5
どこか名残惜しい気持ちで、しばらく空を見上げていたら、誰かと
見れば電話をかけており、「依頼人はお亡くなりに」とか「
通話を終えてスマホを下ろすと、彼もこちらを見た。
「ところで、お怪我はございませんか?」
「大丈夫です。石川さんも来てくれたし」
「でも、どうしてここが?」
「占いですよ。指輪の
「なるほど」
──って、占いなんて
まあさっき、幽霊やら謎の術やら、たっぷり見ちゃったし、無理もないか。
「そういや、タマキさんは病気で亡くなったんですか?」
「おそらくは。まあ、年でしたし」
「年っ?」
そっか、指輪も写真も古そうだったし、ホントはうちのおばあちゃんと同い年くらいだったのかも。
「じゃあ、リカさんも?」
「彼女は昨年孤独死されて、指輪を含めたすべての遺品が、業者に処分されたんです。おかげで探すのに、少々手間取ってしまいました。
タマキさんへの罪悪感が、いつしか指輪への執着と代わり、死後悪霊となってしまったのでしょう。
ですから、あなたに何事もなく、本当に良かった」
優しく微笑みかけられ、照れくさくなったあたしは、「あ、でも、霊が襲ってきたとき、急にバチってなったんです」と、話題を変えた。
「それで助かったんですが、なんなんですかね?」
「何かお守りのようなものを持っていませんか?」
「縁結びのなら」
リュックから、それを出そうとしたとき、何かがハラリと地面に落ちた。
「落ちましたよ……って、僕の名刺?」
拾い上げた石川さんが、じっとそれを見つめ呟く。
横から
「ウソ、なんで、あたし、汚したりなんか……」
ちゃんと仕舞ってたハズなのに、どうして?
内心
「ああ、すみません。実は、この名刺、魔除けのまじないが
「そうだったんですか」
いろんな意味でホッと息を漏らしたとき、彼のスマホから通知音が聞こえた。
「ちょっと失礼」
確認した彼が、「わかりましたよ、すぐ帰りますって」と、ぼやきながら返信するのを見て、あたしは慌てて礼をいう。
「いろいろありがとうございました」
「いえ、どうかお気になさらず。それでは」
別れの
「また会えますかっ?」
脈絡なさすぎる発言に、自分でも驚いたが、向こうも呆気に取られたように、こちらを見下ろしてくる。
気恥ずかしくて
「何かございましたら、こちらへご連絡下さい」
汚れひとつないそれを受け取り、意を決して顔を上げると、そこにはもう誰もいなかった。
相変わらず足が早いなぁと、思わず笑みが
でも、これくれたってことは、連絡してもいいってことだよね?
そもそも一番気になってたこと──彼が何者なのかも、聞けなかったし。
──って、ヤバい、入館証!
あたしは名刺を大事にしまうと、リュックをしっかり
見知らぬ指輪 一視信乃 @prunelle
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