奇跡の降臨~エピローグ

 俺は人形から降り巨大ムカデへ白兵戦を挑もうとして剣を持った。その時俺の前に信じられない光景が出現した。

 光り輝く銀髪の女性が突如空中に現れたのだ。

 彼女は胸に合わせていた両手を上に挙げた。その瞬間、広範囲にわたって明るく光り輝き残りの巨大ムカデもその光に包まれた。

 巨大ムカデは灰のようになりサラサラと崩れていく。彼女は強大な霊力を使い周囲に法術を展開したのだ。

 俺は剣を置き操縦席の扉を開く。

 目の前にいたのは俺のかつての恋人、ネーゼ皇女だった。

 彼女は操縦席の中を見て眉をしかめる。

「あら、すごい匂い。それに何?このミミズみたいなの。貴方を抱きしめようと思ったのだけど、今は……無理かな?ごめんなさい」

 ネーゼは苦笑いをする。

 俺はまだ体のあちこちにミミズを張り付かせている。何故彼女がここに来たのか聞いてみた。

「それは、リオネさんに聞いたのよ。貴方がピンチだって。事前に教えてくれたら良かったんだけどね。さすがに誤情報だったら不味いからって巨大ムカデが出てきてから連絡してくれたの」

 緊急事態とはいえ第一皇女をこんなところへ引っ張り出すとは豪胆だ。

「宇宙軍に指示すれば良かったのでは?機動部隊に空爆させれば即解決します」

「馬鹿ね。私が来たかったからに決まってるでしょ。この役目、他の誰にも譲れません!」

 その時フェオから通信が入る。

「今の光、何だったんですか??」

「中央から法術士が応援に来てくれたんだ。生き残りがいないか警戒してくれ」

「了解しました」

 相変わらず間の悪い奴だ。

 俺は下へ降りた。ネーゼも降りてくる。

 夜明けまではまだ時間がある。

 少しくらいは彼女と話ができるだろう。

 今夜はよく晴れていて星が眩く瞬いている。

 このロマンチックな雰囲気を蹴破るように軍のトラックが走ってきた。

(この馬鹿野郎!)

 心の中で罵りながら運転手を見る。フェオだった。

「少尉殿。お疲れ様でした!!」

 トラックを止め降りてくるのだが、ネーゼの顔を見た途端に震えだしその場で土下座を始めた。

「面を上げてください。さあ、砦へ戻りましょう」

 ネーゼの言葉にも震えが止まらず身動きができないフェオを立たせトラックの荷台へ乗せる。

 ネーゼを助手席に座らせトラックを走らせた。

「ところで、どうしてあなたの人形が狙われたの?」

「俺の人形は通常タイプの三倍の出力があるんだとよ。それで特殊な心臓を使っているに違いない。そういう理由で襲われたんだ」

「あら、お馬鹿さんね。鋼鉄人形の特性を何も知らないんだ」

「そうですね。鋼鉄人形の出力が操縦士ドールマスターの霊力に比例する。この事を知らなかった」

「最強のドールマスターが操る鋼鉄人形は、その出力も最高値を示す。それは一般の操縦士の何倍もの数値になる。こんな、誰でも知っている事を知らないのね。他星よその人は」

「そのようです」

 砦には煌々とあかりが灯っていた。中に入った途端人々に囲まれた。

 トラックから降りた俺とネーゼは人々に囲まれスパークリングワインを浴びせられた。

 今夜は朝まで祝勝会をやるのだろう。

 俺たちはもみくちゃにされながら、広場に用意された祝勝会の会場へと向かった。



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鋼鉄人形ゼクローザス 暗黒星雲 @darknebula

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