オルファの冒険

ろねっきー

第1話 剣士プリリーナとの出会い


 少女の悲鳴を聞きつけ、森を駆け抜けてきた十七歳の少年オルファニーノ・サブロッテ(略してオルファ)は、肩にかけていたサンドバッグのような大柄リュックを地にドサリと落とし、今まさに少女の柔肉を八つ裂きにしようと振り下ろされる寸前だった大斧の動きを止めた。

 前掛けエプロンのついた白いワンピースを土で汚し、力抜けてなすがままの状態で涙ながらに座り込んでいた三つ編みの少女を取り囲むイノシシタイプのモンスターの数は八体。

 そのなかの一体は特に巨体で、筋骨隆々の体躯を包む獣皮の服ははちきれんばかりであった。おそらくその者が集団の長であろう。

「誰だ貴様は!」

 狩りの邪魔をされたせいで、あからさまに不機嫌な面持ちを醜悪にゆがめてオルファに威嚇じみた怒声を飛ばす。

 周りの部下たちの意識も、うなだれる少女からオルファへと移っていた。

「親分、こやつ人間ですぜ。ついでにやっちまいましょう」

「そうだそうだ。夕餉のなべの食材に丁度いい。オレは女よりも男の硬い肉のほうが好みなんだ」

「骨格はオレのもんだ。湯がいて骨に残った肉をこそぎ落として洗って綺麗に磨くんだ。フフフ。また部屋の飾りが豊かになる」

 それぞれが興奮のあまり口から濃厚なよだれを垂れ流し、鼻から荒い息をフゴフゴ吐いて、オルファを襲撃するためのボスからの許可を今か今かと待ち望んでいる。

 各自手にしていた年季の入った大斧の刃に、いびつな光がぬらりと走った。

 だがオルファはおめず臆せず巨大な数多の敵を相手に斜に構え、腰に据えた剣(これは旅立つ際に剣術を教えてくれた師から平に平にと大切に押し頂いた名剣である)の柄に、右手をゆっくりとあてる。

「察するにお前たちは今からその無抵抗な少女の命を奪おうとしているわけだな」

 オルファの落ち着いた問いかけに、ボスがずしりと一歩前に出た。

「それ以外にどんな選択肢がある? もしかしてこれからオレと女が手と手を取りあって軽快な曲に合わせて面白おかしくダンスを踊るように見えたのか?」

 叩いた軽口に、他の敵どもは下品な声をたててゲラゲラと笑いあげた。

 オルファは言葉では答えず、代わりに鞘から抜いた両刃の剣を堂々たる姿勢で相手に向ける。

 漆黒の前髪から角の立つ鋭い双眸でボスを見据え、剣尖を向けたまま口を開いた。

「悲しみにくれ地に涙を落とし疲弊しているその少女を今すぐに解放しろ」

「なに?」

「解放しろと申しておるのだ。さすればお前とお前の小汚く臭そうな手下どもの命は保証しよう」

「そういうバカな言い分が通るとでも思っているのか?」

「飲み込みの悪い輩だな。どうやらご立派なのは酒樽のような腹を持った図体のでかさだけのようだ」

 オルファの高圧的な口調に、ボスは一瞬呆れ顔を見せて、再び憤りを表情にのせた。

 続いて口端からはみ出ている太くて黄ばんだ牙が、ギリリと音を立てる。

「フン。飛んで火にいる夏の虫、とはまさに貴様のような稚拙なガキにうってつけの言葉だ。ことわざに則り、生意気な口を叩いた人間風情の貴様の肉を今からミンチにしてやる」

