???

 真耶。

 双子の妹。

 真耶のいなくなった世界は、穏やかで小さな幸福に溢れていて、混乱や悲しみが少ない。退屈だと思うけど、代わりに不安もない。平穏に、のんびりと時間が過ぎていく。

 それだけの世界だ。

 それ以上、なにも語ることのない世界。

 真耶。だからお前は死んでよかったと思う。

 長い間こんな世界に縛りつけてしまった俺のことを、許してくれ。

 あの日以来、意識はこの世界から離れられなくなってしまったけど、自分が半分になった喪失感はいつまで経っても消えない。

 生まれてきた子どもは、女の子だったよ。

 そういえば俺と真耶と瞬には、結局全員第六感があったな。

 個性とか特技とか、そういう領域を超越したちゃんとした超能力。

 第六感と遺伝の関連性について明確なデータや証明は出ていないけど、真耶はどう思う。

 瞬とも、俺たちとも血の繋がっているあの子は、第六感に目覚めるかな。

 だとしたらどんな能力だろうな。

 俺たちの力は結局、使ってもろくなことにならなかったけど。

 あの子は、どうなるんだろうな。

 それを思うと、少し先の未来も見てみたい気がするけど。

 だけど、もういいんだ。

 世界は、俺にとって、最初から真耶のためのものだった。

 この世界だって、真耶のために苦労して育てた木の枝のひとつだ。

 だから、お前がいないならもういい。もういらない。

 同じ海に飛び込んだら、俺も真耶と父さんに会えるかな。

 父さんの身体は陸に上げられて火葬されたからわからないけど。

 真耶にはきっと会える気がする。

 だって俺たちは双子だろ。

 生まれる前から一緒にだったじゃないか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

なんか妹がすぐに死ぬ 加登 伶 @sakamuke

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