第2話 醜女のエトラ


 翌朝。心地よい寝床の上で目を覚ましたオルファは、ぐっすり眠ったおかげで体力を回復した。

 昨夜あんなことがあったが、特に身体の不調はなく、部屋で食事を美味しくいただいた。

 彼が一晩泊まった部屋は宿ではなく、警備する者たちが勤める建物の中の一室であることがわかった。

 そしてプリリーナ(略してプリン)の見送りで、旅を再開することと相成るのである。

 国家機関である建物は立派な造りの出入り口であった。右と左それぞれに銀の槍を持った内勤の番兵が、背筋を張ってピンと立っている。

 外に出てきたプリンが、両手を腰にあててどっしりと足を開いた。

「またどこかで会えるといいわね」

「ああ、そうだな。できれば次回は全裸で汗する情事の場ではなく、酒場でビールをあおっているところで再会し、ともにジョッキをあわせて酒を酌み交わしたいものだ」

 そんな言葉をプリンは微笑で返し、部下である驃騎官が連れてきた栗毛の馬の背中を撫でる。

「で、お酒を飲んだあと、私をベッドの上に誘う気なんでしょ?」

「うむ。オレは剣の腕前に自信はあるが、こっちのほうの剣はもっと立派で達者だと自負している。プリンがお望みならば、いつでもお相手してやるぞ」

 堂々たる出で立ちで自身の股間にちらりと目をやったオルファに、プリンはまんざらでもない表情で、「バカね」とこぼした。

「じゃあ私、これから仕事で行かなきゃいけない現場があるの。さようなら。気をつけてね」

 言い置いた彼女はひらりと馬に飛びのって、他の驃騎官を連れて走り去っていく。

 土煙のたつ馬の一団が遠くなるまで、オルファは見送った。

 ほどなくして麻袋のでかいリュックを背中へ引っ掛けた彼は、往来の反対方向へと足を向ける。 

 いくらか進むと、人通りの多い道路のすみに荷車を置いて、商いをしているほっかむりの中年男の二人組みが声をかけてきた。

「どうよ兄さん。モンスターの肉なんじゃが一ついらんかえ? 昨日の昼にとれた、まだまだ新鮮な肉だべ」

 オルファは一応足を止めて、地面の布に並べられた大きな生肉に目をやる。

「それはどういった肉だ」

 彼の問いに、中年男の片割れがその出所を説明した。

 オルファは首をゆるゆるふって、また歩き出す。

「そういう物は入り用ではない。断る」

「ほうか。ざんねんだぁなぁ」

 どうやら品はほとんど売れないらしく、中年男のがっかりした声を背中に聞いた。

 そして賑わしい大通りを抜け、郊外のほうまでずんずん歩いていくと、川をまたぐ大きな橋が見えてきた。

「おや?」

 視界に入ってきた違和感のあるものに目を留めた彼は、運んでいた歩を一旦止めて、そこをよくよく注視した。

 ワンピースを着た小柄で地味な少女が立っているのはわかる。しかしその横姿が、ゆっくりと橋のすみに近寄った。

 思いつめた沈痛な面持ちで、自分よりも背の高い欄干の頭を持ってぶら下がった。木靴をはいた足をあげて乗り越えようとしている。

「あっ! いかん!」

 リュックを捨てたオルファは、素早い動きで剣を引き抜いた。次いで野球の大リーグ投手さながら片足を高くピンと持ち上げ、「てい!」と掛け声かけて振りかぶった。勢いよく投てきされた得物は、石の欄干めがけて真っ直ぐに飛んでいく。

 ザクン!

「うぎゃああああ!」

 突然、剣が目と鼻の先に突き刺さったものだから、茶色のボブヘアーの少女は目玉が飛び出さんばかりに驚いた。うしろに向かってベタンと尻もちをつき、

「えっ、何? 何?」

 いったいどこから飛んできたのか、うろたえた顔で首を左右にせわしくキョロキョロ振った。投げ終わったポーズで、こちらを厳しく睨むオルファと視線が合う。

「あわわわ……」

 殺気だった双眸。

 ここにいては殺されると気取った少女は、あわてて足を宙にかいて逃走しようとしたが、

「待てい!」

 オルファが全力ダッシュで駆け寄り、背後から両脇をガシッと取りおさえた。そのまま自らの身体ごと地面にねじ倒して仰向かせる。両脚をカニのごとく巻きつけ彼女が身動きできないようにした。

