月は最も遠い人類の親戚なのかもしれない。

久々に読んでみて、ふと思ったのが二点。
ただ、これ単純に読解力無いからかもしれない。僕の頭の悪さを侮ってはならないので、覚悟してほしい。

まず、宇宙船なのに窓あるのかというところ。宇宙って真空ですから、仮に窓があったとしてそれを開けたら物凄い突風になって中の空気がごっそり抜けていっちゃいますよね……スペースオペラものでよくある描写。
そもそも、多分耐久性の問題で窓付けらんない。しかし一般市民でも乗れる、また恐らく自動操縦の宇宙船みたいなので、現在の技術よりはずっと発達していそう。すんごく硬いガラスなのだろう。

また、「窓を開ける」という行為に意味を見出していたのかもしれない。
夜風に当たる、窓から来る風はエアコンのものより優しく気持ちいい。
そんな人間臭い「妄信」に従い、見てくれは車窓を開くような感覚でそれをしているけれど、実際は本当の窓なんかじゃなくて、流れてくるのも単に内部の空気を循環させて流しているだけなのかもしれない。

でも何となく、そうすると心地よく感じる。そんなプラシーボ効果を狙ったものなのかも。

二点目は男の子の心情の変化。
なんか突発的に忘れたくねぇ! って叫び出して、どこからともなくセブンアップを放りなげた!
未来にもセブンアップはあるんだな! やったね!
……じゃなくて、どうして見ず知らずの女の子にそれを言う気になったんだろう。
一目惚れ……? そんなの都市伝説である。エロゲの世界である。そんなものはない。そんなもの、あるわけがない! 非リア充には分かるんだ!

しかし最後の文章がとても美しい。月を掴むとか、兎は白く柔らかいといったくだり。

「Reach for the moon」という慣用句があって、「(月に届くほど)偉大なことを成す」という意味だそうです。
これが二人の決断や行く末を暗示しているように思える。

みんな自殺していったけど、生きてこそ成し得る事がある、死は何も生み出さず、あらゆる権利を放棄する事に他ならない。
不幸を放棄するという救済はあれど、幸福という可能性もまた手放さなくてはならない。

どちらが正しいということもなく、どちらを選ぶかという話に過ぎないが、しかし確実なのは「死者は何も得られない」ということ。

生きているから、二人は甘酸っぱいセブンアップの味わいも、果てのない宇宙という恐怖も、月の裏側に潜んでいるかもしれない兎を探す好奇心も得られるのだから。

あとふと思ったんですけど、太陽の寿命は百億年ほどで、その活動を終えるとか。
そして何やかんやでブラックホール化し、銀河系の惑星はやがてそれに飲み込まれ無くなってしまうという説があるそうです。

そいつに巻き込まれて死んでしまう、という意味では、月と人類は似ているかもしれない。その時まで人類がいればの話ですけど。

またタイトルが素晴らしい。午睡って初めて知りました。ググったのは内緒。
ソーダ水という言い回しが、微妙にレトロで近未来的な世界観とのギャップにぐっときます。

最後にひとつ。
これ読みながら、僕はセブンアップではなくドクターペッパーを飲んでいます。
なぜセブンアップを買わなかったのかと後悔しています。
でもね、ドクペ美味しいんだ。二人のボーダーレスな逃避行に乾杯。