「上等だ。いつでも好きなタイミングで打ってこい。身の程知らずはどちらであるか愚鈍なおまえに思い知らせてやろう」

「抜かせガキめ。途中で赤子のように泣き散らし命乞いを始めても取り返しはつかんからな」

 言うや否や部下のほうへ横目を走らせたボスは、武骨で頑丈そうなアゴをしゃくって合図を送る。

 瞬間、待ってましたとばかりに部下たちが嬉々とした表情をみせて、大斧を振りかぶって一斉に踊りかかった。

 しかしこれに動じることなく、怜悧な目で受けてたつオルファは、馴れた身のこなしで間合いをとる。

「そこな女の子、終わるまで目を閉じて両耳を手でふさいでおけ」 

 言われた少女はあたふた狼狽しつつも、指示通りに素直に目を閉じて、手のひらを耳に押しあてて下を向く。

 納得したオルファは一度うなずき、師から受け継いだ流派の剣術を舞うようにして敵どもに披露してみせた。

 上空でさんさんと光を注ぐ太陽が数度進む間もなく、さっきまで活発だった七つの生命は、阿鼻叫喚とともにあっけなくこの世から去ることになった。

 オルファの機敏で華麗なる動きになすすべもなく、彼の身体に切り傷一つつけることすら適わなかった哀れなモンスターたち。

 先ほどとは打って変わって動揺し、おびえの色を浮かべるボスの近くには血塗れた肉塊が無数、敗者なる形となって汚らしく異臭を放って転がっていた。

 一仕事終えたオルファは息を乱すことなく剣を一振りし、剣身に付着した肉片や血液を地に叩きつける。

「どうした。次はお前の番だぞ」

 呆気にとられていたボスは、はたと気づいたようにして大斧を握りなおし、オルファを睨み付けた。

「ちっ」

「まだ続けるのか? お前さんの命令で都合よく動く下賎な獣臭い生き物どもは、すでに自発呼吸をしていないようだが」

 ボスがひるんだところに、オルファはさらなる罵倒を浴びせかけた。

「赤子のように泣き散らし命乞いを始めるなら許しを与えてやってもよいぞ」

「貴様はいったい……」

 オルファはすでに戦意喪失していると見てとった敵に対して剣を降ろし、だが目線はそのままにして話しかけた。

「再度問おう。今すぐその少女を解放しこちらに向かうよう促せ。もしくはお前が背中を見せて、黙ってすごすごこの場から立ち去るのでも構わん」

「くそ。ここまで剣術に長けたよそ者は初めてだ。貴様いったいどこの土地から来た?」

「問いかけているのはこちらのほうだ。反問など許さない。その脳細胞の数が少なそうな知性の欠片もない頭をフルに使って早急に答えを導き出せ。のろのろしているとそこでクロバエがたかり始めているお前の元部下のように、肉屋でグラムいくらにもならない値段のつかん無価値なゴミ肉に変えてやるぞ」

 無様に散見される屍体に集まってきたのはハエだけではなかった。

 森の暗がりには、すでに血の匂いを嗅ぎつけた肉食動物たちが、空腹を満たそうと雁首並べて目を怪しく光らせ様子をうかがっている。

「わかった。貴様の勝ちにしてやる。この女をどこへでも連れて行け」

「賢明なる判断だ。お前のようなタイプは虚勢を張り、やがて自棄糞を起こして反撃すると予測していたが、案外自己を護るだけの知能は一丁前にあるようだ」

「今のうちにほざいていろ。よそ者が暴れてこのままで済むと思うなよ」

「お前にぴったりな雑魚らしいありきたりなセリフだ。逃げ帰った巣に親玉がいるなら報告しておけ。部下たちが見知らぬ旅人に遊んでもらい久遠の旅路に昇ったとな」

「減らず口を叩けるのも今だけだ。次は貴様が血祭りになる番。腹を括っておくんだな」

 ボスはそう言い残すと、不服な面持ちで大斧を背負い、小走りにどしどしと地響きを立てて道の先へと消えて行った。


「たいしたおもてなしはできませんが、中へどうぞ……」

 道中、自己紹介をかねて少女と会話をしいしい隣り合って歩いた。

 そして素朴な少女の案内でオルファは戸口をくぐり、丸木作りの民家へと入る。

「ここがきみの住まいか。いつも一人で暮らしているのか」

「はい。父と母は所用のために不在で、あと姉が一人いたのですが……」

「どうした?」

「いえ……」

 長い茶色の髪をおさげにした少女テルシーは、まつ毛を伏せて悲しそうな目を床に落とした。あまり追求すると泣きだしそうな雰囲気を察したオルファは、事情をおもんぱかって、これ以上家族に関する質問は控えることにした。

