いつかあの星空よりも綺麗な場所で

「いつか言われるとは思っていたよ」


と、ツヤマは言う。


「だって、口数減ってきてるじゃん?お前」


『筆談で口数とは?』


こちらに自覚はなかったけど、とりあえずツヤマは気づいていたようだ。


「それもそうだな」


そう言って、彼は笑った。僕も内心では笑みがこぼれていたので、にっこり笑っている顔文字を書いた。


その日の放送から、最後に僕のこんなメッセージが流された。


『ねぇ、名前も知らないけどさ、あの約束を覚えている?覚えていたなら、明日の夜、あの神社に来て欲しい。僕は待っているよ。きっと今みるあそこからの星空は、あの日より綺麗だろうからさ。だから、いつかあの日の星空より綺麗な場所でまた会おうよ』


そんなメッセージが流されて、五年ぐらいが流れた。



そして今———————。


『じゃあ、行ってくるよ』


「おう。上手くいくといいな」


その日の夜も、僕は翼を広げて、あの神社に向かった。


あれから毎日、欠かすことなく僕は神社に通っている。


かつて、カラスの群れを率いていた僕は、たくさん知り合いがいたはずだった。なのに、初めて来た時にはもう半分が居なくなっていて、もう三匹ぐらいしかいない。


そして、あの女の子には、まだ会えない。


スケッチブックを持って来て、今日も僕は、鳥居の上にとまる。


今日も来なかったか、と、一時間ぐらいしてから思う。


僕はまた翼を広げて、飛び立とうとする。


———その時だった。


「あ……、カラス」


 僕は声のした方を向く。

 見ると大学生ぐらいの女の子がいた。赤いトートバッグを肩にかけて、髪をおさげにしていて、買い物袋を、右手にさげて。

 何もしてこない。石を投げることもなく、逃げることもなく、ただ僕を見ていた。

 訳がわからないわけがない。僕は、翼を広げ、威嚇するふりをした。あの日と同じように。


「おもしろーい」


って、その子はにっこり笑って言う。


そしてその子は——大人になった君は、買い物袋からリンゴを取り出して、こう言った。


「ただいま!久しぶり!」


『うん、お帰り』


これはカラスの僕の、一つの出会いと別れ、そして、これから先も続く、物語である。

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僕らが届けた、大切な物 大臣 @Ministar

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