世にも奇妙な獣語
みずかん
ヤンデレ
このメモを拾った文字の読めるフレンズさん。
僕を助けてください。
僕の名前は、かばんです。
黄色い、サーバルキャットのフレンズと一緒に旅をしています。
僕をそのサーバルから助けてください。
いじわるなフレンズではないですが、
僕を監視しています。監視というのは、ずっと見続けているということです。片時も僕のそばから、離れようともしません。僕の生活はサーバルに管理されています。自由に行動すると、首を腕でおさえ、ツメをたててきます。
僕は海の外に出たいのですが、彼女はそれを望んでいません。
おおげさに言うと“海の外”という言葉を出しただけで目の色を変えて、
「かばんちゃん、絶対にどこにも行かせないからね」
と言ってきます。
「死ぬまでずっと一緒だよ」とか、言ったり、僕の名前を何度もくり返し言ったりして、怖いです。
特におっかないのが、僕が別のフレンズと仲良さそうに話すと、サーバルは、
「私のこと好き?」と何回も尋ねるのです。「好きだよ」と言うと、今度は
「本当に?」と何度も何度も言います。
しつこいです。
彼女は、僕が旅の途中で見つけた、
ナイフをよく僕から盗みとります。
ナイフというのは、色んなものを切ることができる、とっても怖い道具です。
普段は料理に使います。しかし、サーバルは、違った使い方をします。
ある日僕は用事があり、どうしてもサーバルと離れなければいけませんでした。
長い時間説得して、どうにかその場を
切り抜けました。僕が用事を終え、彼女の元へ戻ると、すぐに、首を腕でおさえられ喉元にナイフを突き立てられました。僕はナイフの入った鞄を持って行ったのに、全くいつ取られたのかわかりません。僕は、顔を青ざめながら彼女のしてくる質問に答えました。
彼女の聞いてくる質問は意味不明なものばかりです。
「何話したの?」「何もされてない?」
「何か食べた?」「その子に触った?」
僕は恐怖を感じているのを必死に悟られない様に押し込み、作り笑いを浮かべながら、その質問に真摯に答えました。
「それならよかったー」
と何事も無かったように言い、ナイフを卓上に置くと、
「でも、そのにおい、ちょっとヤダな」
と言ってきました。
僕をベッドに連れ込んだあと、彼女は
めいいっぱい、自分の身体を僕にこすりつけて来ました。
もう、僕の体臭が自分のものなのか、
サーバルのものなのかわかりません。
もうひとつ、気味が悪いとしたら、
僕が前に転んで怪我をした時に、滲んできた血を彼女はまるで蜜を吸う蝶の如く舌で舐め続けてきました。
まるで美味しそうに舐めていたのが不気味でした。
僕は毎晩サーバルにギュッと抱きしめられ、動くのもままなりません。
僕は彼女の管理下にあり、支配されて、
自由を奪われています。
前はこんな子じゃなかったのに。
誰か、強いフレンズさんがいたらサーバルと僕を引き離してください。
最悪の場合は、サーバルを殺しても構いません。誰か、僕を助けてください。
お願いします。
カチッ。
ボールペンの芯を閉まった。
「ねぇ、かばんちゃん、何書いてるの?」
その声に戦慄した。
幸いにも彼女に文字は読めない。
「えっと...、ぼ、ぼくの日記だよ!」
振り向いて作り笑いを見せた。
「へぇー...」
「こ、今度サーバルちゃんに、お手紙書いてあげるね!」
すると、彼女は少し表情を明るくさせた。
「えっ、本当に!うれしいな!」
「あははは...」
すると彼女は両腕で後ろから僕に抱きついた。
「かばんちゃん!だーいすき!」
明るい声でそう言った。
「うん...、ぼくも大好きだよ...」
すると、今まで僕を抱きしめていた両腕が上にあがった。
強く首を絞めに来ている。
「...ほんとう?」
純粋無垢な声でそう聞いた。
(く、苦しい...)
「ほ、んと、だよっ...」
苦し紛れにそう答えた。
ただ、サーバルは一向に力を緩めない。
(死ぬっ...)
「死なせはしないよ」
急に首を解放した。
「ハァ...ハァ...」
僕は息を乱す。
「死ぬ時も一緒だよ!かばんちゃん!」
あはははと明るい笑い声が聞こえた。
「うん...、ありが...、とうね...」
「私の大好きなかばんちゃん!」
嬉しそうに僕の頭を撫でた。
今夜もまた、僕は彼女に拘束される。
自由がほしい。
だれか助けてください。
「ボスは羨ましいよね。かばんちゃんと一緒にいられて。ずっとかばんちゃんの肌に触れていられてて。うざいな。
かばんちゃんに触れていいのは、私だけだから」
ブチッ
「サ、サーバル...。サンニンデ
タビヲ、シタジャナイカ。
ボクタチハ、ナカマ...」
「ボスのくせによく喋るんだね。
でも、ボスはかばんちゃんと長く居すぎだよ。さよなら、ボス」
「アワ、アワワワ...」
パリン!
思いっ切りボスを踏み潰した。
(次は...、僕の番かもしれない...)
一人寝たフリをしながらその音に恐怖を
感じた。そして、助けは来ないと、現実を知り、絶望するのだった。
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