6話 それから。
それからはいろんな事があった。と、言っても俺と朔さんの間に色恋沙汰の進展があったわけではなく。
あれから毎日「勉強を教えて欲しい」というのを口実に朔さんに会いに図書室に通ったいた。自慢ではないが俺は勉強が分からない訳ではない。それでも朔さんに会うための口実が欲しくてそれを理由に毎日図書室へ行った。教えて欲しい、とは言ったものの朔さんの勉強の実力なんて知らなかった。しかしとても分かり易い教え方で教えてくれる。聞いてみたら朔さんは2学年ではかなり頭のいい方だったみたいだ。それならば教え方が上手くてもおかしくはない。
「宮内くん、私教える必要ある……?」
と、朔さんに聞かれたが「必要あります」とだけ答えた。ここで「教える必要ないよね」なんて言われてしまえばもう会いに来る口実がなくなってしまう。
朔さんとはそんな感じだ。
他のことは生徒会長選に推薦された……なんて事もあった。学校の部活には所属していないが、空手の有段者である事、成績がいい事、それ故に「文武両道」なんて言われていた。……容姿の事もあり「眉目秀麗」も付いてくるが。後者はどうでもいいにしろ前者の理由で推薦されたらしく、先生からの期待もあった。俺としてはそんなにやる気があったわけではない。しかしどういうわけか選ばれてしまった。
朔さんに会いに行けなくなってしまう、そればかりが頭を占めた。
こんな事を考えている生徒会長なんて嫌だろうに誰も俺の気持ちなど分かったものではない。決まってしまったものはしょうがない、俺は生徒会長の仕事をしながらも時間を作って朔さんのいる図書室へ通った。
生徒会長に決まった日には朔さんに「おめでとう」と言われた。それは嬉しかった。しかし、「これからもう忙しくてここに来れないね」と言われた時には意地でも来てやろうと思い「朔さんの教え方分かり易いのでこれからも来ます」と答えた。
そんな無理しなくても。宮内くん私教えなくても大丈夫だよね……?
そう言われても「無理してないですし、朔さんが教えてくれるから出来てるんですよ」と言った。今思えばあの時の俺は必死だった。
朔さんは納得してないような顔だったが、それでも俺は朔さんに会いたくて必死に生徒会長の仕事をこなして時間を作り会いに行った。
あとは俺も朔さんも学年が1つ上がった。そして今に至る。
君の心を求めてる。 紫苑 @shion_01
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