 この旅のなかで世にはびこるモンスターどもの手によって、家族の命を奪われた者を何人も見てきた。

 おそらくこの少女の姉もその悪影響を受けて、もうこの世には存在しないのだろう。

 オルファは勧められた椅子に腰を掛けて、リュックを下ろし、室内を見回してそう見当づけた。

 壁には絵がかけられ、少女をふくむ仲のよさそうな四人の家族が皆、寄り添い幸福な表情をこちらに向けている。

 互いに無言でしんみりとした空気になっていたが、少女がそれを変えるように微笑を作り、きびすを返した。

「お食事のご用意をいたしますので、そこの席で少しお待ちいただけますか」

「うむ、ちょうど腹が減っていたので有難いところだ。しかしいいのかテルシー、こんな見ず知らずの旅人が家の中にじゃまをして」

「はい。それはもちろん構いません。あの……できれば今晩このうちに泊まっていただければ……」

 十字の格子窓のむこうには、オレンジ色の太陽が遠くの山稜に隠れようとしている。

「どうも心細いのです……。先ほどあんな目に遭ってしまい、私はもう少しであの者たちに命を奪われるところでした」

「危機一髪だったな。しかしもう大丈夫だ。この地域一帯に城壁などはないが、先ほどいた村の護衛たちがキミや他の住民を守ってくれるだろう」

「いえ、できれば今夜はオルファ様に守っていただきたいのです。それにあなたは私の命の恩人ですから、おもてなしをしてご恩をお返ししないと……」

 椅子に腰かけたオルファの前に立つ少女は、胸の前で指を組んで懇願するような表情で彼を見つめ続けた。

 モンスターに襲われた恐怖の余韻がまだ残っているらしく、肩や指が小さく震えている。このまま食事だけをいただいて家を出るのはかえってこの子がかわいそうだ。

 オルファはそう考え、彼女を見返しながら凛々しくうなずいた。

「うむ。では一泊させていただこう。いや、ここ最近野宿ばかりでな、たまには建物の下でゆっくりと眠りにつきたいと思っていたのだ」

 承諾の意を示すと、不安そうだった少女の顔に明るい色がぱっと輝く。

「ありがとうございます。ではお食事を作ってまいりますので……、あっ、ベッドのご用意もしないと。父が使っていたベッドですが構いませんか?」

 オルファは問題ないというふうに微笑んでうなずく。

 少女は台所のほうへ忙しく駆けていく際、足をもつらせて床に手をつき音をたてて転んだ。

「きゃ!」

「おい、大丈夫か?」

「あいててて……。すみません、お見苦しいところをお見せして」

「ハハハ、そんなに慌てなくてもよいぞ。食事や寝床よりもキミのことが大事だからな。ゆっくりと準備をして構わない」

 それから少女の手製の温かい野菜スープを美味しくいただき、デザートの果物をたくさん食べ、腹が充分に満たされたオルファであった。

 テーブルに向かい合って食事をする少女は慎ましいながらも、会話を重ねるうちにオルファと打ち解けていき、気落ちしていた雰囲気はましになってきた。

 談笑も交え夜がふけていく頃、二人は就寝の挨拶をしてから別々の部屋へと移動した。


 オルファはベッドに仰向けになって天井を眺めていた。天窓からの月明かりと、机に置かれたランプの燈火が室内をうっすらと照らす。

 身体の力を抜いてリラックスしたまま天井をじっと見つめていると、テルシーの姿が浮かんできた。

(なかなかいい子だったな。食事は美味かったし絶世の美女ではないが、おとなしいながらも愛嬌はある)