「暴れるな! 全身の力を抜いて、じっとしろ!」

「何ですか? 何をするんですか? どうして私、アナタとプロレスしてるんですか?」

「だまれい! 貴様は今しがたこの橋の上から身を躍らせようとしていたではないか!」

 オルファの恫喝に少女は血の気が引き、今にも泣きそうな顔で声を震わせた。

「だ、誰この人。知らない。……怖いよう。おしっこ漏れそうだよう……」

「まだまだ若く未来のある女子が自害などしてはならん! たった一つしかない命を粗末にするな、ぶっ殺すぞ!」

 躍起になったオルファの制止に、少女は抵抗するのをやめて、横になったままわんわん声を張って泣き出した。

 

 オルファは身体を解放してやり、取り乱していた少女を欄干にもたせかけた。

 いくらか経って落ちついた頃合いを見、なぜこんな真似をしようとしたのか質問すれば、 

「だって私、ブサイクなんです」

「ブサイク?」 

「……チビだし、鼻が低いし、ほっぺにソバカスがあるし、目は一重で陰気だし」

 悲しそうに自分の欠点を言い並べる少女。オルファはその隣に腰をゆっくりと下ろす。

「そうだな。言うとおり、お前は確かにブサイクだ」

「えっ?」

「チビで鼻が低くてソバカスがあって、目は一重で陰気。だろ?」

 少女はとんび座りのまま耳をふさいで、拒絶するように首をブンブン振る。

「いやあ! そんな面と向かってコンプレックスでナイーブになった私のハートをえぐるようなセリフをぶっつけないで!」

 自分で言っておいてその主張はないと思うが、オルファは静かな声音で言葉をかけた。

「まあ落ち着け。見た目はざんねんなつくりでも、中身のほうはどうだ? お前は心までブサイクなのか?」

「中身……ですか?」

 彼女いわく、自分は両親と三人で暮らす、ごく平凡な十四歳の一人娘であること。

 長所は何かと訊くと、「とりたててないです」と、あっさり答えた。

 それから二人で肩を並べて座った状態で、オルファは少女の話を聞いてやった。

 橋の上から早まろうとした具体的な理由はこうであった。

 自分がこのまま生き続けても将来の結婚どころか付き合う男すらできない。

 現に昨日、二年かけて好きだった同級生の男子に告白するも、フラれて落ち込み先を嘆いての決断だった。

 少女は再び涙にくれつつ、話を続ける。

「羊の月の十日に、手作りのパンケーキ(これは日本でいうところのバレンタインデーのようなもの)を焼いて、学校の裏に来てもらったんです」

「ふむ。それを男に手渡したら反応が芳しくなかったと」

「……」

 暗い顔で言いよどむ少女にらちがあかなかったので、オルファは彼女の耳の穴に息を吹きかけてやった。

「きゃ! やめてください。くすぐったいです」

「お前が早く先を語らないからだ」

「でも、今あったばかりの人に、こんなこと……」

「構わん。初対面の人物に対する抵抗など、あの青空にうっちゃってオレにすべてを語り聞かせるのだ」

 話の続きをうながされたエトラは、涙をぬぐってため息をついた。

「……実は、こんなコトを言われました。お前みたいなブスの手作りパンケーキなんか、一ミクロンたりとも口にしたくないって」

 同級生は、リボンのついた箱を地面に落として、くるりときびすを返すなり、うしろ足で箱を踏んづけて立ち去っていったという。

「なるほど。手酷いフラれ方を経験したんだな」

「……私って陰気なこともあって、男子のグループから毛嫌いされている立場なんです。だけど、その人はいつも優しくて、そんな人ではないと思っていたんですが……」

「ふむ。しかしだな。お前にも女の友達はいるだろう。女の友達ならお前がそういう目に遭っても、共感して味方になって話を聞いて、ついでに慰めの言葉の一つもかけてくれるはずだ」

