山の祝福

作者 黒弐 仁

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★★ Very Good!!

天狗を見た主人公の身に、一体何が起こったのか
そして、その家族が辿る運命とは・・・

その神秘的な存在に、かつての人々は畏敬の念を抱いていた。
しかし、現代では天狗は民話や童話の中の妖怪の類として扱われている。

人々は知らない。
天狗はいつも身近にいて、いつも我々を見ていると言う事を・・・

★★★ Excellent!!!

仕事をとある理由で休職していた主人公がある不安を抱えながら妻と息子との生活を続けている、という冒頭から語り部の回想に入っていくストーリー展開なのですが、この休職した理由や不安の要因が、後の展開において伏線になってくるんですよ。

さて、この作品ではキャッチコピーにもある通り、『天狗』の存在が鍵になってきます。山々に住む魔物など、様々な姿で描かれる天狗ですが、この作品のジャンルが『ホラー』であることから分かるように、作中において主人公にとってあまり良い存在ではありません。

回想シーンでは一緒に遊んでいた友人が行方不明になった後、彼が帰ってきて不思議な現象を度々起こすようになります。不思議な道具を見せてもらったり、少々の気味悪さを残しつつも、それは語り部の主人公にとって楽しそうで、どこか朗らかな雰囲気が流れます。
しかしそれは主人公が一気に不幸へと転じてしまうラストに発動する落とし穴だったのです。

★★★ Excellent!!!

山がちなこの国の原風景。そこに根差した恐怖を、市街地で暮らす標準的な現代日本人に語らせる。その設定が見事です。

地面をアスファルトで舗装し、ビルやマンションに囲まれたところで、「彼ら」の恐怖から逃れることはできない。英名でジャングルクロウと呼ばれるハシブトガラスがビル群のジャングルに適応したように、彼らははわたしたちのすぐそばに忍び寄っている。そんな恐怖を感じさせる1作でした。

★★★ Excellent!!!

一話完結で、ストーリー構成も素晴らしく、読後はスッキリとしていて面白い作品です。


現代にもある、神隠しのような失踪事件。
もしかしたら人ならざる存在……天狗の仕業かもしれない。

古来から、山は信仰の対象。山に恐れを抱かなくなったのは、いつからか?
夜中に町を歩き回る妖怪達を信じなくなったのは、いつからか?


妖怪は、いなくなったわけじゃない。まだ、いる。
警戒心がなくなって平和ボケした人間を狙って虎視眈々と、姿を現す絶好の機会を狙っているだけなのだから。

★★★ Excellent!!!

一方的な簒奪こそが戦争の原因であるなら、人間から人間の体を簒奪する天狗の行為は戦争の引き金そのものだ。
私たちは、天狗と交流できない。交流するための言葉を持たない。
一方的な簒奪が天狗の日常であるのなら、今日も天狗はどこかで人間の体を簒奪する。
しかし私たちは怯え、備えるしかない。奇妙な日常は、私たちのすぐ後ろにあるのだから。