 明日の朝、このまま別れてしまうのは名残惜しくなってきた。少女が親きょうだいと離れてこの家に一人で暮らすのは物寂しいであろう。

 しかし長居は無用だ。

 情に流されて一所に留まるわけにはいかない。

 所詮自分は旅の者。いつまでも同じ土地で世話になるわけにはいかない。それに達しなければならない目的だってある……。

 そんなことを頭に巡らせているうち、だんだん眠気がやってきた。 

 そろそろ寝ようかと瞼をそっと閉じたとき、ドアの向こうに人の気配を感じた。

 横になったままドアのほうへ首を動かしたオルファは、一声かけてみる。

「テルシーか」

「はい……。あの、入っても」

「ここはキミの住まいだからな。好きにするといい」

 てらいなく応じると、戸惑うような様子を感じたのち、ノブがゆっくりと回された。

 白い寝間着姿のテルシーが遠慮がちに半身をのぞかせる。三つ編みを解いたウェーブヘアの彼女の頬は薄く染まっていた。

「お休みのところ申し訳ありません」

「ハハ、繰り返すようだがここはキミの家だ。ただの一見の客人であるオレに遠慮会釈など無用」

 就寝の邪魔をして冷たく追い返されることを恐れていたらしく、少女は彼の温かい言葉に対し、安堵の色を浮かべた。

「昼間の出来事が頭に残っていて、眠れそうにないんです……」

「よほど恐ろしかったようだ。まあ死の一歩手前を体験すればしばらく記憶に残ってしまうだろう」

 少女は所在なさそうに立ちおどみ、しかしベッドの上で仰向けになっているオルファのほうをじっと見つめている。

 腰のうしろには隠すようにして枕があるのが見えた。どうしようかとモジモジしている少女をみかねたオルファは、身体を少し横にずらしてスペースを開ける。

「なんなら今晩、キミと添い寝してもいいぞ。二人で眠れば安心だろう」

 シーツを上げて誘うと、途端にテルシーの顔面に赤みが走る。

 照れくさそうに下を向いていたが、ややあってから決意めいた感じに面を上げた。

「で、では今夜だけ、お言葉に甘えて、よ、よ、よろしくお願いいたします……」

 と、枕を胸に包み、ペコリとひとつ身体を折った。


 それからしばらく経ったころ、薄暗い部屋にある観葉植物の葉が小刻みに揺れはじめた。

 ベッドの上では灯りを反射した汗ばむ裸体が二つ、重なったままうごめき、ベッドをミシミシと振動させている。

「ああ! そんなにされたら……オルファ様!」

 両目を淫靡に緩ませたテルシーの恍惚とした顔が、イヤイヤをするように左右に振られた。

 上からおいかぶさり、構わず腰を打ちつけまくるオルファは、彼女の顔を両手でとらえ唇を激しくむさぼる。

 その行為を受け入れたテルシーは、オルファに負けず劣らずの動物的な舌使いで身体をくねらせ、ねちゃねちゃと卑猥な音をたてた。 

 ほどなくして互いに呼吸が苦しくなり、水中から上がったようにして唇を離す。瞬間、濃い唾液の糸を引き、解放されたテルシーの口内から嬌声が吐き出された。

「もうダメ! こんなに激しく突かれたら私、私、頭がおかしくなっちゃう!」

 すでに分かったことだが彼女は処女ではなかった。

 挿入した際、オルファの屹立した竿をぬるりと包み込むようにして、すんなりと膣内に受け入れたのだ。

 同時に少女の喉からしぼりだすような快感の声が放たれた。

(大人しそうな子だったのに、案外やるコトはやってるんだな)

 オルファはあえぐ少女の上で蠕動しながら、挿入前に一度彼女の口に精を放ったことを思い出す。

 それはまるで手練の娼婦に勝るとも劣らない舌技であった。

 先ほどドアの入り口で二の足を踏んでいたテルシーをベッドに招き寄せ、それから二人で天井を見上げながら雑談に興じていたところ、ふいに寝間着のボタンを外して胸の谷間を見せたテルシーが、恥ずかしそうにおいかぶさってきた。

 Bカップほどの二つのふくらみを胸に押し付けられ、そして頬に軽くキスをされた。

 オルファは悪い気はしなかったため、やや見詰め合ったあと、今度は自分のほうから彼女の頬に礼を返した。

 あとは順番に着ている物をはいでいき、オルファの硬直した竿があらわになるや、テルシーの喉から唾液を飲む音が聞こえたかと思うと、彼女は身を起こし、そして口を開けてほお張った。

