第20話詩人の涙
その選曲は良くないとあなたが云うから、ご執心のJ-COREを流しながら私は下着を身につける。爆音のキックが部屋を震わせる。薔薇の刺繍だのレースだのが散りばめられたそれをつけている間、あなたは壁のコラージュ絵画を眺めている。真珠貝の内側に裸身の女が横たわり、その秘部には物憂げな瞳がある。きっと詩人の瞳だ。ランボーでもヴェルレーヌでも構わない。瞳からこぼれた涙が真珠貝をうつくしく満たしている。そうして男のこぼすなさけない涙を一滴残らず搾り取って婉然と微笑む女でいたい。趣味が悪い絵だとあなたは笑って、本棚を物色しはじめる。ボードレール全集を借りて行っていいか。あなたは問うけれどきっと返しには来ない。
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