 少女の顔の暗い影が濃くなり、どんよりとした目になった。

「女友達、ですか……」

 硬い面持ちで地の一点を見つめ、石仏のように身動きしなくなる。

 オルファは心情を察し、鼻から息を吐いた。

「要するに、自分一人の心では支えきれない重い悩み事にさんざ困り抜いて、自らこの世を去る選択肢をとったというわけか」

 あい済みませんとばかりに、少女は身を縮めて小さくうなずいた。

「理由は分かったが、お前、水死した人間をその目で見たことはあるのか」

 オルファを眺める少女は、黙ってかぶりを振る。

 彼は過去に城兵として働いていた時、夏場、川に落ちて数日後に発見された水死体を引き上げた話をしてやった。

 人間がどんな酷い姿に変わり果て、どんな悪臭を放っていたかを詳細に語ってやると、少女の顔色がだんだん青白くなってくる。

「がくがく……」

「いいか。ただでさえブサイクなお前がさらにも増してブサイクな姿に変わるんだ。しかもそれを野次馬にやって来た衆人環視の中で晒すことになるんだぞ」

「もういいです!」

 よほど怖かったらしく、歯の根が合わぬ居心地のわるそうな横顔で、寒そうに二の腕をさすりはじめた。

 オルファは片膝に手をつけて、ゆっくりと立ち上がり、こんな言葉を発した。

「おい、女の子。オレはお前に頼みたいことがあるんだがな」

 突然どうしたのかと少女は眉を曇らせ、しかし聞くつもりはあるらしく彼の目をじっと見つめてくる。

「まだ陽は高いが、今日はお前のうちに泊めろ」

「えっ?」

「このまま別れてお前をほったらかしにすれば、また同じ愚行を働き、馬鹿な命じまいをされるとオレの向後の目覚めの悪さに影響を与えかねない。ここで出会ったのも一つの縁。お前の悩みを解決し、難儀から救ってやろう。うむ、それがよい。さあ、早くオレをお前の住まいまで案内するのだ」

「でも……」

「案ずるな。オレはこれでも過酷な修行を積んだ一人の剣士。悪いようにはせん」

 半ば強引な申し出に、少女は戸惑った。

 地面を見つめながら逡巡をはじめたが、オルファはそんな時間的な猶予は与えず、少女の脇をもって無理やり引き上げた。

 そしてオルファは、宿屋でも何でもないただの一般民家である彼女のうちに泊めてもらう段取りとなる。

 ……十五分後。

 背中に両刃の大剣、肩にはでかいリュックをかけたオルファを見た彼女の両親は、最初は驚きはしたものの、若い旅人という理由で一応は家の中へ通してくれた。

 そもそも両親にとっては交友関係の狭い我が娘が、背の高く容姿のいい同世代の男を連れて来たことを心中で喜び、うまく取り計らって娘の婿にできはしないかと目論んだわけである。

 夜まで時間はあったので、オルファは日が暮れるまで家の手伝いをやった。

 家畜舎の動物にかいばをやったり、モーモー鳴く牛の下部に桶をやって乳をニギニギ搾ったり、あとは乾草を荷車に積み込む作業に汗を流した。

 やがて太陽は沈み、夕食の時間がやってきた。

 鶏肉の入ったほやほやのスープを四人で囲み、テーブルを挟んだ両親からいろいろと質問されることになった。

 いったいどこで知り合ったのか、その経緯を質問されたことに対しては、ありのままの出来事を正直に答えるわけにはいかなかった。そのあたりは適当に、知らない町で道案内を受けたことがキッカケだと、体のいい理由を用いてごまかした。

 まさか身投げをしている現場に出くわし、それを制止した間柄だと打ち明けるわけにはいかない。

「まあオルファさん。この家はあまり広くはないですが、二階へあがってゆっくり旅の疲れを癒してください。それと家の裏には露天風呂がありますので、あとで入ってくれても結構です」

 これはビールをあおった彼女の父親の言。

「色気のないエトラがこんな素敵な剣士さまを家に招き入れるなんて光栄ですわ。ぜひぜひ娘と仲を深めていってくださいね。なんでしたらしばらく、ここに足を止めてお住まいになって頂いてもよろしくってよ」

 こちらは木のボウルからサラダをよそおってくれた母親の言葉である。

 どうやら元お城を守る兵士であったネームバリューが、両親に好印象を与える効果を発揮したらしい。

 エトラがちぎったパンをスープに浸して食べていたところ、父親が彼女を見てこんな提案を持ちかけた。

「そうだエトラ。オルファさんと一緒に風呂に入って、お背中で流して差し上げなさい」

「んぐ!」

 エトラはパンを喉に詰まらせてしまい、胸を数回ドンドン叩いたあと、

「ええ! そんなぁ」

 予想しなかった申し出に目を丸くし、抗議の声をあげる。

「今日会ったばかりの男の人とお風呂なんて、私、恥ずかしいよう」

 と、りんごみたいに赤く染まった顔に両手をあてた。

「まあまあいいじゃないか。照れくさいならタオルか何かで隠せばよい。ではエトラ、食事が終わったらオルファさんを風呂まで案内してあげるのだぞ」

 父は娘をなだめるような口調で言い、腕を組んで妻と一緒にうなずいた。

 

