終末アリス

神無月瓈

第一章

プロローグ

 4月13日

 その日、日本は真っ赤な煙に包まれた。

 煙を吸った人々は、数日間かけてジワジワと身体を侵し、耐え難い苦痛の末次々に死んでいった。

 1ヶ月も経たずして、人口の半分が死に絶え、世界は混沌に包まれていた。

 しかし、そんな混乱状態のなか有毒ガスによる中毒症状を発症させない一族がいた。


 我らはこのときを待っていた!我々にはこのガスの中毒を緩和させる方法を知っている!


 一族は自らを『天の知の者』と自称し全国に通達した。最初は不信状態であった人々も、中毒の末期症状であった重篤患者でさえ回復を示したチョーカー型の緩和装置(イーズ)の絶大なる効果に疑念は解け、次々と回復していった元患者たちは彼らを『天の一族』と崇めた。けれど、イーズには1つの問題点があった。それは、イーズ1つ1つにに莫大な資金が必要になり、イーズ一つ一つの価値が高いこと。そのため自然とイーズを手に入れられるものはこの混乱状態の中、金銭的余裕のあった上流階級のみに限られた。

 イーズの中央には1つの水晶が埋め込まれている。その水晶と人体を繋ぐことを手助けるのがチョーカーの役割だ。透明度の高い水晶は、生命体と繋げることによってその対象の中にある毒素を和らげる効果を持っており、この水晶は『天の一族』が独自で1から造り上げた品物であった。故に、生産率が低く、また価値が高かった。

 致死率の高い有毒ガスにより、食い扶持すら危ぶまれる家庭は多い。結果、イーズを求め略奪、殺人が大量に横行。また、下手人の多くが10代前半の少年少女であり、彼らは皆そろって真っ赤な瞳をしていた。


 5月18日某時。

『天の一族』がまた1つの通達を行った。

 満15歳以下の少年少女は、中毒症状が発症しても死に至る可能性が少なくない。しかし、当発症者には周囲の人間にガスの中毒症状を引き起こす菌を保持してる可能性が非常に高く、当発症者に一定以上の接触は中毒症状の発症の恐れがある、と。

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終末アリス 神無月瓈 @kagami1013

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