Episode12

俺が入った洞窟はダンジョンになっていた。

疲労困憊だった俺は入り口付近なら大丈夫だろうとタカをくくり、そこでしばらく休憩した。

そこに強力なモンスターが現れ…なんてことにはならず30分ほど休憩して奥に進むと突然目の前に大きなクエストボードが現れた。

俺も見るのは初めてだったが、見るだけで分かった。

これが遭遇クエストなのだということが。

遭遇クエストとは先週あったアップデートで追加されたランダムクエストだ。

出現条件はさっき言ったとおりランダム、そして遭遇したら強制的にクエストをやらされる。

プレイヤーに拒否権はない。

これだけでも十分鬼なのだがまだまだこれからだ。

まず遭遇クエストを受けている間はログアウトができなくなる。

これだけだと遭遇してしまった人が某アニメのようにクリアするまでログアウトできなくなってしまうので、基本的には・・・・・制限時間が設けられている。

そしてこのクエストには、制限時間が――


「ない、のか…?」


そう、ないのだ。

制限時間の項目がどこを探しても見当たらない。


「嘘、だろ?」


俺は絶望した。

ただ、絶望したのは制限時間がなかったからだけではない。

このクエストはプレイヤーのHPが0になっても開始地点に戻されるだけで街にも戻れない。

つまりクリアするまで脱出不可のデスゲーム(精神的な)状態になっているってわけか。

こうなった以上やることは一つだ。

難易度がそこまで高くないことを祈りつつクリアを目指すことにした。

あれ、二つになってるような…?

ま、今はどうでもいいか。

ついでになんか元気も出てきた。

クリア目指してがんばろー!



―――――――――――――――――――



本当に今更だがクエストの内容の確認をしておこうと思う。

まず討伐目標はこのダンジョンの奥にいるボスを倒すこと。

ただし今のところボスの情報はない。

おそらくだが自分で偵察してからボス戦に臨めということなのだろう。

上等だ、やってやろうじゃねえか。

…ぶっつけだけど。

と、まあそんなわけで今洞窟を道なりに進んでいるところなんですが…。


「なんでこんなに分かれ道多いの!?」


最初の2つ3つはまあダンジョンだからこれくらいはね、という感じで進んでいたのだがいくらなんでも多すぎる。

次でもう10回目くらいだぞ!?

まだたった20分しかたっていないのにこの分かれ道の多さに辟易とする。

幸いなことにまだ一度もモンスターには遭遇していないが、おそらくそのうちたくさん出てくるだろう。

そんなことを思いながら進んでいると、そこそこ大きな広間が見えてきた。

俺はおっかなびっくり広間を覗いた。

即死トラップとかないよな?

あっても開始地点に戻されるだけで、特にペナルティはないけど…。

死なないにこしたことはない。

俺は意を決し、広間に足を踏み入れた。

その瞬間――――

〝ブーーッ、ブーーッ、ブーーッ!!!"


「うお、なんだ!?」


おそらくモンスターハウスだろう。

けたたましいブザーの音で周囲のモンスターを集め、ついでにプレイヤーの動揺を誘う。

いくらなんでも悪質すぎるだろ!

それに、周囲にいたであろうモンスターだけでなく、新たにポップしたモンスターまでいる。

これは、死んだな…。

死にたくはないと言った手前そう簡単にはやられたくない。

精一杯の抵抗をしていたが、1分と持たず俺はこの世界で初めて死んだ。







「くっそ、あれは無理だろ・・・」


HPを全損したことで強制送還されたクエストの開始地点で俺はそう一人ごちた。


「だいたいあの悪質なトラップで集まってくるモンスターのレベルが俺より高いってどうなってんだよ…」


ボスのレベルはそれよりもっと高いわけだから…。

うん、そんなのと戦うなんて想像したくもないね。

単純に考えて、ボスのレベルが雑魚より10は高いとみると、ボスのレベルは最低でも・・・・50以上になるわけか。

…うん、無理。

俺のレベルは今38。

ボスと戦うには少なくとも10は上げないといけない。

…これ1週間くらいログアウトできんやつやん。

学校どうすんのさ…。

それが俺の意識が消える前に思った最後の懸念だった。

意識を落とすと本当の地獄が待っていることなど俺には知る由もなかった―――

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