 夕食後、湯気がぽっぽとたっている岩風呂のふちへ、マッパのオルファはどっしりと腰を据えた。

 ややあってから、出入り口のところでチラチラと恥ずかしそうに、狼狽しているエトラを呼びかける。

「おいどうした。さっさとこっちへ来い。オレの背中をいつまで遊ばせておくつもりだ」

「えーっと」

 彼女は見慣れぬ若い殿方のハダカに心理的な抵抗があるらしく、待てども待てども足を踏み出してこない。

 便々と待つことに焦れたオルファは立ち上がり、ズカズカと進んで少女の手首をつかんだ。

 肌身にタオルを巻いただけの少女を強引にひきずっていき、肩を強く押し下げて、無理矢理ポジションにつかせる。

 オルファはそんな気まずそうな少女の真正面に、どっかと粋な感じで股を開いて座った。

「背中からなど面倒だ。まず一番にココから洗え。言っておくが布きれなど使うなよ。その小さくふにふにと柔らかそうな掌を使って、竿やタマをまんべんなく擦り洗うのだ」

「そんな、いきなり……」

 赤天狗のお面の鼻よろしく、すでにカチコチに屹立していた竿のイカツイ先っぽをエトラに向けて、攻撃的に反り上がらせている。

 少女は顔を両手でおおってしまい、しかし指の隙間からおどおど覗き見しながら唇をひらいた。

「あの、私、今までこういうのに触ったことありません。……できればご自分で、洗っていただけると」

「四の五の言わずにさっさとクリームを泡立てるのだ。あとそのタオルは何だ。いつまでそんな余計なものを裸体に巻いてオレを拒もうとする! とっとと剥ぎ取りオレにありのままの生肌をぜんぶ晒すのだ!」

 言うが早いかオルファは少女の胸に手を伸ばし、荒っぽくタオルを掴んでひったくった。

「きゃあ!」

「ブサイコのお前ごときが何を恥じらい躊躇する必要がある」

「そ、そんなコト言われても」

 我が身を隠そうとする少女の乳房は、まだ発育途中のため小ぶりであるが、ほんのりと丸く桜色に染まる乳輪はやや大きめである。

「フン。チビの割りにスケベな乳色をしていやがる。おっとダメだ。腕で隠そうとするな! オレを拒むのならこんな桃色メス乳首、こうしてくれる!」

 オルファは抗う少女の両手首をとって力づくで広げた。胸を開かせるや否や、片方の乳首に音をたてて吸い付く。

「はぁん!」

「何だ。生意気にも色っぽい声を発しやがって。本当はもっとオレの舌で刺激されたいのだろう。ほら。今度は歯を立ててやろう」

「やっ! 乱暴にしないで。私はただオルファさんとお風呂に入りに来ただけ。こんなコトするために来たんじゃぁ……。ああっ!」

 チュパチュパといやらしい音を鳴らし、オルファが吸って舐めまわすと、乳首がコリコリと硬くなってくる。

 ある程度たってから口を離して、ひるむ少女の両肩をとった。

「エトラ、忘れたのか。橋の上で出会った時、オレが申してやった言葉を。悲し悲しと泣きくれるお前の悩みを解決し、難儀から救ってやると約束してやったではないか」

 真剣な目をぶつけ、彼女の揺れる瞳を見つめ続けた。

 熱く視線を合せた状態で、いくらか時間が経過した。

 それまで強張っていたエトラの身体が、彼を受け入れるようにして緩んだ。

 

 やがて、湯船のふちに腰掛けたオルファの膝の上で、背をくっつけた全裸のエトラが、唇を噛んで彼のたくみな指使いに翻弄されていた。

「いやっ、だめえ。あん、あはぁ!」

「いいぞエトラ。もっと可愛いメス声であえぐのだ」

「ああ、オルファさん! 私こんなの恥ずかしい」

 クチュクチュと濡れそぼるピンクの襞と襞の間を指先がなぞり、やや焦らすようにして膣口への攻めはまだおあずけとし、淫靡に目を細めて熱く息をはくエトラの頬を舌でねぶりあげた。

「きゃん!」

「ハハ、気持ちが良いだろう。お前の感じる場所をどんどん弄りまくってやるからな」

「すごい。おっぱいの先もアソコも、ビクンビクンって波打ってる」

「ふっ、エトラよ。お前は普段、こっそり自慰をしているだろう」

 少女は意表をつかれた質問に反応し、首だけでふり返る。

「えっ?」

「分かる、分かるぞこの感じ方。処女のくせに、指がマンコや乳首に触れることに慣れていやがる」

「ど、どうしてそんなコトが……わかったんですか? 私、ここ最近、夜になると一人でする回数が増えてきて」

 その言葉を耳にしたオルファの表情が得たり顔に変わった。

「ハハハ、かかったなエトラよ。オレの鎌かけにあっさり乗ってくるとはな。やはりお前はオナニーの大好きな、ふしだらなブサイク少女だ」

 次いで彼女のソバカスの頬を甘噛みしたあと、

「エトラ、自分で醜いと思うそのツラであえいでいる姿を、このオレに存分に見せつけてみろ。そして今からお前を女にしてやる。いや、正確に言うならばお前に女の良さを教えてやる。女に生まれてきたことの幸せをだ。それは顔かたちなど関係ない、スタイルの良し悪しなど二の次だ。なんと言っても女はココがしっかり付いていれば、その幸福を味わい噛み締めることができる。そう、ココだ。ココに女の悦びが集約しているのだ!」

