それは運命のようで コータ視点
は……?
俺の頭は理解を拒んでいた。
カナさんが死んだ……?
何をいってるんだ。
悲しみともとれぬ、消失感。いや、頭が混乱しているのか耳に入れた言葉を理解できていない。
消化しきれていない。
頭の中が空白で埋め尽くされた。
「……は、え。と、父さん!?死亡確認ってど、どういうこと!?」
視界の横でベンケイがなにかを言っている。
「……カナの腕輪からの信号が完全に消えたんだ」
「信号が消えた……?それじゃあ、まだ実際に死亡したところを確認した人はいないんだよね!?だったら、ただの腕輪の魔力切れって可能性だってあるじゃないか!」
「……カナが行方不明になったのは上層の最前線だ。お前もわかるだろ、もし、まだ生きていたとしても魔力切れを起こしていては助かる見込みは無いに等しいんだ」
「そんな、で、でも……」
「分かってくれ、ベンケイ。……悲しいのはお前だけじゃないんだ。」
「……父さん」
「コータ君も、大丈夫、かい……」
気がつくと、走り出していた。
逃げたかったとか、おじさんの言葉が信じられなかったとか、そういうことじゃない。
ただ、なんとなく居ても立ってもいられなくて、もどかしくて、心臓がばくばくして、走り出していた。
目的もなく、前もろくに見ず、なんどか人にぶつかったかもしれない。
それでも走り続けた。
そして、ふと立ち止まった。
息切れ、無我夢中で走ったから足も痛めてるかもしれない。
その場所には鋼鉄の扉があった。
左右に開いていくはずのそれは、人が四人ならんでとおれるくらいの大きさで、その扉の横には武装した兵士が立っていた。
G地区迷宮第一層へと続くゲート。
俺は、いつのまにか、ここへとたどり着いた。
ハっ……。
思わずおかしな笑いが口から漏れる。
ベンケイの家から結構離れているはずのここにたどり着くまで走っていた自分がおかしかったのか、それとも、走って走ってたどり着いたのが迷宮だったのがおかしかったのか。
でもまあ、そんなことはもうどうでもいい。
「ハァ、ハァ……コータ!!」
その声に振り向くと、俺を追ってきたのか、ベンケイが肩を上下させ、膝に手をついて息苦しそうにしていた。
「……ベンケイ」
「コータ、急に走り出してどうしちゃったんだ……」
ベンケイはそこで顔をあげて、俺の方を見ようとしたが、そこでなにかに気づいたのか言葉を切った。
「ここって……」
「なんだ、着いてきたのか、こんなとこまで走らせて悪かったな___________」
「コータ!」
「な、なんだよ急に大声出して」
「僕も行くよ!」
……?ベンケイの言っていることが分からない。僕も行く?行くってどこに?
「姉さんを探しに迷宮に行くんだよね?僕も行く」
「え、いやそういうわけじゃ」
「姉さんの腕輪の信号が途絶えただけで、姉さんが死んだとこを見た人は一人もいない。きっと姉さんは生きてる。……でも、捜索隊は捜索を打ち切ってしまった、きっとその決定は僕たちじゃ覆せない」
そこで俺は、ようやく現状を把握した。
そうか、まだ死亡を確認した人はいないのか。
さっきのおじさんの話、上の空でしっかり聞けていなかったからな……。
「だから、僕たちで探しにいこうってことだよね」
全然そんなことは考えてなかった。
けど、その話を聞いてがむしゃらに走ってここについたことが運命のように感じられて、気がつくと俺は___________
「ああ!その通りだ!ばれちゃしょうがないな!」
強く頷いていた。
僕たちは冒険者(兵士) 日本人志望クロマニョン人、略してクロマン @moeta
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