 むしゃぶりつく強い吸引力に、オルファは思わず腰を持ち上げてうめき声をあげてしまう。

 波のように繰り返し、どんどん強さを増して押し迫ってくる熱い快感。

 竿の付け根を唾液で濡れた両手で支えたテルシーの夢中なる奉仕に、オルファは数日間溜め込んでいた濃い精を、舌の暴れる口内、いやさらに奥の喉めがけ勢いよく打ち放った。

 鈴口からどんどん出される精を、彼女はゴクゴクと苦しそうに、しかし嬉しそうに喉を波打たせてすべてを飲みほした。

 やがて竿を口からジュポっと音をたてて抜き、唇からこぼれた精を手の甲でぬぐう満足そうな彼女の表情は、もう大人の女そのものであった。

 そして今まさに、二度目の頂点が迫ってこようとしている。

「どうだテルシー。オレとのセックスは気持ちがいいか」

「はい。私こんなにすごいの初めて。最高ですオルファ様。このままだと頭がどうにかなっちゃいそう!」

 ベッドの上で股をM字に開き、小ぶりな乳房を揺らせてよがり狂うテルシーは限界が近づいているらしく、まぶたのふちに小さな涙の玉を溜め、熱い吐息をオルファの顔に浴びせかけていた。

「オレも最高だ。お前のアソコの締め付け具合はたまらんぞ。また子種を出してしまいそうだ。お前はオレの肉竿の感触でいったい何回イッたんだ」

「わかんない。数える余裕なんてないの。それくらい何度も何度も……。ああ! また凄いのがきちゃう!」

「いけ。いけ。いけ。オレの股間の摩擦で何度も天国にいけ」

「あぁ、見えるの! 真っ白な扉がもうすぐそこまで来てるの。助けてオルファ様。このままだと今まで知らない高みに連れて行かれちゃう」

「構わん! いけ。いけ。いけ。いけ。お前の望む素晴らしい楽園はもう目の前だ。流れに身を委ねろ。そしてそのまま意識を飛ばしちまえ!」

「ダメ! 一人はイヤ! いっしょに、いっしょに! いっしょにイキたいのオルファ様。いえ、殺して! もういっそ私を殺して! オルファ様の手で私の命を無慈悲に奪ってえええ」

 火照った懇願の目を向けるテルシーの両手が、オルファの首に回されたあと、ぐっと引き寄せられる。

 テルシーの全身がビクンビクンと波打つような痙攣を始めた。口をいっぱいに開けて両方からヨダレを垂らし、ほぼ白目を剥いている状態。きっと今まさに真っ白な天国の世界に昇って、身体じゅうが性器になったかのごとく穴という穴から悦楽の汁を飛ばしていることだろう。

 オルファは彼女にさらなる多幸感を与えるため、より速度をアップして過激に腰を振って振って振って振って振りまくった。

 バチバチバチバチと濡れた肉の音を響かせて、汗にまみれた下半身と下半身が派手にぶつかり合う。敷かれているシーツはもうテルシーの真っ赤に火照った性器から飛び散る愛液によって、放尿したかのようにぐっしょりである。

 室内は互いの体液や素肌から出た熱気のせいで、鼻を突くほど甘くいやらしい匂いが充満していた。

 二人の激しい情交をのせて軋みまくるベッドは四本の脚のみならず、骨組み自体が今にも瓦解してしまいそうである。

「テルシーよ。お前がこんなに淫らでヨガりまくる女だとは思わなかったぞ。昼間の大人しいお前はどこへ行った? うららかな日差しの降り注ぐ青空の下で、花や草や野鳥を愛でるのを好むような純情そうなお前はいったいどこへ消えてしまったんだ。こんなに股ぐらを力いっぱいに開いて、股間を愛液でギトギトに濡らしてメスの野獣のようにあえいで、まるで別人じゃないか!」

「やめて! そんなこと言わないで! 私ほんとうは恥ずかしいの。こんなに汚らわしく乱れている姿、誰にだって見られたくないの。だけどオルファ様の大きいアソコが悪いの。私を狂わせてるのはオルファ様の大きくて硬くてカリ首の立派なアソコのせいなのぉ!」

「いいぞテルシー。もっとお前の本性をオレに見せてみろ。夜のベッドの上のお前は昼間の貞淑な少女ではなく、男と交わるのが大好きなドスケベな淫乱女であることをオレの目に思いっきり晒すんだ!」

 まだ成熟していない少女の軟な性器などブチ壊してしまえと言わんばかりの、容赦なく猛り狂う闘牛のような攻め具合であった。

 若雌の膣内で愛液に浸され、鋼鉄よろしく硬く勃起したオルファのそれの先から、もうあと数秒もしないうちに五億は超えるであろう子種が、レーザービームのごとく打ち放たれ、のちに彼女の顔や腹や乳房の上で死に至るダンスを踊ることだろう。