 言い終わるなり、オルファはそれまで襞を弄んでいた指先を、愛液の垂れ落ちるエトラの膣口へと移動し、奥へ奥へとズブズブ沈めていく。

「あひい!」

 攻めを受けたエトラは喉をさらして甲高く叫んだ。

 膣の中身をさぐるオルファの指が天井をなぞるや、少女はまるで背筋に電撃が走ったかのようにして、さらに身をのけぞらす。

「やめてオルファさん! 気持ちいいけど、ちょっと痛いの……」

「おお! このザラザラとした指ざわり。お前はなかなかいいモノを持っているではないか」

 粘膜の小さな粒が無数、少女の未熟な膣の上に展開されている。

 エトラの抗いを物ともせず、オルファはいやらしい水音をたてて指攻めを続けた。

「あ……あぁ! だめ、すごい!」

「よし。そろそろほぐれてきたようだ。では今からお前の初ものマンコにオレの硬くなった雄竿を入れ込んでやろう。……ほら、どうした。おねだりしてみろ。早くチンポくださいとオレを熱い瞳で見つめて頼んでみろ」

「いや、そんな恥ずかしいこと、いえない……」

 エトラは目を閉じてかぶりを振る。

「言え、言うんだ。オレの極上チンポをくわえ込むまたとないチャンスだぞ。それともあれか、お前の口や手を使って、オレのものを射精に導くとでも言うのか」

「はい。そうします。まだそっちのほうがいい」

「何だとエトラふざけるな! オレがせんに発した言葉をもう忘れたのか。オレはお前を女にし、その最上の悦楽を教えてやると申してやったはずだ」

「それはそうですけど……なんというか。あぁ!」

 戸惑うエトラを正面に向け、そのまま両腕をひかがみに引っ掛けて、ぐっと立ち上がり、股をM字に開かせる。

「ええい! お前の嘆願などおかまいなしだ。いくぞ! 今からお前のおびえて愛液の涙を流しているヘタレマンコに、オレの頑丈なガチガチ鋼鉄鬼チンポを差し込み、そして途中で挿入の邪魔をしくさっている膜のバカ野郎を、勃起して粘膜の張りまくったオレの自慢の百戦錬磨の亀頭でブチ破ってやるからな!」

「ダメ! そんな無茶なやり方はイヤ。乱暴はやめて。怖いよう。もっと優しくしてよう」

「臆病風に吹かれている暇など与えてやるものか。そら、いくぞ。覚悟して股ぐらに気合を入れろ!」

 オルファのカチカチにいきり立った超極悪ビッグ鬼チンポの先端が、エトラの花も恥らう純潔な天使の穴にキッスをした。

 粘膜同士が触れた瞬間、オルファは撃鉄にケツを蹴られた薬莢の弾丸のごとく、爆発じみた勢いで一挙に腰をエトラに衝突させた。

「ひぎいいい! 痛いよううう!」

 手荒い挿入に、エトラは声高く叫ぶ。

 両目を思いっきりひん剥き、奥歯が欠けてしまいそうなほど歯を食いしばった。腰を狂ったように打ちつけまくるオルファの首を強く抱きしめて痛みに顔をふって、髪の毛を左右にバサバサと散らす。

