第4話 最悪な女
デブでブスが性格悪いのはある意味
当たり前。
だが稀に 器量が良くて、世渡り上手で、性格最悪な女もいる…小生意気でタチが悪い。
私は仕事柄海外へ出向くことが多い。
アジアの奥地には日本でいう物乞いが存在する。
脚がなかったり手がなかったり、四肢が
部分的に不自然に曲がっていたりする。
邦人の同情を買うためにそうする…と聞いた
ことがある。
ある夏、コーヒーの買付にアジアへ行く。
「おや?」と思う。珍しい、日本人らしき
物乞いを見る。
逆三角の小さな顔は痩せこけ、その半分は
えぐれている。見覚えがあった。じーっとその顔を見つめる。
光が眩しい。
あれはとある地方の古い納屋
後味藤かおりだかさおりだかは、そこへ
私を呼び出しては蹴ったり殴ったりした。
私は彼女の仕事場の五年は先輩であった。
私の方が後からその仕事場に入った。
初めは傘や靴を隠したりした。それでも
動じないでいると、私の分だけオヤツを
配らなかったり、休憩室でわたしの分の
椅子がなかったりした。
仕事でも偽の情報を配り、
「清川さん、これやってないんですか?」
と騒ぎ立てた。持参したお弁当をひっくり
返され大笑いされた。
どこぞのショッピングモールですれ違い
トイレで顔が合ったとき、平手打ちを食らった。「どうして?」と問うのはやめた。
ムッと睨みつけた。
「生意気なんだよ。」とグーパンチだった。
後味藤には糞みたいにつるんでる男がいた。
田村尚。斜に構えた田村は腕組みしたまま
聞いたことは無視するくせに、命令口調であれやれこれやれとこれが違うと追い詰めた。
トイレの外で後味藤と田村に顔が晴れるほど
殴られた。痛くて脇腹引きずって帰った。
清川聖名の怨念は凄ましかった。
やがて香澄が現れ田村と後味藤はやたらにつっかからなくなったった。が2人とも姿を見てがないからこの瞬間までその
存在を葬り去っていた。
後味藤さおりを見る…口から終始唾液を垂らしている。その目にはまだ焦点がある。
私は財布をちらつかせた。さおりの目は輝き私の前に跪き物乞いをする…
変われば変わるものだ。日本人形の面影は
少し残したまま顔の半分はえぐれ自慢の長い黒髪はほつれて顔にへばりついている。
着るものも薄汚れて裸ていた。右手は爪がなく容赦なく潰されいた。左手は見てないが
恐らく同じだろう。這いつくばりながら腕を伸ばす。声にならない声を出す。
「うぇうぇ」恐らく舌も削られて
いるのだろう。
伸びて来たさおりの手を掴む。
「だからあれほど香澄に注意しろと警告したのに…」ク、ク、クと嗤う。
「あなたと違って野蛮じゃないから私は
手はあげない。でもお返しはしないと…ね」
ヘアーピンです潰れた右手目掛けてぶっ刺した。
「う が が」呻き声。悶え苦しみながら
逃れることも出来ず乞い続ける。
「なにが欲しいの、これ?」私は空の財布
を差し出す。さおりは嬉しそうに近寄り
ひったくる。
警官を視界に捉え「キャア。」と悲鳴をあげる。
「どうしました?」
「お財布をお財布を取られそうになって…」
警官は家畜にでもするようにさおりを蹴り倒し私の空の財布を取り返した。
ポケットから賄賂の札を取り出す。
警官が去った後まだ私にうろつくさおり…
私はかがんで言った。
「あんなに可愛くて、凛としていたのに…
こんな姿になって哀れやね。
死ねばいい…でもできないのよね。可愛そう。」
ポケットからチョコレートをちらつかせると
動物みたいに飛びかがって来た。
「汚らわしい。」足蹴りしてやった。
香澄がどこからともなく現れる。
これでいいかとサインを送る。
「あいつは、田村尚の姿がないけど…」
「海の藻屑さ。」
フッと香澄が嗤う。その香澄の手から
後味藤さおりの日本国際のパスポートを
受け取る。
『私を汚したモノはキッチリ落とし前
つけてもらう』清川聖名は後味藤さおりの
最後の砦のとなる日本国籍のパスポートを
本人の目の前で冷酷焼き尽くしてから
ビジネスクラスの空を仰ぎ帰国した。
嫌な奴 suwan @suwan
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