プ〜ン


不快音が耳元でする。

この音は誰もが嫌悪感を抱く。

それはフレンズも例外ではない。


特に耳の良いフレンズはこのモスキート音が不快でたまらない。



プ〜ン...


「うるさいなぁ...」


パチンッ


フェネックは両手でその不快音の元凶を

潰そうとしたが、取り逃がす。


プ〜ン...


その不気味な羽音が嫌で嫌で仕方ない。


「やめてよ...」


手で振り払おうとするが、一向に良くなる気配は見せない。


プ〜ン...


「ああっ、もう...」


フェネックはその場から立ち上がり、

場所を変えた。

これならあの不快音に襲われる心配は無いだろう。


安心して目を閉じた。



プ〜ン


(はっ...)


その音で目が覚めた。


しかし、こんな物凄く大音量で聞いたのは初めてだ。


この時、フェネックは恐ろしい事を悟ってしまった。


(耳の中にいる...)


フェネック特有の暑さを逃がすための大きな耳、蚊はその中へ入り込んだ。


「出てってよ!」


耳を異様に触る。


しかし不快音は鳴り止まない。

まるで拷問だ。


「うぅ...うぅ...」


フェネックは周りを見た。

木の枝がある。


ソレを手で取った。


意を決して、その木の枝を自分の耳に差したのだった。


「出てってよお願いだからさ!」


激しく動かし、蚊を外に出そうとする。


プ〜ン


「やだぁ、ねぇ...」


その顔には薄らと涙を浮かべていた。


プ〜ン


「いい加減にしてよっ!」


グサッ


「痛っ...」


やな予感がする。

そっと木の棒を抜いた。


先端を見ると、赤い血が付いている。


怖くなって左耳の髪のところを触った。



赤い



「うっ...、なんでよぉ...、痛い...

うぇぇぇ...、うわぁぁ....」



夜の森で泣いた。

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世にも奇妙な獣語 みずかん @Yanato383

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