序章 3話 和葉 💙 可憐

タイタニックは言わずと知れた不朽の名作映画だ。

2人はよく映画館へ足を運んだ。


宣伝無しで前評判の分からない、原語で見る映画は理解や解釈に相当なエネルギーが必要

だった。映像の美しさやストーリーを追うも

微妙な心理のやりとりや解釈は誤ることの方が多い。


映画が終わるとなんとも言えない歯がゆさを

感じたまま馴染みの日本食の寿司屋へ行き

記憶に残る場面を話し合う。

「僕はこう思うな、こう解釈したよ。であの時はこう言ってる。」

和葉の英語の語学力、理解力は確かな

ものだった。


意見が異なると翌日先生を捕まえる。

イングリッシュペイシェントは想像を超える

難しさだった。和葉はよく

「先生にそこまでよく分かったわね。」

と褒められていた。


この時点ではまだ告白前だ。

和葉は自分の騎士的な存在であるという

感情とは別に語学を通しての

『ライバル』としては叶わず悔しかった。


朝スターバックスでコーヒーを買い、サブウェイではピクルスたっぷりのベーグルを

頬張りながら始業前に英訳を教えてもらうことも多かった。


スワンレイクでの告白後に始めて行った映画が『タイタニック』だった。

細かいやりとりはともかく、臨場感や

ストーリーは分かりやすかった。


和葉はギュッと手を握り真顔で見入っていた。映画の後彼は言った

「可憐、僕もジャックと同じ愛し方をするよ。」オーチャードの雰囲気のよいお洒落な

イタリアンレストランでキャンドル越しに

正面から言う。

「それは全然嬉しくない。それなら私は2人で果てたい、絶命したい。」可憐はキッパリ言った。彼は複雑な顔をする。

「和葉、もしも私があなたを救って死ぬことは耐えられる。でも和葉に救われた命で和葉のいない世界で生きることは絶対に嫌。」

「可憐が僕を…命懸けで救う?」

「そう、それならいいの。でもその後で

他の女性に走ったら赦さない。」

「そんなことはしないよ。」頬を緩める

和葉。

「絶対に絶対にしないさ。」

「もし、逆なら…可憐はどうする?」

「After follow you. あなたの後に続くわ。。」流石に日本語で言うのは恥ずかしくて言った。

「和葉はそれでいい?」少し考え込む。

「そんなことは考えたくない。

そうゆう時はその運命から君を守り抜く。」

2人ともワインは飲んでいるが酔って言ったわけではなかった。


互いに陶酔しながらグラスを傾ける。

異国とはそうゆうものだと思う。

微塵も揺るがない愛を確信していた。


ペアのなにかを買おう。可憐はふとそう思った。互いが迷いつまずいた時今ここに帰れるように、戻れるように…

不意に『トレビの泉』を思い出す。

「コイン、コインのネックレスはどうかな?」

「可憐、ぼくの気持ちは何があっても揺るがない。キミにはもっと素敵なアクセサリーを贈るよ。」


帰り道和葉に抱きすくめられる。

「私たちは永遠だ、何があっても永遠に…」

可憐は深い安堵に包まれ目を閉じた。




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別館 suwan @suwan

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