Ⅲ 芸術家の告白

秋の日の終わりは何と心に染み入ってくることだろう! あぁ! 痛々しいまでに染み入ってくる! というのも、それはうっとりするような感覚であり、曖昧であることはそこから烈しさを締め出しはしない。だが、曖昧さの切っ先は無限の持つものよりも鋭利ではない。

 空や海の広大無辺さの中でその眼差しを溺れさせるのは、偉大なる恍惚であろう! 孤独、静寂、比類なき蒼天の純潔よ! 地平線で揺らめく小さな帆が、私の償い難い実存を、波浪の単調な旋律を模倣する。これらすべてのものは私を通して思考する、或いは私がそれらを通して思考する。(だから夢想の膨大さのなかで、《私》〔moi〕はすぐさま失われてしまう!)それらが思考する、と私は言う、ただし、音楽的に、生き生きと、詭弁も、三段論法も、演繹法もなしに。

 しかしながら、これらの思考、私から飛び出すか、或いはそれらの事物から飛び出す思考はすぐさま烈しくなりすぎてしまう。官能の中の力がめまいを、はっきりとした苦悩を創り出す。あまりにも張りつめている私の神経は最早騒々しい苦しげな震えしか与えてはくれない。

 今、空の深みが私を打ちのめす。清澄は私を苛立たせる。海が何にも感じ入らず、情景が何も動かぬことに私は憤慨する……あぁ! 永遠に苦しみ、美から逃げなくてはならないのだろうか。自然よ、容赦のない魔術師よ、いつも勝利を収める仇敵よ、私に構わないでくれ! 私の欲望や自尊心を駆り立てないでくれ! 美の探究とは一つの決闘である。そこで芸術家は敗北する前に戦慄の叫び声を上げる。

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ボードレール『パリの憂鬱』 錠前 @joe-1

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