 口端から流れたヨダレが顎から糸を引いて、ブンブン揺れてあたりに飛んでいった。

「オルファさん! アソコが裂けそうだよ。もっと! もっとゆっくり動いてえ! 速いよ! 速すぎるよ!」

「断じて断る。今宵の栄えある処女喪失という一生に一度の記念日に、その涙のちょちょ切れるほどの痛み苦しみを、お前の記憶の石板にとくと刻みつけておけ」

 苦痛にゆがむ少女の要求に反して、前後運動の激しさがばんばん増してゆく。

「女の人生に一度しかない破瓜の激痛だ。拒絶するなどもったいないことだぞ。むしろ今の状況を存分に楽しめ!」

「いやあああ! 壊れちゃうぅぅぅ!」

 エトラの絶叫が、星々のまたたく広大な夜空を突き抜けていった。

 おそらくその金切り声は、食卓でゆっくりお茶をすすっている父母の耳に届いたであろう。

 だがそのふた親は、我関せずといったていで向かい合っていた。

 湯気のくゆるカップに口をつけて、あとで一皮剥けて成長した娘が、どんな顔つきでやって来るのかを楽しみにしていたのだ。

「泣け! 喚け! 自分の脳裏に暴れている苦痛はやがて快楽へと変わるための上質なスパイスだ」

「オルファさん、こんなのもうムリ! 死ぬ。死ぬぅううう!」

 呼吸が不安定になったきたエトラの意識の糸は、絹のそれよりも細くなり、いつどの瞬間にプツリと切れてもおかしくない状態であった。

「この程度の試練に耐えられなくてどうする。お前はまだ心の幼い子供なのか。ええ、どうなんだ。もしもそうなら、お前のことを齢十四つのエトラぼうと揶揄してやるぞ」

 オルファは身体じゅうの筋肉を最大限に稼動させた。両脚の真ん中で熱い興奮により、血液を集めてバキバキに硬化した凶悪なる鬼マラを、エトラの瀕死寸前になって悲鳴をあげている脆弱なビギナーマンコに、情け容赦もなく破壊せんばかりに刺して刺して刺しまくった。

 エトラの膣の粘膜は、強烈なピストン運動による擦熱熱で、ヒートアップして焼けただれそうになっている。

 祭りのピークに達した神輿よりも速く激しく暴れまくる二人。そんな状況の中で、エトラは意識の狭間をさまよいながら不思議なものを見た。

 脳の視界の向こうに、真っ白な光が現れたのだ。

 それは暖かく心地よさそうで、思わず興味をそそられ触れてみたくなった。

 だから光に近づこうとした。視界の奥からその光も彼女を迎え入れるかのようにして、ゆるゆる接近してくる。

 しかしある程度の距離まで詰まったとき、光はそっと止まった。止まって少しずつ逃げ始めた。

 心の中で手を伸ばしていたエトラは、「待って!」と呼びかけ、逃がさないようさらに近づこうとした。

 暗闇の奥へと走る光を追いかけるも、それはまだ少女を拒否するようにして、どんどん遠ざかってしまう……。

 そうこうするうち、オルファに抱えられ、崩れ落ちそうなほど強く揺さぶられていたエトラが、身をあずけたまま死んだかのようにぐったりと動かなくなった。

 性器と性器の結合部から、オルファの脚のほうへと伝って流れていく温かな液体。

 少女の膣が破壊されてしまい、大量の血液が落ちてきたのか。と思いきや、それは彼女が耐えうることができなかった凄まじい苦痛とともに、意識が途切れる際、放出された黄金色の小便であった。

