第5話 自己紹介

 テラスでのゲームの後、王の間には俺、キト、リーゼ、リナ、オルカが集まっていた。リーゼだけ興奮が冷めないのか未だに顔が赤かった。

 集まってから既に10分近くが経過しているが、誰も声を出そうとしない重苦しい空気が蔓延していたが、それは1人の子によって断ち切られた。

 「ねぇ、キトさん。なんで私たちは集められたの?」

 俺の左横に座っているリナが俺の右横に座っているキトにそう質問すると、キトは俺の顔を見てきた。「早く話しな」と目で訴えられた俺は立ち上がると、全員の目がこちらを向いた。少人数と言ってもすべての目がこちらを向いてるのはあっちの世界でも経験が無かったために、変な汗が出てきてしまった。

 「ごほんっ。えーと、ここに集まってもらったのは自己紹介をしたいからだ!」

 「具体的には何を言えばいいの?」

 「そうだな……名前、出身、得意ゲームでいいか。じゃあ、俺から。名前はハク。出身は日本。得意ゲームは基本的にほとんどのゲームは得意だ。何か質問は?」

 簡単に自己紹介をすると案の定、質問が出た。

 「えっと、質問なんだけど。ハクの出身の二ホンってどこにある国なの?これでも私は王女だけど、その国だけ聞いたことがないわ」

 「えっと、それは……」

 俺が説明しようすると、キトが割込み代わりに説明した。

 「ハクは元からこの世界の人間ではない。リーゼたちが今いる世界とはまた違う世界の住人……つまり異世界人ということになる」

 「じゃ、じゃあハクはなぜこんなところにいるの?」

 「実は、ハクは二ホンで死亡している」

 キトが重々しくそう答えると、リーゼたち3人の目がまたこちらを向いた。さきほどの興味があるような表情とは違い、恐れが表情として出ていた。特に年齢が若いリナとオルカには。

 「そんなお化けを見るような目で見なくて大丈夫だよ。彼は死んだけど生き返った。今度はこの世界の住人として。だからさっきみたいに接してあげて」

 「生き返ったなら、過去の記憶は失っているの?」

 「ほとんどないよ。ハクは二ホンで生きていた記憶のほとんどを失っているけど、ゲームの知識だけは失っていない。私がそういじった」

 キトはしれっとエグイことを言った。だが、リナとオルカはうまく理解できなかったようで首を傾げていた。

 「まぁ、そういうわけだ。俺は異世界人で、キトの補佐ということに変わりないもういいだろう。次はリーゼの番だ」

 俺は強制的にリーゼに番を移すと、驚いたのかビクッと体を揺らした。

 「あ、私の番だね、あはははは。ごほんっ……えー私の名前はリーゼ。リーゼ・メル。セントロール第6王女よ。得意ゲームはオセロとかのボードゲーム!質問は?」

 「あ、俺からいいか?リーゼの年齢っていくつだ?」

 基本的に女性に年齢を聞くのはマナー違反と言われているが、俺の状況から見れば致し方ない。

 「私は18よ。教えたんだから、ハクも教えなさいよ」

 「俺は、16だ」

 その発言に固まったのはリーゼだけだった。


 「ハク、本当に16なの?え、じゃあ私はオルカやリナ以外の年下に負けたの?うそ……」

 リーゼはその場で頭を抱えながらテーブルに突っ伏した。それを見たリナがくすくす笑っていたがオルカは俺を見ていた。

 「?」

 視線に気づいた俺はそちらの方に向くと、今もなおオルカは俺を見ていた。

 (な、なんだ?俺に何かついてるのか?)

 そう思い、俺は自分の体を見回してみるがゴミやら虫やら何もついていなかった。オルカが何を訴えかけているのか分からない俺は、横に座っているキトに視線を向けるが、微笑むだけで解決方法を教えてくれなかった。

 (くそ~何で教えてくれないんだ。弟や妹がいなかったからどうしていいか分からないだけなのに……)

 頭の中で愚痴を言うが何も変わらない。そんな俺に助け船を出したのはリナだった。

 「オルカはね、ハクさんに興味があるんだよ。ねーオルカ!」

 「……うん」

 オルカはこくりとうなずくと、リナと一緒にまた俺を見てきた。

 「え。えっと~あとでゲームする?」

 「……!いいの?」

 「キト、問題……ないよね?」

 「ああ、問題ないさ。この世界の神がどこで何してようが問題ないよ」

 「キトから許しが出たから、あとでしようね」

 「うん」

 オルカとゲームの約束を取り付けると、リナもやりたそうな顔で俺を見ていた。リナにも約束すると、満面の笑みを見せると2人の姉であるリーゼが冷たい視線を送っていた。

 「リーゼ?ど、どうしたんだ?そ、そんな冷たい視線を向けて」

 「別に。さっき初めて会ったはずなのにやけに仲がいいと思って。……もしかして、ハクは小さい女の子が好きなの?」

 「別に嫌いじゃないし。……なぁ、いつまでこの話をするんだ?自己紹介の続きをやろう」

 俺が逃げるように話を終わらせると「チッ」とリーゼが舌打ちが聞こえた気がした。多分。

 

 リーゼの次に自己紹介をするのはリナだった。

 「リナです!出身はお姉ちゃんと同じセントロールです!好きなゲームはポーカーです!よろしくお願いします!」

 誰よりも元気に自己紹介をすると、今度はオルカが始めた。

 「オルカです。出身はセントロール。ポーカーが好きです。よろしく……」

 リナとは対照的にオルカは物静かな自己紹介をした。好きなゲームは姉妹だからか同じだった。

 (まぁ、そりゃあそうだよな。ずっとポーカーしてたからな)

 「最後にキトか」

 「私はいいよ。みんなも知っているはずだから。じゃあ、1つだけ。私はこの体ではこの世界の神をやっていない。……私には2つの体が存在する。1つは下界、すなわちこの地上用と神界用の体がある。詳しくは言えないからここまで。……驚くよね、自分の親代わりの人がそのような存在なんて。まぁ、私は今まで通り皆に接していこうと思っている。だから、3人もいままで通りにして欲しい」

 キトは少しすまなさそうに言うと、リーゼが立ち上がった。

 「キトが神だからって私たちのお母さんには変わりないよ!だから、これからもよろしくお願いします!」

 そう自身の意見を言うと、それにつられてリナとオルカも「よろしくお願いします!」と元気よく言うとキトはどこか安心した顔をした。

 「私からもよろしく頼むよ。もちろん助手であるハクもね」

 「ああ。よろしく」

 「さて、自己紹介も一通り終わったわけだし……リーゼ、いきなりだけどこれから先の話をしたいから自室まで案内してくれない?」

 「わかったわ。じゃあリナ、オルカ、ハクの言うことをしっかり聞いて待っているのよ。行きましょう」

 「それじゃあ、またあとでね」

 そのままリーゼとキトは王の間を出ていくと自然に残った2人の目が俺の方を向いた。

 「それじゃあ、ゲームをしようか」

 

 

 

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異世界に飛んだ餓死ゲーマー! 稲荷 里狐 @rikoinari

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