「いくぞ! テルシー! オレのマグマのように滾った熱い精をその身体で思いっきり受け止めろ。いくぞ! いくぞ!」

「出して! いっぱい出してええ! 私のスケベなアソコの中に、オルファ様の遺伝子を全部出しきってええ」

「いいのか。本当に中に出すぞ。もしかすると子供ができるかもしれないぞ。オレはただの通りすがりの旅人だ。身重になったお前の責任はとれんがそれでもいいのか!」

「いい。いいの。来てえ! 私オルファ様の子供を身ごもって一人でかんばって育てる! 欲しいの、オルファ様の遺伝を受け継いだ子供が欲しいの! 産む、絶対に産むわ。オルファ様の射精に合わせて私絶対に排卵して妊娠する! だから私の卵子にオルファ様の精子を受精させて!」

 性の快感の涙を両目いっぱいにためて、必死な表情で懇願してくるテルシー。

 果たして本当にこのまま少女の濡れた若膣の中に発射するべきか。それとも名残惜しくもズッポリと引き抜いて、少女の汗ばむ瑞々しい白い肌をびとびとに汚しまくってやろうか。

 オルファの脳裏はサディスティックな興奮で燃えに燃え滾っていた。

 ところが、だ!

 判断を決めかねていた最中、部屋のドアがけたたましい音をたてて蹴破られた。

 同時に殺気に満ちた双眸のモンスターどもが、我先に押し合いへし合いなだれ込んでくる。

 オルファはテルシーの肉体にかぶりつくような感じで無我夢中になっていたが、脳に走った危機感のスイッチにより、発射寸前であった濡れそぼる雄茎をぬるりと引き抜き、続いて手近に立ててあった愛剣の柄をとって素早く鞘から引き抜く。

 一度バランスを崩してよろけるも、敵の奇襲を受けてたつと言わんばかりに剣を正眼に構え、ついでにまだ膣の感触残る自身の竿を敵に向かって同じ角度で立派に反らせていた。

 日中、野で一戦を交えたイノシシ型のモンスターどもであることは火を見るより明らか。

 そこへ村の護衛をしていた兵二名が、槍を使って窓ガラスをぶち破って乗り越え乱入してきた。

 オルファは構えた剣先をそちらに向けた刹那、自身の頭頂部にズドンと強烈な衝撃を受けた。

 即時脳震盪を起こし、剣を持つ握力のみならず全身の力が抜けてしまい、床板にひざをついてバタリと倒れ込む。

(しまった。油断していた)

 仰向けのまま、虚ろな目で相手を見上げ、手を伸ばした先には、

「テ、テルシー」

 その名の少女が棍棒を両手に握って、さらなる追撃を加えようと振りかぶっている。

「残念だろうけど覚悟してね、オルファ様。ここでアナタの旅路は終わり」

「お前もやつらの仲間だったのか」

「そうよ。こんなにあっさり引っかかるなんて思わなかったわ」

 汗ばむ全裸で太ももの内側を愛液の残滓で濡らしたテルシーが、小悪魔っぽくウインクして舌をのぞかせた。

「き、貴様……」

「だけどオルファ様。あなたとのセックスはすごく良かったわ。たぶん一生忘れない。ほら、まだこんなに余韻が残ってる」

 少女は体力を使いきっているのが原因なのか、立っているのがつらいらしく、追撃するのはやめて後退し、背中を壁にあずけた。

 あとで自身の指を使って慰めるつもりだろうか。棍棒を捨てた手がそろそろと下腹部から性器のほうを撫ぜていく。

 ……どうやら村ぐるみの賊であったらしい。

 しかし今さら気付いても後の祭り。

 久々に人から受けた優しさ、肌のぬくもりに誘惑され、見知らぬ女の好意になど甘えるのではなかったという後悔の念とともに、この場にて一人の剣士の命が尽きようとしていた。

