7日目 バグと別れて出会う話

 ㅤ今日はバグと別れる日。だけどそれは、新たなゲームとの出会いの日かもしれない。


 ㅤゲームが現実を超える。現実があるから、ゲームがある。


 色々なこと考えるけど、バグはゲームから現実に来た。でもバグは、現実を現実とは最後まで気づかなかったみたいだ。


 ㅤオープンワールド。その言葉の意味は、これまた色々な解釈があって。攻略方法が開かれていること、世界が繋がっていることなど。


 ㅤオレたちが住む世界は、ゲームじゃない。CERO(対象年齢)なんか無視した悲しい出来事も次々起こる。


 ㅤとてつもなく広い世界の、狭い世界でしか生きられないこともある。自由に生きられるはずの社会にいたとしても、好き勝手出来るわけじゃない。


 ㅤただ、小さな世界を、生き方を。広げた気にさせてくれるのはゲームだった。そしてバグだった。変わってるかな? ㅤそれとも誰か共感してくれるかな?


 ㅤどっちでもいい。ただオレは、オレが見てる世界を、楽しみながらいきたいんだ。



「世話になったな、タロウ」


「どう帰るつもりなんだ」


「雷で来たなら、雷で帰るだろう」


「オレ、お前のこと忘れない。と言えるほどの思い入れはない」


「そりゃあ寂しいな。ところで、部屋のずっとここに置いてあるのは何だ」


「お前は知らなくてもいいやつ」


「フッ、そうか」


 ㅤ窓の向こうに、雨雲が集まってくるのが見える。


「最後まで不親切なチュートリアルだったな」


「いや結構教えた方よ。お前のことこそまだよく分かんない」


「私のことを詳細に説明しても構わないが、説明するまでもないようなヤツだ」


「不親切だなぁ」


 ㅤ徐々に雨雲が、うなり声を上げ始める。


「そろそろお別れだ。タロウ、ありがとう」

「どういたしまして」

「貴重な体験が出来た」

「動物園行ったくらいだろ」

「どうぶつえん? ㅤそれは何だ」

「もう説明する時間がない」

「じゃあ、最後に握手だ」


 ㅤその手にはもう、触れられなかった。稲光がオレたちの小さな世界を包んだ。だけどオレはこれから、バグにある意味直接触れられる。プレイヤーとして、ゲームを遊ぶ。これがオレたちの、本来の関係なんだ。なのに……。


「いない」

「どこだ」

「バグ? ㅤバグ!」


 ㅤザ・オープンワールドを始めても、彼の姿は見当たらなかった。しょうがなくオレは、見慣れない女性キャラクターを操作して、世界を巡った。


 ㅤそしてついに、見つけた。


「あそこにいるモンスターを……」


→依頼を受ける

 ㅤ依頼を断る


「よろしく頼む」


 ㅤバグ、お前。NPC(ノンプレイヤーキャラクター)やったんかい。

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ゲームを買ったら、ゲームの中のおっさんが一週間現実(こっち)でオープンワールド体験した話。 浅倉 茉白 @asakura_mashiro

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