僕らは同志だ!

「ねえ、さっきの話、聞いた?」

「うん」

「あと、半年だって」

「ああ」

「あの医者、個人情報なのにべらべらと」

「・・・いや、僕はあの医者はとても真面目な人だと思う」

「え?」

「紫華さんにとって僕らが大事な客だと彼は感じたんだよ。だから心して紫華さんと話すように僕らに覚悟を持たせたんだと思う」

「そっか」


 面会の前、施設に回診に来た担当医が、僕らに彼女の余命を教えてくれたのだ。

 運転しながら、カヤノンと僕の遣り取りを聞いていた久内さんが、ぼそっ、とつぶやいた。


「シハナは、同志」

「?」

「?」

「同志、シハナは、敵によって延髄に注入されたニトログカプセルのために生命の危機に瀕していた。同志 ヤベ、カヤノン、クナイは、”活動用”にチューンしたモバイルビークルで高速道路を北に疾走していた。カプセルが溶解し、ニトログリセリンがシハナの血液に流し込まれるまでリミットは半日。"teardrop on morning glory" という謎めいた暗号を解読し、世界を救えるのは第六感的なシハナの翻訳能力のみ。シハナを救い、世界を救うため、同志ヤベ、カヤノン、クナイは、冷静にかつ熱き闘志を持って、最終決戦の地に向かう」

「何それ」

「次の小説のプロットだよ!」


 久内さんの激情、再び。


「久内さん、かっこいい!」


 僕も伝染する。


「おおっ、久内! 書け! 書け! わたしも読むよ!」

「ほんと? やった!」


 カヤノン、久内さんも熱き女子の友情を確認し合う。

 突然カヤノンが話題を変える。


「ところで矢部っちって、久内とわたし、どっちがいいの?」

「は?」

「ほんとだよ、矢部ちゃん。いつも女子2人侍はべらせてさ。下心ないとは言わせないよ」

「えー?」


 2人とも好きだと言ったら殺されるだろうか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ティアドロップ・オン・モーニンググローリー naka-motoo @naka-motoo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