以前。
給料が大幅に減額されました。
人件費がなかったからです。
しかも、中間~下っ端にかけてが切られました。上は現状維持。
「こんな泥船に乗っていても沈没するだけだよ」
そう言って、何人も同僚が辞めました。
その時、何故自分も辞めなかったのか。
……仕事があったからです。
誰かがこなさなければ回らない仕事があり、その仕事は、人が辞めるほどに増えていく。
その仕事を、こなさないと、誰かに迷惑をかける、と思ったからなんです。もう、気分は沈没するタイタニックで演奏する楽団員のひとりでした。
作者様も書いておられますが、『仕事を辞める』って、かなり気力や労力がいるんですよね。
うちの職場は、なんとか持ち直し、今は給料も元に戻りましたが……。
拝読して行くにつれ、「……今は持ち直しただけか……?」とヒヤリとしたりします。
カクヨムのトップページからこの作品を知り、何気なく拝読したのですが……。
出会えて良かったと思いました。
作者様の筆力も相まって、ぐいぐいと引き込まれました。……当事者意識もあって……。
どうか、作者様を取り巻く環境が良い方向に進みますように。
読んでみたらわかりますが、内容だけ考えるととても辛くなるお話。
でもじゃあこのお話自体が暗いお話なのか。と言われると、いやそうとは限らないと思います。
作者さんが明るい気質であられるのか、それとも表現がお上手なのか(両方の要素とも含まれていると個人的には思います)、読んでいる間は結構楽しく読めました。そして思い返してみて愕然としました。もし自分が巻き込まれたらどうしたらいいのか、そもそも冷静に考えてこんなことがあっていいのか、など考えさせられます。
こんな体験をこのような言葉遣いで表現できる作者さんですし、作中の会話から想像させていただく限りだとかなり人間味のある方。そしてその魅力は存分に活かされているように感じられます。
まず最初にお話自体を楽しめる、そして次に内容を考えてみて学ぶことができる、そんな作品かなと感じられました。読んでみて損をした、なんてことにはならないお話です。