第37話 灼熱地獄

俺は氷山にて、ヴォルグレイを発見し、フューからは、報酬を受け取った。


残る四天王は三匹で、フューの問題解決もあと三つあるらしい。


四天王の発見と問題の解決が並行している理由は、俺がこの世界に入って来て、四天王も各場所に降りた途端、今までも異常だったが、更なる自然現象が起こった。と、フューは言った。


ヴォルグレイが居た場所も、元々氷山であったが、滝さえも凍る程では無かった様だ。


そして、あと三つの問題である自然現象とは、フロガがいるであろう南の砂漠・荒野地帯は、今では灼熱地獄となっており、調査隊でさえも、かなり上空を飛ばなければ、熱気だけで体が燃える様だ。


西の天軍地帯、東の魔軍地帯は、そもそも近づく事さえ危険な為、何も情報は無いが、恐らく異常が起きているだろうと見ている様だ。


そして今俺たちは、フロガを探す為に、南の砂漠・荒野地帯に行く所だ。


「砂漠荒野地帯と灼熱地獄って違うよね!?」

「あぁ、熱気だけで体が燃えるらしいが、元々は砂漠だ。太陽の日差し、熱風、砂嵐がある所に、溶岩が足されていると言った方が分かりやすいだろう。熱気意外にも注意した方が良さそうだ」

「流石にマジでこれは対処法探さないとやばいぞ?」

「此処の騎士団は空を飛べと言うが......」

「俺もヴォルグレイも飛べねぇなぁ......」

「まぁ私は、辺りを凍らせる力を持つ。何とかなるだろう」

「えぇ......」


そうして、今回もこれと言った準備は無しに、南へ向かった。


道中、まだ目的地の様な物は見られないが、その時点で俺は異常を感知した。


役に立つか分からないが、道具屋で温度計を買ったので、その数字を見ると、街を出た時は、二十六度と、普通に暖かったが、今は五十度から、南方向へ歩く度に上がっていた。


「あっつ......」

「これはそろそろ冷気を出した方が良いか......」


ヴォルグレイがそう言うと、体から冷気が出始め、俺の周りを冷やす。


気温はマイナス二十度......


「いいいややや!さ、寒いわ!」

「我慢しろ。砂漠地帯に入れば、更に上がるだろう」


そして、寒さに耐えながら、しばらく歩くと、俺の体に、暖かい炎が当たる。


それに気づき辺りを見回すと、そこは正に灼熱地獄だった。しかし......


