表現はすごいと思う。でも納得できない気持ちになる。俺が性善説を信じてるのと、どこかで否定の気持ちが起こってくるからじゃないか。サイコパスは現実に存在するけれど、どこかで信じたい。家族ならなおさら、気づかないわけがない、と。
嵐の風雨と厚く覆った雨雲、焚かれるフラッシュは警察の証拠押収とマスコミの取材。人々が嵐のように家主である両親を責め立てる。災害に耐える両親、最後の一文に突きつけられる真実。しかしその真実は台風の目でしかなく、その先の物語を想像すれば、嵐は否応なく力を増すだろう。両親を襲う真実は、あまりに理不尽で、有無を言わさぬ力を持っているのだ……。
突然警察から息子さんに殺人事件の話を聞きたいと言われたら、その両親はどうするだろうか。がひたすらにリアルに描かれている。息子に限ってそんなはずはと思う一方で、自分たちが思っているほど息子のことを知っているわけではないと思い知る。じわりじわりと膨らんでいく疑念がよかった。ラストの衝撃といったらない。両親はきっと、悲しみと怒りと後悔と安堵を混ぜ合わせたような気持ちになっただろう。
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