6日目 バグのアプデの話

「そうか、私は……」

 ㅤ窓の向こうには、緑輝く木々と、暖かな朝日。



 ㅤ翌朝、バグを迎えに行った。病室で無事、意識を取り戻したらしい。医者の人曰く。


「結局何も分かりませんでしたが、元気になったので退院です」


 ㅤメガネの向こうの赤く腫れた目は、次何かあったらゲーム会社にでも連れて行けと言わんばかりだった。



 ㅤバグは家に着くまで、なぜかあまり口を開かなかった。しかし家に着いた途端、色々話し出そうとする。


「タロウ。私は、完全に思い出した。どうやってこの世界に来たのか。いつまでこの世界に」


「悪い」


 ㅤオレはバイトに行かなくちゃならなかったから、話を途中でさえぎった。しかしこれが、後々とんでもないことに影響することもなかった。


「ただいま」


 ㅤ家に帰って早速、バグの話を聞いてあげることにした。


「タロウ。私は、完全に思い出した。どうやってこの世界に来たのか。いつまでこの世界にいられるのか」


「そうか」


「私は、何か得体の知れない存在に頼み込み、新たなオープンワールドの主人公になろうと思った。しかし期限は一週間」


「ほんで」


「自分の名前を思い出せないのは、仕様みたいだ」


「ほんで」


「以上」


「は。何だそれ。ほぼ何の情報のアプデもないじゃん!」


 ㅤオレはケタケタ笑った。バグもフフッと笑った。親父の写真が静かにそんな二人を見ていた。


「明日はバイト休むか」

「よろしく頼む」

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