「あったけぇ......こりゃ灼熱天国の間違いじゃねぇのか?」

「言っただろう?だが、そこのマグマにはくれぐれも触れるな。マグマは余裕に六千度を超える。我が冷気でも抑えきれん」

「おおう……わ、分かった」


しばらく、灼熱地獄の様な道なき道を歩いていると、やっと目的地が見えた。目的地は、またしても山だった。いや、山と言えるのか?これは……


目的地の山は、何処から吹き出しているのかさえも分からない、マグマの山だった。


マグマだけで山が出来ているのか……それとも、マグマが溢れ過ぎて火口が見えないだけなのか……


そう眺めていると、火山の方から見覚えのある騎士が歩いてきた。


「おぉ!草原で出会った魔王じゃねぇか!無事、グラントスに着いたんだな!」

「あー、誰だっけ?」

「ブレンシュだよ!お前忘れんの速えなぁ?」

「あーハイハイ。そんな奴も居たな、うん」


ブレンシュ・ヴァーン。俺がこの世界に来て一番最初に出会った人だ。だが俺はブレンシュを見て疑問に思う。こんな灼熱地獄で分厚い鎧着て、暑そうな仕草も無い。


「お前熱くねぇの?」

「あー、俺は慣れているからな。特に暑いのはな」


多分俺が思うに慣れてるってレベルじゃ無いと思う。だって、汗一滴も垂らして無いもん。


「所でブレンシュ。お前は此処で何してんだ?」

「何って……今此処騎士団の調査地域だぜ?俺以外に近付ける奴がいないから、上からの命令で単独調査してる訳」

「へぇ〜、あ、そうだ。今俺は此処にいるであろう仲間を探してんだ。お前熱くねぇんなら、あそこの火山の中に入ってくんねぇか?」


熱く無い言っても流石にマグマは無理だろう。と冗談のつもりで頼んでみた。だかブレンシュは、快く引き受けてくれた。


「あぁ、良いぜ」

「へ、はぁ?おいおい、お前頭でもイかれちまったか?」

「火山の中に入れば良いんだろ?」


ブレンシュは、不思議そうな顔をしながら、悠々とマグマの中へ入っていった。


「は、はは……中はどうなってるんだ?」

「んー、でっけえ岩が何かを塞いでるなぁ」

「なるほどな。良し!その岩をぶっ壊せ!一応言っとくけど、俺の仲間はとんでも無く気性が荒いからな!」

「大丈夫だ。そう言う扱いには慣れてるから」


そう言うと、火山の中から、ブレンシュがやったであろう岩を砕く音が聞こえる。その直後、ブレンシュの叫び声が聞こえた。


「ちょ、まっ、うわああぁ!」

「おいどうした!?」


それから数秒経っても何も聞こえず何も起こらず、心配になるが、中に入る訳にもいかない。


ブレンシュの叫び声から、五分程が経った時だった。


突然地響きが起き、直後、火達磨となった何かが、火山から空高く噴射される。


「おおらああぁ!!」

「え、マジかよ!?」


噴射された火達磨を良く見ると、ブレンシュが、フロガの足を掴み、空中で回転しながら飛んでいる。


「魔王!そこをどけええええ!」

「うわわわわ!」


フロガの掛け声で咄嗟に避けると、フロガは、思いっきり地面に叩きつけられると同時に、態勢を立て直し、ブレンシュを殴る。


「チィッ!まだ終わらねぇぞ!魔神兵装・炎龍剛嵐撃!」

「かっけええええ!っていや、フロガ!お前なら簡単だろ!」


殴り飛ばされたブレンシュは、立ち直ると、走りながら大剣と一体化し、炎渦巻く龍となって突進してくる。


「おうよ!炎同士がぶつかる戦いなんて、こんなにも熱いもんはねぇぜ!オラァ!ヴォルグレイの体ちっと使うぜ?」

「おい!フロガ!何をッ!?あがッ!?」


フロガは、突進してくるブレンシュを正面にヴォルグレイの体を固定、口を無理矢理開き、炎龍を喰わせる。


「あぐッ!ガアアァ!」


炎龍を無理矢理飲み込まされたヴォルグレイは、すぐに吐き出す。


しかし、そこに残っていたのは、炎龍のまま姿が戻らず、完全に凍ったブレンシュの姿だった。


凍ったブレンシュの姿を前に、俺たちは唖然とする。これからどうしようかと。


「さっすがヴォルグレイの作った氷像は綺麗だな!!」

「だなぁ! まさに職人技だぜぇ!」

「いや、私は逆に口の中を火傷したのだが……」

「で、これ、どうするよ……?」


俺はぽかんとした顔でどうするか悩んでいると、次にフロガが、一つの案を思いつく。そして即実行した。


「証拠隠滅だぁ!!」


フロガが氷像となったブレンシュを片手で鷲掴みし、思いっきり片腕をグルングルンとこれから投げようとする勢いで回す。


「こんな物……どっかに飛んでけえええぇ!」


予想通り。フロガがブレンシュを遠くへ、一瞬で姿が見えなる程の速さで投げ飛ばす。


「ふうぅ! いい仕事したぜぇ!」

「全くだよ! やっぱり最高だな! フロガは! あはははは!!」

「あの方向、不味くないか……?」

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魔王の世界征服日記 Leiren Storathijs @LeirenStorathijs

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