第18話 邂逅
「ソ、ラ…?キヨコ、ではなくて?」
「ずっと気づいていたんだろ?」
瑛美の質問にソラは答えず質問で返す。不敵な笑みを浮かべて。意志の強い瞳で、瑛美を射抜く。瑛美はこの瞳がキヨコの中に見え隠れしていたからこそ、違和感を持ったのかもしれないと思った。
「…今思えば、気づいていたのかもしれない。あんたは、明らかにあの潔子じゃない。それは見た目とかじゃなくて、なんて言うの…?……オーラ、的な。」
「きゃはっ。オーラって。」
「こら。茶化さない。」
ソラの後ろから瑛美を馬鹿にしたように見下ろすユメを、ソラは窘める。そして瑛美を一瞥し、ガシガシと後ろ頭を掻く。
「あんたは、非常にやりづらかった。下見してた時もそうだ。あんただけが、潔子を見ていた。やってることは人間として最低だったけど、そこの根源には潔子に対する恐怖があった。だから、あんたをうまく騙せるかどうかが、今回の一番の心配事項だったんだ。」
ユメの背を軽く押して何かを囁くソラ。それに素直に頷いて場を離れるユメを見送ったあと、ソラは瑛美に手を伸ばす。どうやら立ち上がるのに手を貸してくれるようだ。瑛美も恐る恐る手を伸ばす。ぐ、と手を握られたあと驚くほど軽やかに瑛美は立たされた。
「ありがと…?」
「礼なんかいるか。これからあんたは殺されるかもしれないのに。」
ひらり、と手を振って肩をすくめるソラ。簡単に「殺す」という言葉を使うところが、やはり現実離れしていて、瑛美には遠い出来事のように思われた。
ユメが駆けていった場所から不意に扉が開く音がする。そちらの方向へ瑛美が視線を向けると、驚きすぎて感覚がマヒしていたはずなのに驚きがぶり返していた。
そこには「ソラ」にそっくりな、潔子が立っていた。
エミとキヨコと 岬 ソラ @sora_kara
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