第21話氷塊の書

三百年もの長きにわたって眠りつづけた私が目覚めたのは、世界が氷に覆われた二十七世紀のことだった。氷の中に埋もれた電子データは破損し、ただ虚ろになった機械ばかりが時々顔を出して、私はそれらを拾い集めた。虐殺、貧困、戦争。様々な映像をリカバリーし、それらを新たにつなぎ合わせたとき、かつて史料を編纂していた歴史学者が残したとおぼしきメッセージが浮かび上がってきた。これをひも解かんとするあなた方が、ふたたび過ちを犯さぬように。何度も繰り返されてきた誤謬と誤読のひとつひとつの積み重ねの果てに、今ふたたび私は生まれようとしている。世界に死をもたらそうとするのか、人間に残された希望の光の一筋となるのか。


第七十一回 Twitter300字SS お題「眠る」

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或いは季節はずれの春愁 雨伽詩音 @rain_sion

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