【短編】1Gの世界

作者 上原 友里

73

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★★★ Excellent!!!

たとえば今手にしているスマホに、命はあるだろうか。
使われるために生まれてきて、忠実に頑なに役目を果たして、そして。
その先を思うときに私たちに特別な感情は湧かない。
道具は道具として。
持ち主の都合で簡単にその役目を終える。
けれど、幼い頃に抱きしめたぬいぐるみはどうだったろうか。
毎日話しかけて、愛して。
そこに命を見なかったか。

役目を終えたものは、いつか去らなければならない。
ぬいぐるみの耳がとれたと言って泣くのは、くだらない感傷なのかもしれない。
無機物に命を見るのは、人のエゴなのかもしれない。
だけど、それはとても美しいと。
私は思う。

★★★ Excellent!!!

アポロ月面着陸を中継で見た年齢の私は、宇宙開発は華やかなもので、どんどか進むものだ、とばかり思っていた。
が、最先端のものこそさっさと古臭くなるもので、劣化して使えなくなるんだよね。身の回りのものですらそうなんだから。
宇宙の映像で今でも一番印象に残っているのは宇宙飛行士の「バイバイ、スカイラブ、バイバイ、スカイラブ……」で、遠ざかっていく宇宙ステーションだ。
地球にバラバラ落ちていった。

ちょっと、それを思い出した。

人間に変わって宇宙で危険な作業をするアンドロイドには、感情的な反応があったとしても、おそらく、自分の身の不幸を嘆くとか、危険を恐れるとか、そういった都合の悪い感情は持たないよう出来ているのかもしれない。
ラストミッションを淡々と実行するオリファンには迷いはない。
むしろ、だからこそ、余計にこちらが切なく感じるのだろう、そして、本来は華々しい開発の場にいるはずの宇宙飛行士の仲間たちも。

★★★ Excellent!!!

ちゃんとしっかりとしたSFでした。私自身あんまりSFは読まないのですけど、読んでいる間ハリウッドSF映画のイメージが広がっていきましたね。丁寧に描写された世界観が素晴らしいです。

SFでアンドロイドを描くと切ない展開になる事が多いのですけれど、この作品もこの系統です。小説らしい演出も見事でオススメです。

★★★ Excellent!!!

思いやデータを乗せた、技術の結晶が終わりゆく様が切なく描かれているように思います。

見えないところでどれだけの失敗が積み重ねられていたのだろう。

現象に揺さぶられたドラマがあったのだろう。

全く見たことのない光景が、何故か懐かしさと寄り添って浮かび上がってくる。

徐々に中心へと寄せられる世界への帰還は終わりであるが故に物悲しいけれど、

美しかったって感じたから、ありがとうって言ってみた。

★★ Very Good!!

引き出しの奥にしまっていた古い大事な手紙を読み返しているような気持になりました。
手紙にはその時、その人が記した事柄しか書かれてはいません。
それでもそれを手にする時、人はその場面に至るまでのことを自然と思い出し、想いを馳せます。

その場所に至るまでに誰かが抱えていた想い。
言葉にしたことや、出来る事には限りがあります。
それでも人は自分のいる場所で自分に出来ることをするほかないのでしょう。

叶うことはありませんが、出来る事なら声に出して伝えたい。

さようなら
ありがとう
おかえりなさい
オリファン

★★★ Excellent!!!

何十年も管理を続けて来たアンドロイドの視点で語られる、とある世界の終幕の物語。

淡々と仕事をこなすラストミッションのクルーたちとのやり取りで少しずつ描かれるターミナルの経緯や、撤収の仕方が丁寧に創られていて物語に入り込むことが出来ます。

そして入ってしまえばあとは、ターミナルと彼の最期を追わずにはいられません。
興味を持った方は是非、この手軽な分量で体験できる彼らのラストミッションを見守ってあげてください。きっと素敵な読書体験が待っています。

★★★ Excellent!!!

宇宙研究ステーション、オリファンのターミナルであるアンドロイド。
彼と、宇宙飛行士達のラストミッションの話。

淡々と作業を進めながら、少しずつ、明かされていくオリファンの現状。

途中で、アンドロイドの思考が乱れたときに、ドキッとして、
それ以降は、文章を舐めるように、魅入ってしまいました。

『彼はきっと新たな世界を知ることになるだろう。僕が永遠に知り得ない、1Gの世界を。』
以降は、涙が止まりませんでした。


人知れず役目を全うする―――というテーマに引っ掛かる方には、絶対に刺さる作品です。