ニュース速報
「アミメキリン、これを見てくれ」
重そうな四角い箱を抱えて、ドンと置いた。
「何ですか、先生」
「これはテレビだ」
得意気に鼻を鳴らした。
「何でこんなものを?」
「とある噂を耳にしてね。都市伝説って奴さ」
「都市伝説...、ですか?」
「ああ。真夜中に“ニュース速報”が流れるんだって。それを見たら呪われるらしい」
タイリクは作業しながら、そう答えた。
「呪いって...、大袈裟な」
「今夜一緒に確かめよう」
「イヤですよ、そんな...」
「いいだろ別に。お前は私のマネージャーだろ?それに二人なら怖くないし」
「はぁ...、わかりましたよ」
しぶしぶキリンは了承した。
夜になりブラウン管テレビを付けた。映し出されたのは灰色の砂嵐である。
タイリクと一緒にその不規則に動く
黒い塊を見つめた。
ジャパリパークに電波はない。
映し出されるのは砂嵐だけだ。
「どうせウソですよ…」
退屈のあまり、ぶっきらぼうに呟いた。
「信じるか信じないかは君の自由だよ」
前のめりにテレビを見つめつつ言った。
「ふん...」
キリンも腕を組んで灰色の世界を見つめた。
そのまま何時間も過ぎただろうか。
恐らく0時過ぎだ。
あくびを時折出し、彫刻の様に全く動かないタイリクをチラチラ見つつ、テレビも確認した。
(やっぱ何も起こらないんですよ…)
そう言おうと思った時だった。
砂嵐が止み奇妙な高いピーという音が聞こえたと思ったら、カラフルなバーが画面に出現したが。
「あっ!」
驚いて、タイリクに右腕を絡ませ身を寄せた。
「せ、せ、せっ先生!」
「ああ...」
短く呟いた。だが、至って冷静だった。
1分近く不気味なカラーバーの画面と
ピーという音が続いた。
そして。
ポーンポーン
“ニュース速報”という白い字幕が画面上部に2回点滅して表示された。
「マジか...」
息を飲むようにタイリクが言った。
キリンは言葉を失っていた。
ニュース速報の内容。
それも、とても奇妙だった。
『すしきはちくちかあ』
ひらがなの文字列をタイリクは読んだ。
ただ、意味がわからない。
逆に寒気を感じ、本能的に消そうと思った。しかし、時既に遅かった。
「身体が動かない...」
「せ、先生も...!?」
二人は金縛りにかかっていた。
「どうするんです!?」
「どうするったって...」
カラーバーが暗黒の画面になった。
黒い影の様なものが画面に出てきた。
注視しなければ背景と見間違う。
不穏な物を感じたが、座ったまま動けない。
「まずいな…」
「あああっ!もうどうしたらっ!」
黒い影は画面から飛び出した。
ゆっくりと角張った片足を画面の外へ出す。
「すまない...、キリン」
タイリクは諦めたような言い方をした。
ただその言葉を素直に受け取れてなかった。
「やめてっ...!来ないで!」
黒い影は近づき2人の前に立った。
「あっ...あぁ...」
「....」
震えが止まらなかった。
全身の血の気が引いた。
右の角張った腕を上げ、勢いよく振りかざした。
「いやっ...!」
思わず目を閉じた。
「...ん」
タイリクは目が覚めた。
辺りは既に朝であり、
テレビは付いたままで、砂嵐が流れていた。
隣で寄り添う形で寝ていたアミメキリンを起こした。
「おい、起きろ!」
「はぇ...、先生...?」
目を擦りながら目覚めた。
「なあ、何ともないか?」
「あっ、はい...」
一先ず、タイリクはホッとした。
「えっと、先生、あの黒いヤツは一体...」
「もしかしたら、夢だったのかもしれないね...」
あの目の前に現れた、黒いヤツの正体。
アレは一体なんだったのだろうか。
二人で顔を見合わせ、なんとも言えない空気に包まれている時だった。
ポーン、ポーン
「...えっ」
タイリクはテレビを見た。
そこには砂嵐のまま画面上部に
“ニュース速報”の文字があった。
刹那
「うっ...、ガハッ、ガハァッ...」
突然苦しくなり、思いっ切り咳を吐いた。
しかし、何かが変だった。
咄嗟に覆った両手を恐る恐る見た。
「は...」
両手は真っ赤に染まっている。
口から血を吐いた。
「せ、先生...」
その声で左を向いた。
アミメキリンも自分と同じように口から血を吐き、白いシャツを少し汚していた。
二人は訳が分からぬまま意識を失い、互いに身を寄せ合う様に倒れた。
ニュース速報の内容には、
『【速報】本日の犠牲者は2名。』
と書かれていた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます