだろうね。」


木狩「これも単純だ。[最初から開いていた]んだ。」


宝井「なんか、頭がこんがらがってきました…。」


木狩「そのため、もう一度事件をまとめよう。」


────────────────────


─本当の事件の流れ─


まず無藤は、自身の契約で[0時ごろ]に命を落とした。…もしかしたら無藤は、自分が死ぬのを分かった上で[鍵を開けていた]のかもしれない。


それだけだったら、この事件は簡単に推理できたかもしれない。ただ、複坂の介入によって事件は複雑になってしまったんだ。


複坂は無藤が死んでいるのをいち早く発見した。そして複坂は、思わぬ行動に出たんだ。


それは、無藤の死を偽装することだ。複坂は無藤を見つけた直後、食堂と器具室に向かった。食堂では、[包丁とグラス]を、器具室では、輸血パックを取るためだ。


そして無藤の個室に戻った複坂は、輸血パックの中の血をばらまき、包丁を刺し、グラスをあえて[倒れた状態]で置いた。さらには、自分の[ハンカチ]も無藤の隣に置いたんだ。そのため、[争った形跡]も無かったんだ。


そのあと空になった輸血パックを器具室のゴミ箱に入れて、[毒薬をどこかに少量捨てた]んだ。


────────────────────


木狩「これが全てだ。」


五月雨「うん、僕もそう思うよ。」


この推理に異論を唱える人はいなかった。


木狩「ゲームマスター、これが俺たちの答えだ!」


ゲームマスター「…お見事です。無藤様は契約によって命を落とされました。」


────────────────────


ゲームマスターの言葉を聞いた瞬間、全員の顔に安堵の表情が出た。


愛田「わたし、特に役に立てなかったけど、合ってて良かったー。」


ゲームマスター「見事正解されましたので、新たな扉を解放します。」


複坂「やったー!これで多分、脱出に一歩近づいたね♪」


木狩「複坂、一つ聞いてもいいか?」


複坂「ん?なーに?」


木狩「お前、なんで事件を偽装したんだ?」


黒山「そうじゃ!お前さんが何もしなければ、この審議でみんなが混乱せずに済んだんじゃぞ!」


複坂「えー、いいじゃーん。結局、みんな死ななかったんだし。」


梶野「そういう問題じゃな…」


複坂「そ・れ・に♪…ゲームを楽しんで何が悪いのさ。」


最上「…。」


複坂「僕がこのゲームを楽しくしてあげたんだよ。僕が攻められる理由なんか…」


最上「やめろ!お前、本当にそんなやつだったか!?

わたしたちよりお前の方が一番、被害者の気持ちの大切さが分かっているだろ…?」


複坂「…それは最上さんがそう思っていただけだよ。」


最上「なっ…!」


複坂「さぁー、お腹減ったなー。みんな、食堂に行こー♪」


城松「待ちや。とりあえず新しく出たとこ行ってくれへん?ご飯の準備がまだや。」


木狩「…各自で行こう。」


俺たちは新しく開いた扉へ向かった。

…不穏な空気を抱えながら。

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ヘイサクウカン 1章 @sikizi

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