 湯気の立つそれには血が混じっていた。

 力なく首をそらせたエトラの瞳は光を失い、ポカンと半開きになっただらしない口の中からは舌がのぞき、ヨダレの糸を下へと長く伸ばしている。

 もしも事情を知らない者がこの現場を見ていたならば、浴場で男が命の火が消えた少女の裸体を使って、力いっぱい腰を振りつつ死姦していると見紛うことだろう。

「うっ!」

 意識が途切れて身動きしないエトラを相手に、オルファは赤く濡れた竿を引き抜き、柔らかい腹部に亀頭を擦らせて、静かにドクドクと精を打ち放った。

 オルファの濃ゆい子種汁が、少女の腹のみならず、乳房やあごにへばり付いてびとびとに汚す。

 そして精を飛ばし終えたあと、まだ硬さの残る肉竿を身体から離した。

「……おい。起きろ。何をしている」

「…………」

「いつまでも動かないなら、お前の身体をこうしてやるぞ」

 オルファはエトラを捨てるために、そばの湯面めがけてたたっ込んだ。

 哀れ少女は身体を湯にバシャンと打ちつけ、底に沈み、気泡の粒をブクブク昇らせはじめた。

 ややあってからオルファは、のしのし近寄って首っ玉をひっつかんだ。湯からザバリと上げてやれば、少女は目をパチクリと覚まし、頭を子犬のように振って水気を散らす。

「あれ? ここはいったい……」

 自分が先ほどまで誰を相手に何をやっていたのか忘れてしまったかのごとく、あたりをうかがっていたが、じきにここは我が家の風呂場であることに気付く。

「あっ!」

「今しがた終わったぞエトラよ。どうだ。男のいきり立ったマラを初めて股間に咥えこんだ感想は」

「あっ、あっ」

 堂々と股を張った立ち方のオルファに、お姫様だっこされているエトラはハッと目を見開く。

 事の次第を思い出した少女の顔色が、みるみる赤くなったり青くなったり黄色くなったりした。

 そんな変化に富んだ顔色を見下ろすオルファは、口の端だけでニヤリと笑む。

「よし。無事に処女を喪失できためでたさを祝して、もう一発交わろうではないか。エトラ。そこのつい立てに両手をつけてこっちに尻を向けるのだ」

「ええええええ!」

 少女は抱き上げられたまま叫びつつ、赤子のように身を丸めて硬くなり、ぶるぶる震えはじめた。

「無理、無理……」

「ハハハ、冗談だ。お前は最後に失神したが、それまではよく頑張った。今日はもう自室に入って休め」

 オルファは脱衣所まで運んでやり、疲れてぺたんこ座りになった彼女のつむりにタオルをかけてやった。

「だいぶお疲れのようだな」

「一生ぶんの痛みが、いちどきにやってきたみたいでした……」

 そうつぶやくエトラは、「でも」と付け加え、

「気を失うちょっと前に、痛みがやわらいで、温かいようなくすぐったいような感じがしたんです」

 少女は回想するような顔で、とつとつと話を続ける。

「いつも一人でシテる時とは違う、心地のいい感触が、腰の奥からキュンとやってきました」

「それでどうなった」

「頭の中に白い光が浮かんで、それを精一杯追いかけたんですけど、無理でした」

「ふむ。その感触をよく覚えておくんだな。これからのち二度三度と経験を重ねていくうちに、どんどんその光は大きくなっていき、やがては爆ぜることだろう。それこそがまさに女に生まれてきたことの最大級の悦びだ」

 そばでドシリとあぐらをかいたオルファは、表情をキリリと引き締めてそう語る。

 エトラはまだよく分かっていない顔つきをしていた。

 しかし一応はぎこちなくうなずき、そして自身の処女を与えた男にそっと身を寄せて、静かに泣いたのであった。


 翌日。ベッドでゆっくりと眠った四人は、食事をするためテーブルに集まった。

 あったかいコーンスープを朝食に、昨夜の風呂場での秘め事について語られることはなかったが、事情を知っている両親は終始ほくほく顔であった。

 そしてオルファは一日世話になった礼を厚く伝え、リュックと愛剣とともに家を出て、見送りについて来たエトラと歩きだした。 

 やがて前日出会った橋まで辿りつき、オルファはここでお別れだと告げた際、少女に向けてこんな言葉を発した。

「おいエトラ。お前はセクシーブサイクを目指せ」

「えっ?」

 突然なんのことだと、少女は小首をキョトンとかしげる。

「時々いるだろう。顔かたちは悪いが妙に男にもてる女が。あれはブサイクだが、セクシーさを持ち合わせているから男の目に魅力的に映るのだ」

 欄干のそばで語るオルファに、エトラはやっぱり腑に落ちない顔で彼を見上げる。

「セクシーさ? あの、それってどうやればなれるの?」

「それはオレにも分からん。兎にも角にもマンコを使え。若いメスのマンコを我が武器として男に立ち向かうのだ。そして性の技を磨きに磨いて男をとりこにし、チンポをイカせまくる手練手管の女になれ。そうすればおのずとセクシーなオーラをまとうことができるだろう」

 足を張って自信満々のオルファは、さらに言葉を続けた。

「自分の気に入った男を発見したら、部屋に連れ込んですぐにズボンと下着をずり下ろせ。そして真ん中のやつをパクリと含んで吸い付くのだ。たいていの男はこの方法で落ちる」

「私、そんな方法はイヤ。それって身体を安売りして、誰とでもエッチする女になれって言ってるだけじゃぁ」

 エトラはすねたように欄干にもたれ、足元の小石を蹴った。

 だがそんな彼女にオルファはリュックを捨てて、恫喝を与える。

「黙れ口答えするな。オレがそうだと言ったらそうなんだ。犬も食わんクソ文句を並べてうだうだうるさく抵抗するなら、今この剣でお前の身体を真っ二つにかっさばくぞ!」

「ひいい!」

「ごちゃごちゃ言わずにオレに従え。お前は今日から男とヤリまくる淫乱女になるんだ。自ら進んで死んじまうよりかよっぽどマシだ。お陀仏するよりもまだ男のチンポを年がら年中くわえ込んで、マンコの乾く間もなくズッコンバッコンやってよがりまくるほうが、女の人生を立派に邁進していると言えるのだ」

 唐突な脅しにエトラはおののき、両手を使って我が身をかばう。

 正面に立つオルファは構わず、剣の柄をぐっと握った。

「いいか。一年経ったらオレは再びお前の家に訪れる。そしてお前と再会する。それまでに一千人だ。男と一千人やれ。このノルマを達成できなければ、オレはお前のそのブサイクな顔面に剣を突き立てて捻って、その隙間に小便を流し込んでやるからな! どうだ。守れるか。オレとの約束が」

