現実を侵食してくるタイプのホラーです。
疑わしいと思うなら読んでみてください……ただしどうなっても、保証はできません。現に大澤先生のTwitter、今大変なことになってます。
こんな連載作品、過去にありました?
しかも公式の連載ですって?
もうすごい。私はこの作品をリアルタイムで読めて幸運だったと思う。
ものの売れない昨今、物語を消費することに意識が向いている。私たちはプロダクツの向こうの物語を消費している。
物語消費には弊害もある。炎上、あれも物語消費の悪しき一面だと思う。火中の人物に物事の悪い面だけを押し付けて消費している。感動ポルノもそう。対象を切り取って、都合のいい物語を押し付け、ものを買うように消費する。私たちの感覚はそのことに慣れきって麻痺してしまっている。
けれども、この物語の主役は、消費されることを拒んだ。
物語ること、その恐ろしさを知ったうえで、それを拒んだ。
彼女に手足を与えたのは作者だ。なにも破綻していない。これはそういう”物語”なのだと、私は思う。
中学校で、ひとが続けて死ぬ。それを偶然と片づけるには、人間は賢すぎ、繊細すぎ、脆すぎる……
疑心暗鬼にとらわれた共同体が、狂騒と恐慌で沸騰してゆく学園ホラーです。
事件になにか意味を見いだし、解決しようとする者が、ことごとく退場してゆきます。それは、愚かな者でなくても。正義や愛情を抱いた者でも。ひいては、この物語を一生懸命に追いかけ、先の展開を予想している読者すら、物語の側から「物語を作ってはいけない」と否定される。
黙って最後まで見届けることだけが、この物語に読者が示せる、唯一の誠実さでありましょう。おそろしい小説です。だから、とてつもなく蠱惑的な小説です。