介護福祉士の會澤茜は仕事中に不慮の事故で亡くなってしまい異世界に転生。異世界で彼女に与えられた仕事はこちらでも福祉士。ちゃんと相手の事情を慮った素晴らしい采配だ。ただし介護の相手は人間ではなくドラゴンなのだが……。
認知症のドラゴンを介護するという設定だけきくと大変シュールに思われるのだが、このドラゴンのボケっぷりが妙に生々しいのである。
茜は特別なスキルも与えられたというわけでもないのに、そんな天災同然のドラゴンの面倒を甲斐甲斐しく見続ける。お腹が重たいというので摘便を行ったり、お風呂に入りたがらないのを上手く誘導したり、再び飛べるようにリハビリにつきあったり……。このドラゴンと茜の付き合い方がファンタジー世界であるのに、非常にリアリティを感じられるから凄い。
茜がこうした介護ができるのは生前の経験も大きいが、それ以上に大事なのがドラゴンに対する思いやり。種族も寿命も異なるし、向こうはこちらのことを多少覚えてもすぐに忘れるかもしれない。それでもこうやって過ごした記憶と絆は茜の中にちゃんと残る。
介護の辛さや苦しさを誤魔化さずに描きながら、それでも命と向き合う大切さを描く異色のファンタジーだ。
(「動物と暮らす」4選/文=柿崎 憲)
(読了後に追加)
本当に面白く、楽しく、そして人生について考えさせられます。
「あとがき」までが素晴らしい。若い人にも是非読んでもらいたいです。
---------
11話までしか読んでいないのですが、とても良いのでこの段階でレビューをと思いました。就寝前のひと時に、読む方もいるのではと。
他の方のレビューに「名作」とあって、「本当に~?」と思ったんですが、本当に名作でした。
キャラクターがそれぞれしっかりしてますし、文章も読みやすい。そこに介護の知識が書いてあるのですが、「老い」というものについて、自然体で向き合う主人公の姿勢が好感度大です。
ぜひ多くの方に読んで頂きたいです。
とても面白かったです。
自分も介護職で、介護に関する小説を書いているので、アカネさんと作者様にシンパシーを感じました。
異世界転生・転移系は基本的に好きではないのですが、読みやすくテンポの良い文章のおかげで苦手意識を忘れて読むことが出来ました。
アカネさんや竜の皆さんなどのキャラクターのバックグラウンド、彼らが食べるもの・着ているもの・住んでいる環境などが小説の中にさらりと描かれているのが良かったです。恐らく世界観やキャラクターについてしっかりと下地を作りこまれているのだと思うのですが、設定をあえて説明しすぎない、程よいこの感じが好きです。
「ドラゴンの介護福祉士」という直球でパッと目を引くタイトルも非常に好きです。
P.S. 読了しました。
「異世界で行うドラゴンの介護」というファンタジーなテーマながら、「お世話を望まない利用者さん」、「家族との齟齬」、「ケアの在り方」など、現実でもどうにかしなければならない問題がふわっと皮肉られていて、クスリと笑ってしまいました。
現実での介護の話は深刻になりがちですが、施設にアカネさんのような方が一人でもいればこれからの未来は素敵なものになると思います。
エル様とアカネさんの行く先が希望に溢れているといいなと思いました。
素晴らしい小説でした。ありがとうございます。