序章 1話 出逢い

West Coast of Canada で訳される

カナダの西海岸のビクトリア島に『運命』

を交えこの地に足を踏み入れた2人の日本人。


海を渡ったのは 和葉 雫

空を超えたのは 葵 可憐


スターバックスとサブウェイに挟まれた

小さな語学学校の 留学生として出逢う。


初めて学校から帰るとき方向感覚が分からず

困っている可憐に声を掛けてくれたのが

和葉だった。


「ヒナはいいの?」2人が盛り上がって

どこかへ行く話しをしていたのを聞いていた。

「今日じゃなくてもいいよ、ねっ」

ヒナも

「うん平気、わたしこっちだから行くね

」とあっさり雑踏に消えていく。


ヒナはわたしと同じ便で来たまだ幼さが残る

中学生で、怖いもの知らずのところがある。

少し危なっかしいと思っていたが、多分

わたしの方がもっとそうだ。


「キミが…カレンさんが心配だから来た。」

人見知りでよく『お高くとまっている』と誤解され易いわたしの垣根を軽々と越えて来た。


そんなのカズハが初めて…だった。


「どこまで帰るの」

「Mackenzie ストリート」

「僕も近いんだ、一緒に帰ろう」

「帰るときポストカード選んでいい?」

「うん、いいね。一緒に選ぼう」


文具好きの彼は長いこと店内を見ていた。

細くて背が高くメガネを掛けているカズハ

くんは第一印象と随分違うな、と思った。

初対面『なんか無愛想で少し生意気 』

そう思った自分を訂正。

知的で年より大人っぽい…だけ。

2人でバスの路線地図を見ながらバス停に向かった。


通りはカフェに溢れている。ビクトリアは

比較的温暖な気候と聞くが3月の始めは

例外なく寒い。

少し体が震えてくる。


寒そうにしていたわたしに

「なにか飲んでいこうか?」と気遣う。

「なにがいい?」

「ホッとチョコレートがいいな」というわたしに

「3音節だよ、発音できる?」と学生らしく

好奇心に満ちて聞く。

「どうかな、自信ないな。」苦笑すると

「カレンさんは思っていたよりずっと自然体で

ピュアな人だね」と言われた。

「えっ?」て思った瞬間彼の腕の中にいた。

誰かにぶつかりそうだったところのをカズハ

はスマートに避けてくれたのだ。

彼は大切なモノを守るようにわたしの肩を

そっと引き寄せてスッと離した。

ドキッとして彼の顔を見上げると

「2人で練習しよう。実体験で」何事もなかったようにカフェに入った。


言葉が通じなくてホットココアを頼むのに

10分は要しただろうか?

トレイに乗せたココアを宝物のようように

慎重に運んで2人で笑いあった。


「慣れるまで一緒に帰ろう」

彼がそう提案して安心して頷く。

「そうだね、その方がいいよね。」

2人ともホームステイ組で片手に辞書持っている。わたしの降りるバス停でカズハも降りる。

「なんで?あと2つは先のバス停でしょ?」

「大丈夫、僕は歩いて帰れるから。カレンさん

方向音痴そうで心配だから。」


年下のカズハにそう言われて、少し頼りない

自分とカズハの頼もしさを感じる。


近くに湖がある。

『スワンレイク』のちに『恋の湖』と命名することになるとは思ってなかった。


「ありがとう、また明日ね。」

まだ眠る桜並木の通りの下で、わたしは

カズハにお礼を言いその背を見送った。


あくまでも異国での同士、

そして年下の友人 として… 続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る