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次の週、暑さはどんどん厳しくなっていった。そろそろ三号館の中のテラスに行こうとこの前誰かが提案していた。なのにまた、ベンチに座っていた。
「おう、お疲れ」
「お疲れ」
また岬くんとふたりきりになった。秘密を知ってしまってから変な空気がわたしたちの間に流れるようになった。でもその変な空気が愛しくてたまらない。
彼らの噂は広まっていない。だから、少しは褒めてほしい。安斎くんのことは淫らで大嫌いだけど、言わないのは、あなたのことが好きだからだよ。まだ。
あの日と同じように安斎くんが歩いてきた。岬くんは知らぬふりをする。安斎くんは岬くんの存在を目で確認して、切なげな顔をしてから、同じ目に憎しみを灯らせてわたしを睨んだ。わたしも同じ顔をして睨んでやりたかったけれど、無理だった。もう完全に敗北しているんだから。
そんな顔しないで。岬くんはわたしなんて眼中にないし、あなたのことを話すとき、笑わないけど、誰にも見せない穏やかな顔をするんだから。岬くんの愛をもっと自覚して。それでもう誰も妬まないでよ。
あなたには絶対誰も、敵わないんだから。
将が近づいてくる。このままこの気持ちに決着がつけられなかったら彼に別れを告げよう。この気持ちのまま一緒にいることなんて許されないし、わたしたちは誰にもなれなくて、わたしたちでしかないから。
「暑いね」
将が笑った。不細工だけど嫌いじゃない。はやくあなたをいちばん好きになりたいよ。
いちばん好きなひと 霜月ミツカ @room1103
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