 オルファは剣を抜き放ち、切っ先をその鼻先へ突きつけた。

 困った顔でしばし悩んでいた少女は、指をいじくるのをやめて、ぽつりとこぼす。

「私、ゆうべ一人で部屋にいる時、決めたことがあるの」

「何をだ。お前は何を決めたのだ」

「私、オルファさん一人がいい……」

「それはどういう意味だ」

 剣の先がさらに近づき、今にも鼻に当たりそうな距離になった。

 だがそんな脅しにエトラは屈せず、姿勢を正して目に力を入れた。

「もう自分から、死ぬようなことはやらない」

「ほう。それがお前の決めたことか。しかし法螺を吹くなら、この剣がお前の赤い血を吸うことになるぞ」

「剣で斬られても決意は曲げない。私、絶対に死なない!」

 エトラは相手の目をまっすぐに見て、きっぱりと言い切った。

「ではその凛々しい言葉、自身の胸に深く刻むと誓えるか」

「はい!」

「その主張に嘘偽りはないな」

「はい。一年後、再び会いにきてくれるなら、私、オルファさんに叱られないような魅力的な女になる!」

 彼女の意志を耳にしたオルファは納得して、剣を下ろしたあと、力強くうなずいてやる。

「よくぞ明言した。お前の毅然たる勇姿、しかと胸に受けとめたぞ」

 エトラは微笑みで応えた。それから少し恥らう感じに変わり、

「もしも再会して、オルファさんの目を惹くような女になれていたら、その時は、また……私を抱いてね」

 顔を朱に染めてにっこりと笑ったあと、まぶたのふちに溜まった涙が、ほっぺから滑り落ちた。

「私みたいな女に、一生懸命になってくれてありがとう」

「礼などいらんぞ。言葉よりも行動をもって示すのが、何よりの感謝のしるしとなる」

「オルファさんは荒っぽいけど、今までこんなふうに相手をしてくれた人、初めて」

 そう告げて涙をふいた少女の立ち姿は、昨日よりも成長して見えた。

「なんだか前よりも、自分に自信が持てた気がするの。昨日の夜、あんな大変な経験をしたから、たいていのことは平気に思えてきた」

「うむ。心の美しさは姿かたちに反映されるものだ。今日のお前は何かを吹っ切れた感じに見える。一年後、身も心もさらに美しい別嬪になっていたならば、再び夜を共にしようではないか」

 オルファは肩にリュックをかけて、やおら背を向けた。

「じゃあな。達者で暮せよ。つらいことがあった時は、昨夜のことを回想するんだぞ」

「うん、わかった。また絶対に会いに来てね」

「もちろんだ。約束は必ず守る」 

 片手を突き上げて宣言したオルファは、晴れた空の続く道の先をめざし、どんどん進んでいく。

 そんな去っていく男の背中に向けて、エトラは小さく手を振っていた……。


 それからいくらか経ったあと、一本道をぐんぐん歩いていたオルファは、ふいに妙な音を耳にする。

 はるか後ろのほうで、バシャンと何かが水を打つ音を聞いたような気がしたのだ……。

「なんだ? 今のは」

 立ち止まってふり返り、じっと耳をすました。

 聞こえてくるのは、森にいる野鳥の声と、さらさらと吹く風の音だけ。

 なんとなく体温が下がった気がして、一度鼻をスンとすすった。

「…………気のせいか」

 独りごちて、風に流された前髪をかき上げる。

「ふむ」

 空耳だと判断したオルファは、身体を向きなおし、再び道の先へと歩きだした。

 

 その頃、橋の上では……。

 欄干に荷車をつけて、ほっかむりの中年男が肉を次々と捨て始めた。

「どーんときたもんだ。これ。おー」

「まだまだいっぱいあるべ。まったく商売あがったりだー」

 まずは重くて大きい頭部を川面に投げ終わり、調子にのって残り全部を片付けようとする。

「こんな売れないもん、いらんからどんどん捨てちまうべー」

「んだんだ。魚のエサにしちまうだ」

「ほーれ、魚いんならたっぷり食えよー」

 橋の上から水音をバシャバシャ立てて、楽しく踊るように落としていく。

(……いったい、なにをやってるのかしら)

 おっさん達のやることを、うしろから不審な目で見ていたエトラ。

 あまりじろじろ見るとこっちに意識が向きそうなので、彼女は「まっ、いいか」と割り切って、きびすを返した。

 そして、帰って学校へ行く準備をしなければと、鼻歌をまじえつつ、軽い足どりで家路を進んでいくのであった。


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オルファの冒険 ろねっきー @bokka

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