Episode13

目が覚めると俺は真っ暗な空間に一人浮いていた。

本当は目は覚めておらず、夢の中のようなものにいる感じだったわけだけど。


「どこだ、ここ…。?」


そう呟かずにはいられなかった。

しかし自分の声だけがこの空間に反響し、すぐに静寂に包まれた空間に戻ってしまった。

自分以外誰もいない、光もない、音は自分の声しか存在しない。

そんな空間に閉じ込められたのだと思うと急に怖くなった。

もうユウにもヒナにもそして一緒にパーティーを組んでいたエミにも会えなくなると思うと…。


「はは、だめだな俺。もう心が折れかけてる。いや、もう折れてるのかもな。この空間に来たとき、いや、もっと前母さんが死んで、親父が家に帰らなくなってからずっと…」


もう、いやだ…。

なにもかも、いやになったよ。

ごめん、ユウ、ヒナ、エミ…。

俺はもう帰れそうにないよ…。


――――――――――――――――――――


心が折れた自分(俺)を見せられた俺は思った


「こんなの見せられただけで心がぽっきりいくとでも思ってんのかね?この程度なら何度でも経験してるし、過去のことをゲームの中とはいえ引っ張り出されるのは不愉快でしかないんだよ」


ふざけるな、人を甘く見るんじゃねえよ。

たしかに精神的に弱い人が見ると本当に心が折れるかもしれないが、それ以外じゃこの程度何ともないんだよ。

この程度で地獄だっていうんなら本当の地獄を知らなさすぎだ。

そう思ったところで俺の意識は再び途切れた。


――――――――――――――――――――――――


次に気が付いたときには俺は椅子に縛り付けられていた。

身体を縛り付けている鎖を壊そうと試みたがガチガチに締め付けられていて鎖が張ることすらなかった。

どんだけ硬く縛ってんだよ…。

これだと血が止まっちゃうじゃないか。

あ、ここゲームの中だから血が止まってもしばらくは平気か。

のんきにそんなことを考えていると突然椅子から電気が流れてきた。


「…っ!?」


痛ってえ、なんだいきなり。

今のはそこまで強い電流というわけではなかった。

ただ…


「これが序の口だとしたら…」


うん、考えたくないね。

それに、今俺がどのくらいの時間寝ているのかもかなり気になる。

寝ている時間によってはいろいろやばいことになりかねないからな。

まあ、一時的とはいえログアウトのできない状況になっていたとユウに知れたらあいつは絶対にこのゲームをやめさせにくるだろうからな。

それだけは勘弁だ。

ユウって結構過保護なんだよなぁ…。

それがあいつのいいところでもあるんだけど。

もしかしたらもうログインしているかもしれないエミにも心配かけてるんだよなぁ…多分だけど。

ヒナにこれが知れたら…。

うん、やめよう。

ある意味あいつがユウよりも怖い。

ヒナがは俺のことになるとラスボス兼裏ボスになるからなぁ…。

よし、このことは誰にも言わないことにしよう。

―――――バリバリバリッ!!!


「ぐあっ!!」


またしてもいきなり椅子から電気が流れてきた。

しかもさっきの倍以上の強さで、だ。

仮想世界だというのに俺の身体からはプスプスと煙が出ている。

それに流れたあともしばらく体に痺れが残っていた。


「っぐ、一気にきつくしてきやがったな…」


この強さが続くのであれば大分やばい。

HPゲージは見えないが、今ので軽く3割は持っていかれただろう。

これより強いのがきたらせいぜい耐えられて2回程度だ。

まあ1回も耐えられないかもしれないが。

それにボス部屋に近づいては死んで、また開始地点に戻されるのは精神的にくるものがある。

その辺は気合で乗り越えるしかないけど。

―――ゥォォォォォォォ…

ん?なんだろ、物音が聞こえたような…。

なにか大きなモーターが動くときに聞こえる低い音のようなそんな音だった。

しっかりと警戒しておこうと思い身構えようとしたが、鎖をガンッ!と鳴らすだけに終わった。


「そういえば俺縛られてたんだっけ。これじゃ何もできやしない…。まぁ、それが狙いなんだろうけどさ」


―――ガチャンッ!

ん?俺の頭上付近で止まった、のか?

―――グシャッ!


「ぐああああっ!!!」


俺の身体になにか鋭利なものが刺さった…のだと思う。

真っ暗で何も見えず意識も朦朧とする中で俺が感じられたのはそれだけだった

―――わけではない。

次から次へとおそらくだが身体中に鋭利なものが刺さってくるせいで感覚が麻痺してきたのかどうだかは知らないがだんだんと闇に沈みかけていた意識がはっきりしてくる。

相変わらず真っ暗闇のため今俺がどんな酷い状況になっているのかはわからなかったが、刃物が当たって少しすり減ったからか鎖の拘束が緩くなり始めているのがなんとなくわかった。

ただ、本当に微妙なラインでの変化だからか今すぐに鎖を破壊することはとてもではないができそうにない。


「だがっ、このまま耐え続ければっ…!」


いつか壊せるくらいにまで脆くなるだろう。

もちろんそうなるまでこの責め苦が続き、なおかつ鎖が修復されないなんてことがあるとは思えないが、俺はその可能性に賭けてみることにした。

それ以外にこの状況を打開できる方法など一つも思い浮かばないのだから。


「絶対に、クリアしてやるよ…!」


それが俺のゲーマーとしての意地だった。

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World Of Vision ~双刀を操るPKK~ みーにゃ @gogatsunolion

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