感じる、そのために満たす気持ちへと

汗で色褪せたペン、八方に散らばった消し滓


灰色の膜を張った机に人差し指を沿わせる

指は忽ち曇りだす


身体が重力に負けた

机は顔を拒まない


凛と張った木目に乾いた肌が出会う

軈て重力は身体を離れた


掛時計の刻むリズムの不調和に鼓動が撹乱


電気スタンドの灯りが怯える


馴染まず

聴き慣れ

聞き飽き

単調で

響めき

鋭利なそれに


背景で旅人たちの足音が無数に輪唱する中で




私は暖かな彼女の目覚めに

暫くの猶予を持て余す


私には既に冷やかな彼女が見えない


便りのないこの場所に射し込む者は




伸ばす先のない両腕に

静寂の中の両耳に

刺激のない両目に


隙間のある一心に、涼感を

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アコースティックギターと一人の静けさ。 エビの死体 @ebishitai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