証言その⑥義姉ラヴィ:結末

 舞踏会が終了した次の日。

 街に城の兵隊さんがやってきて、ガラスの靴を履ける者を探しにやってきました。そして、城の兵隊さんはついにシンデレラの家の前までやってきたのです。


                    *


「失礼します、城の者です」

「結構です、うちに昨日の舞踏会に行った者はいません」


 お母様、即答。

 

 何でも、国が昨日騒ぎを起こしたナスの国の王女とやらを探しているんだとか。王子様はあれ以来、食べるものも手に付かずやつれた状態でずっと彼女の名前を口にしているらしい。


 そして、彼女を探すための唯一の手がかりがガラスの靴なのだそう。あまり効率がいいとは言えないし、足のサイズが同じ人だなんてたくさんいると思うけれどね。ナスの国を探したほうが早いんじゃないかしら。


 それにしても、あの王女は現れたかと思ったら帰っていったけれど、一体何をしに舞踏会へ来たのかしら。


「ここには三人の娘さんがいると聞いております。念のため、靴を履いてみてください」

「だから、家に舞踏会へ行った人は……あっ、そういえばシンデレラが行っていたような気が……シンデレラ! ちょっと来なさい!」


 えっ、お母様……それはいくらなんでも酷いわ。


 何も知らないシンデレラにわざと靴を履かせて、あの不細工王子と無理やりにでも結婚させて私達はお金だけもらおうだなんて……! 


 ちょっと良いアイディアだけど。


「シンデレラ、行かない方が身のためよ……シンデレラ?」


 こっそりシンデレラに耳打ちすると、彼女は強張った表情で私を見ていた。シンデレラの弱気な姿は、初めて見るかもしれない。シンデレラは男らしい子だもの。


「い、いやっ。お姉さま、私絶対に行きたくないわ」

「あれ……? どうして、シンデレラが王子様の事を知っているの……」

「シンデレラ、早く来なさいっ!」


 お母様の怒声が飛んできて、シンデレラは嫌々立ち上がった。お母様に急かされて、玄関へと駆けていった。


「さぁ、この靴をお履きください」

「こんなに小さな靴が入るわけないじゃないの!」

「つべこべ言わずに履きなさい!」


 あぁ……シンデレラ。履けてほしいっちゃ、履けてほしい。何も知らないシンデレラには悪いけど……お金が欲しいし。シンデレラがもう少し良い子だったら私だってもう少し同情するのだけれど……。


「あら、ピッタリじゃない」

「おぉぉ、こんなにジャストフィットしたのはあなたが初めてですよ」

「い、嫌よ。私はジュリエンティーナなんかじゃないのよっ、みすぼらしいでしょっていやぁぁっ! 聞きなさいよーっ、降ろしなさいよーっ!」

「では、このままかついで城に連れて行きますがよろしいでしょうか?」

「はい、よろしくお願いします」

「お母様のバカタレーッ!」


 シンデレラの悲鳴が遠ざかっていくのと同時に、兵隊が去っていく足音が響いた。

 

 ……けど、あなたは今まで悪い行いばかりしてきたから仕方のないことなのかもね。


「それはそうと、レシィ」

「何ですの?」

「ナスの国の王女って、ちょっとシンデレラに似てなかった?」

「奇遇ですわね、私もそう思っていたの」


                    *

 

 こうしてシンデレラは王子様と結ばれることになりました。

 めでたし、めでたし……?


【ナスの国の王女はシンデレラに似ている 完】

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ナスの国の王女はシンデレラに似ている 久里 @mikanmomo1123

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