作者覚え書き
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
作者本人が自作の解説を加えるのは、野暮なことかもしれませんが、以下に十一編について少しだけ書いた経緯を記します。
蛇足は要らないという方は、読み飛ばしてもらっても、何も問題はありません。
『ウサギの餅つき』
この中では一番最初に書いた話で、『黒い贈り物』のバリエーションとも言える話です。
トップバッター向きではないような気もしますが、全体を通したメインテーマを含んでいますので、最初に置くしかありませんでした。
『日常』
私自身としては、二番目に好きな話です。
ここで書きたかった寂しいトーンは、他の作品の色に影響して行きました。
『圧迫面接』
ウサギと同じく、舞台設定をオチに使う話です。ショートショートではよくあるオチですね。
独り佇むロボットほど、終末らしい光景はないと思います。
『絶滅動物園』
最初の三編とは違って、世界背景などに触れた作品です。ヒネリは弱いのものの、雰囲気は気に入っています。
唯一、先にタイトルを思いついて、そこから書き出しました。
『双子』
オチで切り落とすサスペンスが好きで、挑戦してみたものです。一番ホラー色の強い作品で、この十一編に入れるかはちょっと迷いました。
錯誤をテーマに、ホラー10+1編とかもいいかなあ。
『コピー』
創造性の衰退というテーマを扱おうとした作品。
レプリカが悪いという主張ではないです。人間が創造力を失うとしたら、人が「これでいい」と満足してしまった時かなと考えました。
『被験者の憂鬱』
一番好きな作品です。自分の趣味丸出しです。
『血海に潜る』の深層世界、『電子の海に灰が舞う』の共有現実に、今一度登場してもらいました。
この二つの長編に組み込めなかったネタを、短編で独立させた形です。
追記: そのうち改稿して独立させようなどと考えていたのですが、2020年12月、15000字に増やしてみました。
二年越しに読み返すと、直したいところばかりでほぼ全面改修です。
増量バージョンは、いずれ短編集の中に収録する……かもしれません。
『時間遡行』
最後に書いた作品で、偽人誕生秘話といったところです。
偽物の自分、作られた記憶、虚構の世界、そんなイメージが昔から好きでした。この短編集にも、そういったテーマが何度も登場しています。
ネタを考えつつ寝たら、夢で思いついたという、嘘みたいな経緯で出来た一編。本当ですよ。
『最後の花火』
花火って、見方によっては寂しいよね、という話。違うかな。
感傷的な話は、実はちょっと苦手なんです。そのくせ、こういう話を書くんだから、自分でもよく分からない。
まあでも、淡白な話ですよね?
『時計』
最も短い作品です。
全て手遅れな時は、どうすればいいのという話。
一度書いたものを、手違いで消去してしまい、最初から書き直しました。短くて助かった……
作者がホラーを味わうハメになるとは。
『赤い大地』
ミスリードも仕込みましたが、ここまで読んだ方には、アッサリと見破られますね。
第一話のウサギとは、対になる話です。
ラストくらいは、暗さを多少なりとも払いのけようかと。
この十一編は、結局、同一世界の様々な時代を描いたものでした。一話で幼い娘が登場したことを、最後に思い出してもらう構成です。
当初は、雑多な話を集める目的で企画した短編集でしたが、終末という共通テーマができたため、その内容に沿うものだけを選んでいます。
書いてみると、長編とはまた違う楽しさがありました。
もっと頭が柔らかいうちに、短編はどんどん書いとけばよかったなあ、と思わなくもないです。アイデア出すのが大変で。
コメディタッチのものや、ホラー色の強い作品については、また改めてまとめていきたいです。
今後ともよろしくお願いいたします。
高羽慧
終末の小匣 <10+1の短編集> 高羽慧 @takabakei
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