狐の嫁入り

水原緋色

第1話


「狐の嫁入り、だな」

「なにそれ?」

「晴れてるのに雨降ってるだろ。そういう天気の時は狐が嫁入りするっていうんだ」


近くの軒で雨宿りをさせてもらう。少し濡れた髪をタオルで無造作に拭く。


「誰から聞いたの、それ」

「んー、誰だったかな。よく覚えてないや。でもこんな日は……」


……こんな日はなぜだかあの神社を思い出す。

そしてすっきりとしない天気と同じように、俺の心の中もなんだかすっきりとしない。嬉しさのような楽しさのような感情と悲しさのような切なさのような感情が入り混じる。


あぁ、むしゃくしゃする。


そんな気持ちを振り払うように、濡れることも気にせずあの神社へ向けて駆け出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

狐の嫁入り 水原緋色 @hiro_mizuhara

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