エピローグ

あれから四十年……

 クラス会、と言う訳ではない。

 ただ単に「同じ年に卒業したもの同士が、集まる飲み会」だ。それぞれが連絡を取れる人に声を掛けて、集まれる人が集まって、昔を懐かしみながらお酒を飲んだり、お花見をしたり、カラオケに行ったり。数年前から年に一、二回、こうして集まるようになった。

 バーチャルゴルフに行った時は、「クラブを握るのが初めて」なんていう女の子(例え五十歳を越えていたとしても、いつまでたっても同級生は『女の子』だし、『〇〇ちゃん』なのだ)も交えて、チーム対抗戦で盛り上がった。

 ボーリングに行った時も、小学校の卒業式以来四十年ぶりに顔を合わせるヤツと同じチームでハイタッチを交わした。

 今度は温泉にでも行くか、なんて話も出ている。


 友達の多くが錦糸中学校へ進んだが、私は別の中学へ行ったため、みんなと顔を合わせる機会もなくなった。仲のいい友達との交流も次第に薄れ、まったく接点のない生活をしていたのに……。

 ある日、スーパーで買い物をしていたときのこと。

「こんにちは」

 レジを打ちながら、店員さんが声を掛けてきた。

「こんにちは」戸惑いながらも挨拶を返すと、「〇〇君でしょ?」

「えっ!?」驚いて店員さんを見ると「私、△△です。覚えてる?」

 すぐに分かった。六年生の時には隣の席だったし、卒業式には一緒に写真を撮ったから。

「黙ってようかなぁ、と思ってたんだけど、声掛けちゃった。最近、ここで買い物してるの見て気づいてたんだ」

 レジの清算が終わり、次の人も並んでいたので話もそこそこに「じゃ、また」とその場は終わったのだけれど、彼女は想定外の行動力を発揮し、数日後には事務所へ現れた。

「看板が出てたから、ここで仕事始めたんだぁと思って」

 こうして連絡先を交換したのが七年前のこと。

 それから、四、五人で会うようになり、少しずつ輪が広がって、今は十二、三人は集まるようになった。

 三十年以上も会っていなくたって、あの頃の思い出と共に楽しい時間を過ごすことが出来る。これも下町・すみだの「つながり」なのかもしれない。


 動画コンテストに参加した彼らも、数十年後、うまい棒の思い出と共に楽しく語らう日がきっと来るだろう。その時まで、うまえもんには元気で錦糸町の街を見守っていて欲しいな。



               *



「――と、こんな感じで発表したんだけれど、どう?」

「すごーい! なんかこんな風に錦糸町を紹介してもらえると感激しちゃう」

「うまい棒の話、知らなかった」

「Yahooニュースのトップにもなったんだよ? ツムツムばかりやってないで、世の中の情報にも目を向けないと」

「江東デパート、懐かしいね~」「楽天地のたこ焼き屋も覚えてる」

「北口は変わったよね」「コンテナ置き場なくなってから、オレンジマートが出来たじゃない?」「あった、あった!」

「ニシは今日も来れないの?」「ヤツはシャイだから」「この前も、『マツコの知らない世界』で、きなこ棒が出てたよ」

「佐藤先生って、いたねー」「ローラースケート部が出来た時に、そんな話があったなんて知らなかった」「これも、ちょっとイイ話だよね」

「美恵ちゃんのことはすぐ分かったのに、あたしのこと、全然覚えてなかったじゃないっ!」

「いや、だって一度も同じクラスになったことがなかったし。いいじゃん、今はこうして思い出したんだから」


 きっと、次の飲み会はこんな風にワイワイと過ごすことになりそうです。


               

               ―了―



参考文献、ホームページ(順不同、URL省略)

 墨田区

 江東区

 すみだの魅力PR動画コンテスト(ホームページ、フェイスブック)

 すみだの魅力発信サイト「スキスミ」

 墨田区立錦糸小学校

 ウィキペディア

 亀戸天神社

 江東天祖神社

 亀戸ぎょうざ

 亀戸升本

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 山田屋

 船橋屋

 押上せんべい

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 東京・街角・たばこ屋さん

 weblio辞書「白木屋(デパート)」

 アルカタワーズ錦糸町

 セキネ楽器店

 WINS錦糸町

 嘉門達夫

 「散歩の達人」No.260/交通新聞社

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うまい棒が一万本あったら 流々(るる) @ballgag

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