第44話 この日常を越えてたどり着ける場所
リップクリームを塗りながら私は人生について考えていた。
リップクリームを塗り終わったら私はシュークリームについて考えていた。
移り行く心の情景に翻弄されてばかりで、本当の自分というものは果たしてここにあるのだろうか?確かめなくちゃ、私の可能性を!
早速私は駅前のスイーツショップ(クロシマさんの職場)にやってきた。
私「この店で一番おいしいシュークリームはどれですか?」
クロシマ「いらっしゃいませ。こちらのシュークリームはスタンダードなカスタード味のものになります。毎日食べても飽きない素朴なおいしさが好評で、この店自慢の味です」
私「じゃあそれを1個ください」
クロシマ「ありがとうございます」
私「もぐもぐもぐ」
クロシマ「(どきどき)」
私「おいしい」
クロシマ「よかった!」
私「…………シュークリームを食べる私を見て、私のこと、もっと好きになった?」
クロシマ「……ごめん、シュークリームを食べるのを見て好感度が上がるシステムは未実装」
私「私の動き一つ一つを見るたびに好感度が上がるように実装してください」
クロシマ「承知しました。工数は3日くらいかかりますがよろしいですか?」
最近クロシマさんのノリが良くなってきた気がする。これも私たちがお互いのことをだんだんとわかってきたからに違いない。そういえば私なんでここに来たんだっけ。
ちょっと私がぼけっと考えてたら、クロシマさんが私の左肩にそっと手を添えてきた。
クロシマ「何でも目の前のことに一生懸命なスミカさんが素敵だよ」
私「な……いきなり何をっ!」
クロシマ「あ、ごめん」
クロシマさんが慌てて手を戻す。
私「……ううん。いいよ」
クロシマ「……っ!?////」
私「あ、何か変なこと想像してない?」
クロシマ「実はちょっと」
私「おい」
お返しにクロシマさんの両肩をなでなでしてやる。
クロシマ「ぷっ……うはっ……さーせん!ぞくぞくする!やめて!」
手を放して一息ついた私は次の作戦行動に移る。
私「じゃあ、私行くわね」
クロシマ「!?どこへ……」
私「おいしいお肉を売ってるお店かな」
クロシマ「僕も……」
私「お仕事あるでしょ」
クロシマ「……っ!」
私「私と仕事、天秤にかけてる?」
クロシマ「人生、そんな単純な選択しかないわけじゃないさ」
私「あら、じゃあどうするのかしら?」
クロシマ「今夜、仕事が終わったら君のうちに行っても?」
私「……まだ早いわ」
クロシマ「あんまり焦らすと浮気するかもよ」
私「言ってくれるじゃない……いいよ。カレー作って待ってる」
クロシマ「じゃあ僕は福神漬けを持っていくよ」
私「何それ。ロマンチックが足りない」
クロシマ「じゃあ、ミルフィーユでいいかな」
私「え、いいの?」
クロシマ「(もともとそのために……)うん」
私「じゃあ紅茶も用意するね」
クロシマ「うん」
私「それじゃあね」
クロシマ「……うん」
……なんか勢いで関係が進展しそう。
C#の羽音は吐息の後に切なく消えて 南京白夜 @nankinbyakuya
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