 薄れていく意識の中で彼が見たものは、蹴られた天窓から降り注ぐガラスの破片。

 三度目の突入。新たなる敵の襲撃かと思い、仰向けに横たわるグロッキー状態だったオルファはそれを呆然と見つめていたが、そう、見つめていたのだが、

「そこまでよ!」

 華麗な姿で着地したと同時に、差し止めの一喝が室内に響いた。

 次いで光沢を帯びてフレア状に広がっていた長い金色の髪が、ふわりと少女自身の肩や背中に閉じていく。

 年齢は定かではないがおそらくオルファと同じ十代半ば過ぎ。飛び込んできた少女の身体は筋骨たくましく、さながら女格闘家のようである。

 筋肉トレーニングを怠らないであろう立派な手脚がほどよい脂肪に包まれている。

 握っているのはオルファのものと同じ長さの両刃の剣。生地の厚そうなミニスカートタイプの装束には、Hカップはありそうな豊満な乳房がはちきれんばかりに実り、その下には角度の鋭いハイレグのスーツが見え、腰まわりのむっちりしたボリュームのある太ももには茶色のストッキングが張り付き、足には膝丈のブーツを履いていた。

 上背のあるごつい女。ただし顔は体格に似合わずキュートな面持ちで、切れ長の瞳とシャープな唇をした端正なつくりである。

 そして敵か味方か正体がつきかねるまま、オルファのまぶたは力なく閉じられ、意識が遠のいていくのであった……。


 どのくらい時間が経過したのか。オルファは意識が混濁する状態でうっすらと目を開けた。

 ここはいったいどこなのか……。枕にのった頭を右に左に動かしてみれば、どうやらここは宿屋の一室のようである。

 シーツをかけられたベッドの上。暖炉には火が焚かれ室内はほどよく暖かい。

「目を覚ましたようね」

 近寄ってきた少女が腰に片手をあてて、凛々しくこちらを見下ろす。

「あれから三時間ほど経ったわ。今はまだ夜中。明け方まで時間はあるからもう少し眠ったら?」

「キミはさっきの……」 

 オルファはやおら身体を起こした。

「キミがオレを助けてくれたのか」

「ええ、部屋に残したままだと鑑識の迷惑になるから、アナタを背負ってここまで運んできたの」

 全裸であった身体にはすでに下着がつけられ、他の衣服は棚の上に丁寧に折りたたまれ、リュックや愛剣はそばに立てかけてあった。

「恩に着ろう。あの状況で助けが来なければ、今頃オレは賊どもの手によってなぶり殺しの目に遭っていただろう」

「正確に言うならば、助けるのが主目的ってわけではなかったのよ」

 どういうことか、と問いかけてみた。今しがた彼女が口にした鑑識という言葉も気にかかる。

 話を聞くと、オルファを襲った連中は、ここらの村や町を襲う手配中の名だたる強盗団であったらしい。さきほどの村は奴らに襲われ、先に住んでいた村人は惨たらしく全滅した。

 そして旅人を誘い込んで身包みを剥がしたり、爵位のある貴族など高貴な家柄の人物なら人質にとって、身代金を要求するための拠点として悪用していたとのこと。

 説明を終えた少女は、ベッドの端に腰をゆっくりと下ろした。肉付きのいい大きな尻が生地を沈めてのっかる。

「アナタが連中の意識を引きつけていたおかげで、主犯のテルシー・ローズバッドメーカ、一名を除いて、他の全員は捕縛することができたわ」

「いや、オレはあえてそういう囮の役目を買って出たわけではないのだが。成り行きというか何というか」

「すごくハードな濡れ場だったわね。突入の合図が下りるまで天窓から観賞させてもらっていたけど、アナタいつもあんな調子でセックスをしているの?」

 いたずらっぽい顔を上から近づけられたオルファは、照れ隠しに頬をかいて視線を横にそらす。

 少女はそんな彼をまじまじ見つめてから、顔を離してフランクに微笑した。

「紹介が遅れたわね。私はこの近辺一帯を管轄する警備官の剣士、プリリーナ・ポルトアイランド。私を知ってるみんなは愛称でプリンと呼ぶわ」

「オレはオルファニーノ・サブロッテだ。呼ぶときはオルファでいい」

 自己紹介のあと、二人は手を出しあい、お近づきのあいさつとして固く握手を交わしたのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る