降誕してもひっそり暮らしていますように

 あくまで私のイメージなんですけど、怖い話って幽霊や化け物が出てきて登場人物と一緒に対象を怖がるストーリー構造だと思ってたんです。
 でも『魔王降誕』は主人公の身のまわりで起こった出来事で恐怖を引き立てています。次々と不幸が重なり、食べるために生きている生物になってからの彼女が悲惨です。後半からは、怖い話というよりかわいそうな話としての印象が強くなっていきます。
 ホラー小説を読んでいるあの人は、救いようのないパターンは珍しいと言っていました。
 「ホラー小説やネットの怖い話のほとんどは、悪いものをなんとか祓ってもらい、そのあとつきまとっていた何かの正体を明かされる流れをよく見かける。でもこの作品はその正体を調べようとしない。そもそも主人公を助けてくれる人がいない。だからこそ現実味を感じた。今まで平穏に生きていて、ヤバいものに憑かれているところに都合よく祓ってくれる人が現れるとは考えにくい。つまりこの作品の教訓は『いざというときのために、助けてくれるあてを探したほうがいい』だろう」

 恐ろしいことに、主人公の悲劇が序章に過ぎなかったのです。
 これから、何かが起こります。