4:メキシコ民話「哀しきジョローナ」とイメルダ
「リメンバー・ミー」を深く読み解くうえで押さえておきたいのが、今作で唯一既存の楽曲を使用した「哀しきジョローナ」。
フリーダ・カーロの伝記映画「フリーダ」でChavela Vargasが歌ったバージョンが有名なようですが、歌自体はフォークソングとして古くから歌い継がれたものです。
さらにその基となったのが、中南米に古くから伝わる民話「泣き女(La Llorona)」です。日本における口裂け女のように、現在も時折目撃談(!)が出てくるとか。
「泣き女」の大筋はこうです。とある夫婦と3人の子供の家族、ある日夫は家族を捨てて、別の女性の下へ行ってしまいました。残された妻は絶望のあまり、3人の子供を殺してしまいます。しかし後悔の念に苛まれて彼女は自殺。亡霊となって殺してしまった子供を探してさ迷い歩き、そのすすり泣く声が「死者の日」になると聞こえてくるという……
出ていった男と残された女。「リメンバー・ミー」におけるイメルダとヘクターに当てはまりますね。殺した子供に当たるのは、恐らく「音楽」でしょう。
ミゲルを引き留める場面と、ステージでとっさに出てきたメロディが「哀しきジョローナ」。激情的に歌い上げるイメルダの胸の内は、音楽を封じてしまったことへの悔いが溢れていたに違いありません。
歌詞の内容は、男がジョローナへ呼びかける形式となっています。ポイントは「空の如く青き」の部分で、これは既にこの世にはいないことを示しています。
高く伸びた松の木へ登り、天を仰いで一度は捨てたジョローナへ呼びかける男。
「哀しきジョローナ」にはこのような愛憎渦巻く物語が秘められているのです。
映画「リメンバー・ミー」考察 ハティ @squallfang
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