第4話 ポンコツ王女とポーカー

 「ねぇ、キト。リナたちは……え?」

 眠りから覚めたリーゼは俺たちを見て固まった。何故なら俺はオルカとリナの頭を撫でながらニヤついていたからだ。

 俺の思考は完全に機能停止に追いやられその場に倒れた。

 (終わった。社会的に死んだ。は~明日からどうしよう?)

 呑気に考えていると、近くにキトが来て俺の顔を見ながらニヤニヤし始めたかと思えば、その後ろからリーゼが来た。俺は死を覚悟していると思いもよらないことを言われた。

 「あなた、私と勝負しなさい!」

 まさかの決闘の申し込みだった。


 俺はとりあえず起きやがると同時にリーゼは勝負の内容を言い始めた。

 「勝負内容はリナやオルカがさっきまでやっていたポーカー。ディーラーはお母さんにお願いする。そして、私が勝負に勝ったらこの宮殿から出て行ってもらいます!が、あなたが勝ったら不本意ですが、妹たちのゲームの相手をしてほしいのですがいいですか?」

 「それに追加で俺が勝ったらリーゼ。君に俺の補佐をしてもらう」

 急なチップの追加で驚いたのかリーゼはキトと俺の顔を見ると、驚きの絶叫を上げた。

 「えええ!お母さん!聞いてないわよ!こいつがお母さんの補佐だなんて!勝てるはずないじゃない!……でも、ポーカーは運が付きまとうゲームだから問題ないよね?」

 「さぁ、どうかな?ポーカーはそう甘くないのはリーゼも知っていると思うけど、この世に運はないんだよ」

 キトが少し語尾を強めて言うとリーゼは力ない足取りで椅子に座るのを見て、俺も座ると目の前に5枚のトランプが配られた。

 「まだ見ないでくれ。これからルール説明をする。基本的なことだけど、イカサマは禁止。手札交換は2回まで。相手のカードと自分のカードを交換しないこと。捨てたカードはテーブルの中央に置いてね。これでルールはいい?あっ、因みにトランプはを使うからね」

 「大丈夫だ」

 「だ、大丈夫」

 「じゃあ、カードを見てくれ」

 言われた通りカードを見てみると、最悪なことに何1つペアが出来ていなくストレートもフラッシュも狙えない手札だった。俺は一瞬だけリーゼの顔を見ると少しだけ口角が上がっていた。

 (あの表情なら1ペアは確定かジョーカーを引いたかのどちらかだな。ジョーカーならストレートフラッシュ、もしくはロイヤルストレートフラッシュを決められる確率が上がる。なら俺は……)

 「3枚交換」

 俺はマークの揃っていない3枚を捨て新たにカードを貰うが同マークは一枚だけで1ペアが完成した。そして、リーゼは2枚交換した。すると、先ほどとは異なり表情が曇った。

 (ちっ、ジョーカー持ちで既にスリーカードは完成済みってとこか。これはマズいな。だとすると最低でもAでスリーカードを作らないと負け確定か)

 そんなことを考えているとリーゼと目が合った。

 「な、何よ。じろじろ見て」

 「いや、何でも。そうだ、1つ言っとくよ。少しは表情に気をつけな」

 そう注意すると、キトは微笑みリーゼは顔を赤くした。

 (さては、ゲームが苦手か?なら少し攻めるか)

 「なぁ、リーゼ。さてはジョーカーもしくはすでにスリーカードを完成しているな?」

 質問に対しリーゼは口をきつく閉め首をブンブンと横に振ったが、目の焦点が一瞬手札に移ったのが見えた。

 (ビンゴか……では……)

 「リーゼ。君はなんであんなところで倒れていたんだ?」

 「そ、そんな話今は関係ないでしょ!てか、そういう番外戦術みたいのは禁止じゃないの?」

 「禁止じゃない。もう忘れたのか?キトが言っていただろうルールの追加は無いかって」

 俺がそう指摘するとリーゼはまた顔を赤くし、キトはため息を吐きながら肩を落とした。

 (実際のところ、リーゼよりリナとオルカの方が強いんじゃないのか?まぁ、そんなことはいいか)

 再びリーゼの方を見ると、すでに手札交換を終えていた。その表情は少し曇っていたが、どうでもいいこのゲーム俺の勝ちだから。

 「キト、交換の前にデッキのシャッフルをお願いしたいがいいか?俺がOKというまで」

 俺の言葉に驚いたのかリーゼは口をポカンと開き、キトは楽しそうにデッキをシャッフルし始めた。

 「OK。んじゃ、2枚交換」

 俺は数字の揃っていない2枚を捨てカードを貰うとしっかりAのカードが来た。

 すべてが考えた通りに動いて不覚にも口角が上がってしまった。

 「それじゃ、2人ともカードをオープンしてね」

 一斉にカードを見せるとリーゼの目には涙がたまりだした。なぜなら、両者の役はスリーカードだが、役の強さが違った。

 俺はAだったが、リーゼは8だったからだ。しかも、しっかりとジョーカー込みで。

 「この勝負、君の勝ちだね。いや~中々に面白かったよ。特にリーゼがね」

 「やめてぇぇぇー思い出させないでー!」

 そう言いながらリーゼはテーブルに伏せたかと思えば、がばっと顔をあげた 。

 「そういえば、あなたの名前は!?」

 「ん?そういえば、キトにも言っていなかったような気がする」

 「そういえば、言われてなかったね。あはは……ん?言われてたわ~さっき」

 「え?そうなの?」

 「あー言われてみればそうだったな。言った気がする」

 3人はすっかりリナとオルカのことなんて忘れていた。


 「ねぇ、オルカ。私たちのこと忘れられてない?」

 「そうだね。でも……リーゼお姉ちゃんが楽しそうだからいい」

 「うん」

 そのまま2人は3人の話が終わるまで待っていました。

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