Ⅱ 老婆の絶望

 しなびて縮んだ小柄な老婆は皆にちやほやされて気に入られている赤ん坊を見ると、自分が全く陽気であるように感じた。この可愛らしい存在は老婆のように弱々しく、同じく歯も無く髪もなかったのだ。

 そして老婆は赤ん坊に温顔で笑いかけてあげたくなって、彼に近づいた。

 しかし、老いぼれた人の良い女に撫でられて怯えてしまった赤ん坊は、もがきながらキンキンと響く泣き声で家の中を満たした。

 それで、人の良い老婆は永遠の孤独の中へと引き下がり、隅っこで泣くのだ、独りごちながら――「ああ! 私たち不幸な老女にとっては、純真無垢な幼子にさえ、好いては貰えぬ齢になってしまったのです。私たちが愛そうとする赤ちゃんたちを怖がらせてしまうのですから!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る