憑くモノ達と分かる者達

純文学の気配をまとった純度の高い上質なホラー小説です。淡々とした文体でじっとりと這い寄ってくる内容は、読んでいてむず痒いような皮膚の一枚下で蛆が這うような奇異な悪寒を全身に這わせます。
キャー!と悲鳴を上げるホラーではなく、ゆっくりと沈んでいくような静謐なホラーの雰囲気で、まさに怪奇な存在をはっきりとは解決させず理解できない曖昧な存在のまま扱っている部分がとても好みです。現実の中に唐突に現れる歪な存在の薄ら寒い不気味な演出が最高に素晴らしく、夏にはドラマで見たいとすら思いました。
一話一話が孤立し、連作短編風になっているので大変読みやすいです。特に『水に棲む』がオチも不気味で一番好きでした。まさに夏にぴったりのホラーですが、私的に冬にも読みたいと思える静かな恐怖を孕んだ素晴らしいお話だと思っています。
深々と降り積もる恐怖を是非に味わってみてください。